緑内障の真実 最高の眼科医が「謎と最新治療」に迫る (光文社新書 1205)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046149

感想・レビュー・書評

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  • 眼圧だけが原因ではないと知っていたが、手術的治療がそれほど積極的に選択されることは知らなかった。視神経に栄養療法が有効であることも初めて知った。深作先生にお近づきになれたらと思う。

  • 面白い。
    自身を「最高の眼科医」と言っちゃってるのには少し引くが、日本の眼科医療がいかに遅れているかを数多くの事例とともに紹介している。
    半ば常識化している医学知識をひっくり返す事実も満載なので、自分は緑内障でないから大丈夫と思っている人も読んでみた方がいい。
    ただ内容は、術式だけでなく脳神経レベルからディープに解説しているので、少しややこしいかも。
    でも、著者が読者に覚えてもらいたいことはウザいほど繰り返されるので、嫌でも頭に叩き込まれる。

    まず1つ目の誤解。
    緑内障を眼圧が上がることで起きる病気と思っていること。
    これは困ったことに、患者だけでなく医師も、このように認識していたりする。
    相も変わらず「点眼薬で眼圧を下げましょう」といった、ワンパターンの治療が繰り返されているが、緑内障の原因の3割は確かに眼圧だが、他の7割は眼圧以外が主な原因となっている。
    緑内障の患者の7割ほどが、いわゆる正常眼圧の中に入っている。
    これは裏を返せば、「正常眼圧というのは緑内障を起こさない眼圧ではない」ということでもある。
    そもそも正常眼圧という概念が、問題の本質を見失わせ、医師をも惑わす指標となっているのだ。

    2つ目の誤解。
    「正常眼圧とは10㎜Hgから20㎜Hgである」という誤解。
    眼圧の標準的な値が10~20㎜Hgであるという考えは、日本人より角膜の厚いドイツ人(600ミクロン)の目で測定して出したものだ。
    目の角膜の歪みを診ているので、角膜の薄い日本人(550ミクロン)では、眼圧測定値は低く出る。
    そうなると、角膜の厚みに合わせた眼圧測定値の補正が必要。
    なのに、補正もされず標準値がまかり通っている。
    たとえば、角膜の厚みが450ミクロンと薄く、重症の緑内障なのに、眼圧が12㎜Hgなので問題がないと放置されている患者もいる。

    3つ目の誤解。
    「緑内障の根本的治療はなく、進行を遅くできるが、やがては失明する」という誤解。
    世界の失明原因疾患を調べると、確かに日本では1位の緑内障が30%近くを占めている。
    だが、欧米先進国の1位は加齢黄斑変性で、緑内障での失明は少なくなってきて、8%しかいないのだ。
    さらにもう一つ、日本で加齢黄斑変性が少ないのは、単に診断できるスキルがないからだとチクリ。
    日本の緑内障患者は、軽いものも含めると1000万人はいると語る。
    軽いとは、視神経障害が始まっているのだが、視野障害が現れていない状態のことだ。

    4つ目の誤解。
    「視神経障害が現れると視野検査で発見できる」という誤解。
    初期緑内障でも、網膜神経細胞の約20%から50%もが障害され、消失しているのだが、この程度の障害では、視野検査のみでは判別できない。
    そもそも視野検査は、自覚的検査であるため、信頼度は完全ではないのだ。
    光ってもいないのにボタンを押したり、光ってもタイミングが合わずに押さなかったり、中央に目を固定してと言われているのに、点灯した光を目で追う人もいる。
    さらに問題なのが、最低20%以上の神経節細胞の異常がないと、視野には異常所見が出ないことだ。

    まとめると、緑内障の原因で眼圧が主たる原因なのは約3割であり、その他は眼圧以外に「血流」などに問題がある場合が多いのだ。
    つまり、「視神経の出口である篩状板付近の神経が圧迫されたり血流障害で起きる病気」と捉え直すべきなのだ。
    具体的に見ていくと、近視が極度に進むことで緑内障につながることがある。
    強度近視によって眼球が伸び、視神経が「機械的圧迫」を受け、それにより血流が悪くなって視神経の細胞を殺してしまうのだ。
    さらに視野障害の原因が眼内にないこともある。
    脳外科でのMRI検査により、脳内腫瘍などにより視神経が圧迫されている場合も。
    さらに糖尿病によっても視野障害が起こる。
    糖尿病は血流障害をきたす血管病であるという点で、緑内障と同じだ。
    つまり緑内障の本質は、かなりの部分で「血管病」なのだ。
    そのため欧米では、視神経での「血流低下」や「機械的圧迫」への治療や予防法が重要となってきている。

    さらに従来の医学的知識である「失われた視神経機能は二度と回復しない」との医学常識も、実は間違っている。
    なぜなら著者は、サプリメントを治療に積極的に活用することで、失われた視機能が改善する症例を増やしているからだ。

    それと、点眼数を少なくするため配合剤を使用している患者は多いが、角膜障害が出て見えなくなった実例も紹介される。
    これは、単剤の時よりも多く入っていた保存剤により、重篤な合併症を起こしたケース。
    しかも一般的に、単剤の方が合剤より眼圧降下は総じて高い。

    そもそも多剤点眼している時点で、眼圧降下は低いと考えるべきで、迷うことなく緑内障手術を施行すべきなのだ。
    いつまでも点眼薬だけに頼るのは間違いである。

    とにかく、眼圧を下げただけでは駄目だということ。

    「緑内障は、眼圧だけでなく視神経への血流悪化が原因の大きなものです。この血流を何とか改善できれば、網膜神経節細胞や軸索も守れますし、改善も期待できるだろうと考えました。また、緑内障手術を行い、眼圧を完全に低くコントロールできているにもかかわらず、緑内障の進行が収まらない症例もあります。眼圧を下げただけではだめだということです。このような症例でも、血流を増加させることで、緑内障の視野欠損進行を抑制できることも分かってきました」

    車の運転時に求められる日本の視機能要件が、他国に比べて異常に厳しいという指摘も、日本文化を考える上で面白いと思った。
    日本文化の特徴とは、「基準は高く設定し、運用は緩く」である、と。
    他国のように、ゆるい視機能に合わせて基準を設定し、厳密な適用する世界の常識とは、真逆の発想だ。
    高速道路における法定速度と、実際の速度の違いのように、日本ではこの「基準は高く、運用は緩く」が至るところでまかり通っている。
    ただ不思議とこれを正そうという気にならないのはなぜだろう。
    特定の誰かが、上から命令して変えても無駄だろうと思う。

  • ●日本の失明原因の第一であり、数百万人の患者が存在すると言われる緑内障。実はいまだに原因不明である。
    ●予防や進行を抑えるために「眼圧コントロール」が重要とされているが、眼圧上昇だけではなく、視神経への栄養・酸素供給のための血流不足、視神経への機械的圧迫などが発症原因と推測されている。
    ●欧米では、失明しない病気になりつつあるが、日本では放置されるケースが多い。
    ●緑内障、白内障と密接な関係がある。年齢とともに必ず起こる白内障は、時間差で緑内障を引き起こしているのです。
    ●日本では、原因は不明ながら、徐々に視神経が障害される病気で、長生きすれば、いずれ失明してしまうが、点眼薬で失明を先延ばしするしかない、といった認識だけが常識のように広まっています。
    ●眼科で他の病気が発見される例は多くありますが、最も多いのは糖尿病です。
    ●高い眼圧が主な原因の緑内障は、実は全体の3割ほど。
    ●ナイアシン(ビタミンB3)の大量摂取による血流改善治療法。

  • 緑内障手術の説明は、超絶技巧のような感じであった。このような施術ができる医師は日本にどれくらいいるんだろうか。気になる。

  • 医学の進歩とともに、希望を持てることに感謝できる一冊です。症状やその進行機序、薬剤の種類や対応方法など詳しく説明いただいており、理解が進みました。

  • 医学も進化している。

  • 2022年70冊目。296ページ、累計19,217ページ。満足度★★★☆☆

    新書でありながら、かなり詳しく緑内障の症状や治療法について解説

    私自身、緑内障であり目薬を使用しているので、自分が使っている薬の特徴なども理解できた

    ただ、内容がやや専門的で一般読者にはやや難解だと言えるだろう

  • やや専門的な記述も多くて、当事者ではない自分の場合、“没入”して読むことができなかったのだが、自分や家族が緑内障になったら役立ちそうな一冊。緑内障の患者の7割が正常眼圧というのも、意外な事実だった。著者によれば、日本の緑内障治療はだいぶおかしなことになっているようなので、中高年かつ目が気になる人なら、一読しておいて損はないだろう。

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1205/K

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。航空大学校を経て、滋賀医科大学卒。横浜市立大学附属病院、昭和大学藤が丘病院等を経て、1988年に深作眼科を開院。アメリカでも研鑽を積み、米国白内障屈折矯正学会(ARCRS)にて理事、学術審査員、学会誌編集委員など歴任。深作眼科は週刊朝日MOOKや読売新聞等の「眼の手術ランキング」で全国1位に選ばれるなど、日本最大級の眼科として知られる。現役のスーパードクターとして、白内障、緑内障、網膜剥離など総計15万件もの手術を経験。多くの最新手術法を開発し、世界に向けて発表している

「2016年 『やってはいけない目の治療 スーパードクターが教える“ほんとうは怖い”目のはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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