- Amazon.co.jp ・本 (840ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334100858
作品紹介・あらすじ
トランシルヴァニア山中の城に潜んでいたドラキュラ伯爵は、獲物を求めて英国ロンドンへ向かう。嵐の中の帆船を意のままに操り、コウモリに姿を変えて忍び寄る魔の手から、ロンドン市民は逃れることができるのか。吸血鬼文学の不朽の名作。
感想・レビュー・書評
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平井呈一訳の『ドラキュラ』を読んだのは一昔前のことで、ストーリーをほとんど覚えておらず、まるで初読のように読み進んだ。映画の(どの映画だったかは覚えていないが)ドラキュラの印象が強かったので、「ああ、こういう話だったのか」と思うところが多かった。
もちろんメインとなるのは、 ”ドラキュラ” vs. ”ドラキュラを倒し、その企てを防ごうとする人たち” の戦い振りということになるのだが、「解説」にもある通り、この小説が書かれた時代、19世紀末のイギリスの社会状況が小説の中にいろいろと反映されているところに興味を惹かれた。
例えば、迷信深いルーマニアの人々に対する、魔術や迷信を否定するプロテスタントのイギリス人との対比、心理学の黎明期であるこの時代を象徴する、脳を専門とする科学者と精神病院医師という主要登場人物の間の思考法の相違など。
主な舞台となる場所の地図や適宜の注釈が付いていて、理解を助けてくれるのも実にありがたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
933-S
文庫 -
吸血鬼ものの元祖が新訳で出版ということで、これを機に読了。
訳はとても読みやすく、スラスラ読めるので800頁も苦ではない(多分)。
ドラキュラの住むトランシルヴァニアへの旅行描写、そこに住む人々の詳しい描写など細かくリアリティを積み重ねることでドラキュラの実存感が高まるのが素晴らしい。
また、中盤にかけてのドラキュラが船でイギリスに上陸し、いつの間にやら着々と地盤を固める様子や、ルーシーが吸血鬼にされてしまう所の普段通りの日常生活が崩れる展開などホラーとしての面白さを存分に発揮している。
ただ、後半のドラキュラを倒す部分は人間側があまりにも強すぎて面白みがない(金のパワーで大抵解決する)のと、ドラキュラ側の言い分が描かれないのでちょっと可哀そうに思える。
また、正直800頁超えはやっぱり長いし、三分の二くらいにページを減らしても特に問題ないのでは?と思う。
あと、半吸血鬼になってしまったミーナが逆にドラキュラを探知するところや、ドラキュラを不死たらしめている土の入った木枠を次々と破壊するところなど、ハリーポッターのヴォルデモートみたいだと思った。