まぼろし砂絵 (光文社文庫 つ 4-17 光文社時代小説文庫 なめくじ長屋捕物さわぎ)
- 光文社 (1992年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334714789
感想・レビュー・書評
-
「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズの一冊で、角川文庫では第七弾にあたる作品です。
第一話「熊坂長範」は、幻術つかいが登場します。本シリーズのさまざまな謎は、おおむね合理的な推理にもとづいて解決がもたらされるのですが、この話はややちがった趣向になっています。
たんなる時代小説とミステリの融合ではなく、時代小説としてもミステリとしても読者を満足させる物語がたのしめることが、このシリーズの魅力だと思っており、違和感をおぼえる読者もいるのではないでしょうか。一度はなめくじ長屋の仲間になったイブクロが、けっきょくは長屋から離れていったのも、超人的な能力を封印するためだったのではないかと著者の意図を推察していたのですが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
天才です。
-
1992.2.20
-
まいどお馴染み、晴れの日は外で芸を見せたりものもらいをして歩き、雨や雪の日は大の大人が長屋でごろごろのたのたしている、なめくじ長屋の面々が、金になりそうな事件に首を突っ込んでは事件を解決するような、しないような。そんな短編集、第7段。
初期のころよりも、江戸時代の風俗に関する描写が緻密になり、文章や文体から溢れだす江戸の香りはまさに圧倒的。
その反面、この「まぼろし砂絵」では2編だけだが、怪しげなる「呪術」によって事件が起こるというトリックがある。この時代に、妖怪や呪術が信じられていたことは事実であろうが、そういうものを持ち出しながらも、きっちりとした人間によるトリックとその解決をみてきたこの「なめくじ長屋捕り物さわぎ」シリーズだったので、その点が少し残念。ただのホラーになってしまった。
しかし、その他のストーリーはさすがというべきか。人間のいろいろな感情を絡めた犯罪や事件、それを本当に解決するかしないかということではなく、あくまでその場を丸く収め、おまけにちょっとお金にありつけるように調整するというセンセーの力量もさることながら、この時代の捕り物の雰囲気を存分に感じることができる。 -
都筑道夫のなめくじ長屋シリーズ、やっぱり面白い。
ひとくせも、ふたくせもあるなめくじ長屋の住人達。その日暮のこじき、物貰い、大道芸人なのだけれども、センセーの元聞き込みをやらせたら、も〜向かうものなし。
-
なめくじ長屋シリーズその七