- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334733735
感想・レビュー・書評
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若竹七海の葉崎市シリーズ第一弾。ジャンルとしては「コージーミステリ」というものらしい。でもこれホントにコージーなの?喫茶店や古書店を舞台に、悩みを抱えた客の謎を、店主のお婆ちゃんや若い女性が解いていくものではなかったの?
作者本人がカッパノベルズの初版でコージーミステリを説明しているらしい(「解説」より)。
‥‥小さな町を舞台とし、主として誰が犯人かという謎をメインにした、暴力行為の比較的少ない、後味の良いミステリ‥‥これが「コージー」らしい。更にこの作品を説明して「重苦しい情念の世界も、鬼面人を驚かす類の大トリックもありません」と断ったうえで「舞台は海沿いの閑静な住宅地」で、「それぞれ一癖ありそうな住民たちが、ご近所に降って湧いた謎の死体に右往左往する、犯人さがしのミステリ」と説いている。
この定義は若竹七海さんの視点で語っているので、眉唾です。殺人死体は2体登場するし、決して後味の良い感動作でもない。ラストエピソードまで読むと、なかなか「黒い情念」もある。しかも私はこのトリックに辿り着けなかった。もっとも、ほとんどのミステリでは辿り着けないんだけど‥‥。因みに「深夜の散歩」をして午前三時まで読みきれなかったからと言って、ラストの種明かしを先に読むようなことは私はしません。
それでも、
10軒の住宅の住民の、特に女性から発せられる辛辣な言葉の数々
双子の麻矢と亜矢が無邪気に悪意を持って2人交互に喋りながら重要証言をする、見事な仕掛け
刑事の聴き取り、レストランで住人同士の会話、密かに行われる密謀、共犯者?アリバイ?被害者の正体?そして意外な犯人‥‥
やはり徹夜してでも一気に読むべきだった。
諦めて睡眠は取ったのだけど、
時々仕事に支障をきたしてしまった。
葉村晶シリーズにちょくちょく出てくる作家・角田港大が重要な役割を持って登場していた。更には葉村らしき人物がたった1行だけ登場する(台詞も作品への影響もなし)。よってレビュー界隈ではその話題で持ちきりという、まぁありがちなサービスもある。
10月初めの台風の日から始まる3日間を中心にしたミステリ。決して季節を狙ったわけではありません。年間10冊は若竹七海を読もうシリーズの7冊目。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
葉崎市もの長編。殺人現場近くに住む癖の強すぎる面々や刑事達の描き方が面白くてはまった。警察の捜査により住人達の素顔が明らかになりやがて驚きの真犯人がわかる展開は見事。他の作品のキャラが出てきたりと細部まで楽しかった。
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海辺の街にある〈ヴィラ・葉埼マグノリア〉という、全部で十軒からなる建売住宅の空き家になった三号棟で、死体が発見される。
外からは鍵がかかっていて、被害者の顔は完全につぶされていた。
登場人物がやたらに多くて、どの人物も個性が強く、みんながそれぞれの秘密を抱えていて裏がありそうで、誰もが犯人のように思えてくる。
ヴィラの住人に加えて、警部補と巡査部長の名コンビの掛け合いと、粘り強い聞き込み捜査も面白く見事なものだった。
そして、死体の身元もわからないまま、第二の殺人が起きて…。
ユーモアたっぷりのミステリーで、怖がりの私でも楽しく読むことができました。
見事な推理、住人たちの生活も落ち着いて何とかスッキリ片付いたと思っていたら、結末が二転三転としていって、まるで洒落た映画を観ていたような気分です。
葉埼シリーズ、他の作品も読んでみたいです。 -
てんやわんやなミステリの一冊。
舞台は海沿いの街、葉崎市。海を一望できる住宅地の一棟の空き家で死体が発見された。
なんだろうこの感覚。すごく狭い世界を見ているのに、なんだかとてつもなく広い世界を見せられた気分だ。
一人一人抱えている世界が広いからか⁇
複雑な家庭事情、住人同士の裏側の顔をどんどん他人によって見せられ、誰もが毒気ばら撒き放題。
ついでにえ⁈そっち⁈っていうズッコケ感もばら撒かれたらもう最高。てんやわんやしながらもきちんと犯人を差し出しまとめ上げられた真相にも満足。
若竹ワールド、クセになりそうな予感。 -
みんな秘密があり、みんな隠し事があり、錯綜するする…。
登場人物が多くて、最初は誰やったっけ? と何度も登場人物ページに戻りましたが、キャラが全員こゆいので。
男性にしては小柄、が集う場所。 -
途中で探偵役から「それがわかれば、事件の謎もすべて解けたようなもんだ」というセリフが出されます。これはいわゆる「読者への挑戦状」というものだろうと、とても嬉しくなりました。古典的な推理小説を読んでいる気分。「どれどれ、それでは読者としての推理を組み立ててみようか」としばし時間をとりましたが、作者の張り巡らした伏線を読みこなせず、最後には「やられたなぁ」と嬉しいため息(深呼吸でしょうか)をついたところです。
途中で、ちらりと登場した古書店のアルバイトが気になりました。こちらまで出向いてアルバイトしていたのか、どうなのだろう、ととても気になります。
なにはともあれ、そして今後がどうであれ、南海荘で食事したい気持ちはどんどん強くなります。ただし、この一画で暮らしたいとは思いません。たまに訪れて、しばらく見えませんでしたね、などと言われながら食事がしたいという気分です。
だんだん登場人物が多い小説が面倒になってきたので、冒頭から怒涛のように出てくる登場人物に迷いましたが、〈登場人物〉欄に助けられて読み進めるうちに、ページを繰るスピードがどんどん上がっていきました。それほどおもしろい。
このあと、双子がどのように成長していくのかが最も興味を感じるところです。
さすが、この作者、という読み応えでした。 -
ひと月ほど前、新聞広告で『「葉崎市シリーズ」最新作が、10年ぶりに書下ろしで登場!』というのを見て、そういうシリーズがあったのかと、最初から読んでみることにした。
それにしても、長編で登場人物は多そうだしうまく頭に入るかちょっとビビりながら読み始めたが、悪くなってきた頭では苗字で呼ばれたり名前で呼ばれたりに混乱し、典子と圭子はどっちがどうだったか、巻頭の<登場人物>に戻ることもしばし。
それでも、まったりとした警察の捜査とかまびすしい住人たちの言動を読み進めれば、それぞれの事情や人間関係もだんだん頭に入ってくる。
ヴィラの空き家の一室で死体が発見された最初の事件の捜査に手間取る内にヴィラの住人が殺される第二の事件が起こり、みんなが怪しくみえる中、全く犯人を読めなかったが、残りの少ない頁で巧みに収束。
コージー・ミステリーと呼ばれるテイストのようでドタバタとした群像劇にこの作者らしいおかしみあり。
ラストのママさんの独白にはもうひと捻りにこの作者らしいほろ苦さもあって、最後までまずまず楽しめた。 -
ヴィラ・マグノリアの住民たち。いつのまにかご近所さんのような感覚になりながら読んでいました。
それぞれの家庭にそれぞれの人生、事情があり、すっかり解決した後も、まだ知らなかった事実も出てきて、小さな引っかかりまできっちり回収されるあたりが、さすが若竹七海ワールド。
黄金のスープ亭のパンプキンスープ、いつか味わってみたいなぁ。 -
’21年3月4日、読了。若竹さんの作品、半月ぶりくらい、かな?
うーん…僕の好みでは、ないかも。「コージーミステリー」としては、僕にはちょっと読みづらく感じました。読了まで意外と時間がかかった(4〜5日、くらいかな?)のも、そのせい?
まず、序盤から登場人物が多すぎて…整理がつかなかったです。結果、多くなったというのとは違い、本当に、序盤で一度にドバっと紹介され…という感じに、戸惑いました。僕の頭が悪いだけ?
それらの登場人物も、僕にはあまり…魅力的には映らなかったです。
もっとガッチリ本格か、もしくはもっと軽〜いコージーの方が、良かったかなぁ。まあ、贅沢ですね。
あと…筋には関係ない&全く個人的な感覚なのでしょうが、女性の登場人物のセリフで、「〜ですわ」というの、違和感バリバリで気持ち悪く感じるの、僕だけ?今時、こんな言い方、聞いたことない、なんて…。勿論、若竹さんに限った表現ではない、ですが。こんなくだらない事も、ちょっと気になってしまう、なんだかイマイチな読後感でした。 -
登場人物が全員濃い目のキャラクターで、住民同士の会話が面白い。
いろんな事件が重なり、捜査中の流れは頭がこんがらがったが、その分それが収束していくところは気持ちよかった。
最後に独特の後味の悪さを残すところは作者らしいと思った。