サイゴンの十字架 (光文社文庫 か 40-7 開高健ルポルタージュ選集)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744007

感想・レビュー・書評

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  • 「開高健」のルポルタージュ作品『サイゴンの十字架―開高健ルポルタージュ選集』を読みました。
    『開高健エッセイ選集 白いページ』、『輝ける闇』に続き、「開高健」作品です。

    -----story-------------
    1968年1月、南ベトナム解放戦線による一斉攻撃を受けて、サイゴン(現ホーチミン)の街は様相を変える。
    いつどこからロケット弾が飛んでくるか知れない厳戒態勢の街に筆者は赴いた。
    なぜ、対立し戦うのか、正義はどこにあるのか。鋭利な眼が探る――。
    捉えたものは、ただ墓標が増え続けること。
    それだけが、「真実」だった。
    戦禍を克明に伝え残す異色のルポ!
    -----------------------

    昭和39年(1964年)から昭和40年(1965年)にベトナムに滞在し、その際の体験を描いた作品『ベトナム戦記』や『輝ける闇』を執筆後、昭和43年(1968年)と昭和48年(1973年)にベトナムを再訪した「開高健」が、その変化を描いたル ポタージュ作品です。

     ■1968
      ・サイゴンの裸者と死者
      ・ジャングルの躓ける神
      ・“みんな最後に死ぬ”
      ・十字架と三面記事
     ■1973
      ・蒸暑い死
      ・影なき災禍
      ・最後の撤兵―勝者もなく、敗者もなく
      ・聖者来たりなば―ココナツ坊主会見記
      ・ブーゲンヴィリアの木の下に
      ・サイゴン・一つの時代が終った
      ・荒野の青い道
      ・十字架の影射すところ
      ・不安な休憩
     ■吸い玉療法や窓枠を 鬼海弘雄

    ルポルタージュとしては、『ベトナム戦記』の続篇にあたる作品になるのですが、『ベトナム戦記』のインパクトが強過ぎて、やや物足りなさを感じましたね、、、

    昭和43年(1968年)は解放戦線が南へ浸透し緊張感が一気に高まった時期、昭和48年(1973年)は和平調停でアメリカ兵もめったに見ることができなくなるほど戦地は様変わりした時期… ベトナム戦争の潮流の節目に立ち会っていたる訳ですが、最初の滞在時は従軍時にベトコンの急襲により九死に一生を得たという圧倒的にインパクトの強いエピソードが軸になっているので、比較するとどうしてもインパクトが弱いんですよね。

    でも、コミュニスト理想を高く掲げていた「ダック中佐」が民族主義に大きく転向したことについての質疑応答や、敬虔なカソリック神父が闘争について語るエピソード、貧しい女子学生が兵士となったエピソード等、ベトナム戦争に関わったベトナム人一人ひとりのミクロな視点でベトナムが描かれており、違った意味の魅力がある作品でしたね、、、

    当時のベトナムのことや、それまでのベトナムの歴史に関する知識が豊富あれば、もっともっと愉しめたんだろうな… 勉強不足を感じましたね。

  • パリ協定が締結したとき日本のメディアではまるで平和が実現したような論調だった
    協定の内容を見れば連合軍撤退と捕虜交換しか決定事項はなく戦争終結はほど遠いと分かるはず
    そして米国が手を引くと分かった途端にメディアはベトナムに無関心になった
    調印後も流血の抗争は続いているのに

  • 73年に出版された開高健のルポルタージュ選集。これだけは読んでなかった。開高文章というのは淡々としていながら腹の奥底を直接刺すような重さがある。今から40年ちょっと前のサイゴンを取り巻く傍観者達。本質は今も変わっていないかも知れない。

  • ベトナム戦争の、ではなくて、今もどこかで繰り広げられていることなのだろう。
    そして常に傍観者である日本人、そんな気がした。
    さて、いつまで傍観者でいられるのか、アメリカ次第なのだろう…。

  • ベトナム戦争の生々しい話はもう正直食傷気味。

  • 2008/12/3購入

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著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ほかに「日本三文オペラ」「ロビンソンの末裔」など。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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