セリヌンティウスの舟 (光文社文庫 い 35-4)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744175

感想・レビュー・書評

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  • 「僕たちの関係を、大人同士のうわべの信頼関係と軽んじてはならないと思う。誰しも自分の問題は、自分の世界の中で解決しなければならない。荷が重くて、大変で、辛いことだ。そんな日常の中で、僕たちには自分の世界の外に、無条件の信頼が存在する場所があったんだ。この仲間たちだ。それがどれほど貴重なものか。そんな仲間を得られたことが、どれほど嬉しかったか。僕たちは生死をともにした仲間であり、同時に大人としてお互いの世界を尊重し合った。」

    構成としてはミニ『虚無への供物』。動機は不可解。推理は緻密で面白い。

  • 漂流して生死の境を共に経験して以来、強い絆で結ばれた6人。
    ダイビングには必ず6人で行き、その後は飲み明かす。
    いつもと同じだと思っていたその日、皆が酔い潰れた後、彼女は自殺した。
    遺書もあり、警察の捜査でも自殺と断定されたが、彼らは不可解な点に気付く。
    ただの友人ではない彼らだからこそ気付いた疑問。
    遺書には語られなかった彼女の死の真相とは・・・?


    本格ミステリですが、着眼点というか、今までに見たことのない角度に驚きました。
    独特の感性をお持ちというのでしょうか。
    石持さんの作品は、良い意味で変わってますね。

    自殺に見せかけた他殺を暴くというものはよくありますが、自殺した人の心情を知るために議論するというものは初めてです。
    信じる心と疑う心。
    他人の心情を探るというのは、すごく難しいことだと思います。

    ただ、お互いを心の底から信じ合う6人の関係は、すごく素敵で素晴らしいものだと感じました。

    あたたかく、そして哀しい物語です。

  • このストーリー構成力には驚嘆です。これを兼業でやってのけるのですから、石持浅海先生には脱帽ですね。

  • 海難事故をきっかけに強い絆で結ばれた6人の男女。そのうちの1人の自殺に不自然な点を見つけた仲間は、真実を解き明かそうとする。

    石持さんの作品は思考・考察の描写が細やかなところが気に入ってますが、この作品もそれは健在で、思考の果てに陥る矛盾にまで話が広がっていくので、登場人物の心情に深く入り込むことができます。
    明らかになった真相は感動的なものであり、それでいてラストは切なく、余韻の残る仕上がりになっています。

  • 「疑う事」からでなく「信じる事」から、
    ダイビング仲間の自殺の真相を明らかにしていく話。
    同じ経験をしても見・得・る物は違ってくる。
    ラストが切ない。

  • ミステリで泣いた。

  • 「納骨式の後集まらないか?」その言葉で集まった五人。
    石垣島で大時化の海で遭難しそうになった六人の一人美月が自殺した。
    この遭難事故により固い絆で結ばれた六人だった。
    六人は、ダイビングに行く時は一緒に行くようになり、帰りに一緒に飲んだりする仲間だった。
    その日もいつものように飲んでたのだが、五人が眠ってる間に美月は、青酸カリを飲み自殺をしたのだった。
    集まった五人は、彼女の自殺について話し始める。
    そして、彼女の死に不審な点を見つける。
    彼女の死に隠された謎について推理を始める・・・。

    ルールは、一つ信じる事。
    悪意が存在しない論理合戦の小説です。
    これは、上手いの一言ですね
    一つの部屋で話し合う論理の押収は、どこか影が見え隠れしてます。
    ちょっと暗くても大丈夫な人はお勧めです

  • 面白かったです。堪能できました。ちょっとくどいくらいの本格物です。じっくりと推理したけど、やっぱりおいらのへなちょこ推理では足元にも及びませんでした(笑)・・・が、しかし、小説だから許せるけど、自殺を美化することはおいらには出来ません( ̄‥ ̄)=3 フン

著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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