スコ-レno.4 (光文社文庫 み 30-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746780

感想・レビュー・書評

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  • 時を経て美しくなるものに魅かれる気持ちのある人には、共感100%の素敵なストーリーです。

  • すごく好きだった。靴屋つながり、不器用な女の子つながり(ただし靴を売ることにかけでは不器用じゃない)で『靴を売るシンデレラ』を思い出したりもしたけど、文化の違いもあって当然読み味はちがう。
    きれいな顔立ちをした妹への劣等感。物事に対しても妹ほど執着心や、はげしい情熱を持てないことに対するコンプレックス。でも、その激しい熱を持っていることもまた、その当人にとってはきっと大変なんだろうと思う。
    麻子は骨董に対する父のじわじわとしみこむような愛を知らず知らずのうちに受けついでそだったんだろうな。それが靴の販売にも生かされて、ようやくそれが自分の持つ特技で長所なんだと気づいていくところがとてもよくて、満たされる思いがした。茅野さんとのつながりが、その気づきとシンクロナイズしているのもいいですね。

  • スコーレとは、ギリシャ語で「遊び」や「学び」を意味するそうです。
    一人の女性が、学生・就職を経ながら、成長していく物語です。特に盛り上がりというものはありませんが、主人公にとっては大きな事柄ばかりで、全体的に瑞々しく、かつ生き生きと描かれているように感じました。
    どうしても一代記となると、毒づいたものが目立ちますが、この作品は明るく、前向きにさせてくれる要素を中心にしている印象があって、清々しい読後感がありました。
    それぞれの節目で出てくるコンプレックス・悩みがありながらも懸命に生きている姿に感銘を受けました。特に同性の方は、より響くのではないかと思います。
    側から見たら、地味なストーリーですが、ジワジワと心に響いた作品でした。

  • とてもよかった。解説にもかいてありましたが、女性には是非とも、いや、働く若者みんなに読んで欲しい一冊ですね。全体として読みやすい作品ですが、スコーレ3,4の働き出してからの話は秀逸で久々の一気読みでした。読後感も良く心地良い余韻に浸ることが出来ました。宮下さんの作品は二冊目ですが、また、別の作品も読みたいです。これはおすすめの作品です。

  • 骨董屋(道具屋?)さんの3人姉妹の長女、麻子が、4つのスコーレを経て成長していく物語。中学生時代のエピソードがなかなか頭に入ってこなくて出だしはにぶかったけど、槇とのエピソードからぐんぐん引き込まれていきました。
    淡い初恋のあっけない幕切れ。華やかで自由奔放な妹への劣等感と従兄への想い。なんとなく就職した先で仕事に目覚め、よき出会いを得て、花開いていく・・・。
    常にコンプレックスにさいなまれながらも、他人に迎合せず、多勢に流されず、自分の「これがいい」「これが好き」という感覚に正直に生きていく麻子の姿がとても美しかった。私も、好きだ、という気持ちを大切にして、その扉の先につながっていくいろいろなものを眺めていきたいなぁ、と思う。そして、人の「好き」をいいね、と受け入れて応援できるような、懐の広い人になりたい。

  • 麻子と茅野の章が好きだ。
    暖かく優しさを纏った空気があり、これを契機に故郷の緩やかな幸せを再認識し、姉妹の絆に包まれる。
    年末に読むのに適した小説でした。

  • 私のような、おっさんが読む本ではないことは間違いない。
    が、宮下奈都作品に触れてしまった後では避けられない一冊。
    たしか、北上次郎(信頼してます)の書評でも、「若い女性読者に、ぜひこの長編をすすめたいと思う」とあったが同感。でも、娘たちにはなかなか紹介できないかな。

    やはり、トーク会でも著者がおっしゃっていましたが、光のあまり当たらない、それでいて、しっかり生きて成長していく姿を書き続けたい、という姿勢が良く見える作品。好きです。

  • 一人の女性の、大人になるまでの4つの時期を見ていく成長の物語。
    とにかく宮下さんの文章に共感した。
    中学時代の苦痛を、嘘だらけで息を吸っても肺の底まで酸素が届かない感じと表現したり、高校時代の何事も深入りしない上っ面な感じ、大学時代を温室と比喩する所等、静かな文章の中で何度もハッとさせられた。

    常に一つ下の妹と自分を比べて卑下してしまい、引け目を感じる麻子だったが、様々な段階を経て自分に自信を持ち気持ちにも余裕が生まれ、やがて好きな道を辿るようになる。
    悩みながらも、あちこち遠回りする事は決して無駄ではない!

  • 本屋大賞受賞作品がよかったので、この本は大分前から積読リストにいれてました。

    少女から大人へと成長してゆく過程を中学・高校・大学・社会人と描いた作品で、家族や恋愛、仕事との向き合い方が丁寧に描かれています。
    コンプレックスを抱えながら、自信のない日々を送る少女時代。
    このあたりは繊細な心理描写がリアルなのかもしれないけど、なんだか歯がゆくてじれったくて純粋過ぎて、読むのがしんどかったです。
    誰かに理解されようともがくタイプではなく、ひとりで内に内に向かっていくタイプなんですよね、この子。
    もっと私が若かったら共感できたのかな(涙)

    それが、あるキッカケを通して一気に成長してゆきます。
    といってもそれは主人公が毎日こつこつ積み重ねてきたことの結果です。
    一朝一夕に飛躍したわけではなく、豊かな土壌と太陽のお蔭で必然的に今やっと花開いた!という感じなので、感慨深く感動的でした。
    前半の、私がイライラした少女時代の積み重ねが、この成長に繋がる感じがとてもいいんですよね。
    ドラマチックな展開といい、王子様的な彼氏まで用意されていて最後はちょっと少女マンガぽいんですけど、主人公が幸せになるならいいかな、と許せる気持ち。
    温かい気持ちになれるお話でした。

  • 宮下奈都が今年の本屋大賞を受賞した時に、受賞作は文庫になるまで待てないのでとりあえず同じ作者の文庫本を買ったのがコレである。ずっと積ん読状態だったけど、ふとした拍子に読み始めると、一気に読めた。

    自分に自信が無くて、でも人並みに成績は良くて、家族にも恵まれ、友人にもそんなに悪い人はいない。そんな彼女が、小学校から中学生、高校生、社会人になって行く途中の四つのスコーレ(学校)ともいえる、人生の契機を描き、やがて自分のやりたい仕事と愛したい男性を見つけるまでの物語である。

    これもヤングアダルト文学の中に入るのだろうか。若い女性が読むと、幾つか発見がありそうだ。等身大のリアルな普通の女性がいる。しかし、一方ではちゃんと王子様を用意しているし、矛盾した言い方だけど、主人公の特異な能力も劇的な展開も用意している。ドラマやマンガの原作だとしても、不思議はない作風なのである。しかも、人間観察は深いのにさらっと描こうとしている。

    これが、結局、本屋大賞に選ばれる「今風」の小説なのかもしれない。

    2016年10月27日読了

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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