- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334753702
感想・レビュー・書評
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軽い気持ちで読み始めたら思いの外すごくよかった。アルマン……仕方のないやつ……。
解説に載っていて覚えておきたいと思った言葉。477ページ。
『ジャンルとしての小説には固有の知恵があり、その知恵は個々の小説家よりもすこしばかり聡明である。そしてこの「小説の知恵」に耳を傾けず、みずからの小説よりも聡明たらんとする小説家がいるとすれば、その小説家は職業を変えるべきだという。』
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19世紀、著者の実体験を元にした恋愛小説。金持ちを相手に享楽的な生活を送る高級娼婦が真実の愛に目覚める。
ズバリ泣ける話だ。冒頭からもう、悲劇のニオイがぷんぷん。一体何があったのかと興味を引く、聞き手を配して一人称で語らせる構造もうまい。エンタメの洪水に慣れすぎている現代人にとってはベタな展開といえるかもしれないが、この手の物語の源流のひとつなのだろう。
父親によって諭される、恋愛における現実的な視点が痛烈。若いころは先のことを考えられなくなるほど燃え上がる情熱も、何年もたてばどうなるか。娼婦であるがゆえの社会的なハンデ。さらに家族の問題を出してトドメをさしてくるが、この父親は人格者であり読者も憎めないと思う。青年アルマンによって純粋な愛に目覚めた高級娼婦マルグリットがとる決断と行動。愛憎が絡み合うすれ違い。日記という形で伝えられる本心が、涙なしには読めない。清らかな愛は往々にしてお金の問題や社会という現実に押しつぶされるものだ。美しい心根を受容できないこんな世の中こそ、非劇の温床というべきだろう……。
作中では頻繁に「マノン・レスコー」が引き合いに出される。登場人物たちにとって重要な本であり、ネタバレもされてしまうので、本作の前に読んでおいたほうが良い。
さらに本作「椿姫」の光文社古典新訳文庫版は、翻訳者の違う2バージョンが存在するので注意が必要。今回は最新の永田千奈訳を選んだ。 -
当時のパリの街の様子や、社会のことが分かって興味深い。そして最後は号泣。
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他作品に引用され登場したのを懐かしく思い、新訳にて再読。
読みやすく、分かりやすい訳にとにかく驚いた。
訳本にありがちな妙な言い回しがひとつもなく、美しく流れるような表現のおかげで、作品の純愛度が増したように思う。学生の頃は悲恋に憧れ、作品に没入した印象だったけれど、今回は違う選択をした場合、に興味がわいた。 -
以前読んだ時の感想と随分変わった
アルマンとマルグリット、とりまく人への私の感情が厳しいものになっていた
そしておさまるようにおさまった…という冷ややかな感想 -
光文社のこの文庫は古典でもすごく読みやすい!
恋愛ものはあまり読まないけれど、これはとても引き込まれた...アルマンしっかりして!マルグリットを信じて!って心から最後の辺りは思ってた笑
知らず知らずのうちにマルグリットの人柄に惹きつけられていった。 -
泣ける。マルグリットは悪女だ、という風に描かれることも多いけど、どちらかというと娼婦という人生を歩まないといけない女性が、その中でどうやって愛を貫くかのお話だった。
いつの時代も、相手にちゃんと話さないこと、ミスコミュニケーションにより起こる悲劇は鉄板だなと。意外と自分の人生でも起こるんだよなぁ。 -
娼婦と青年の悲しい愛の物語。
マルグリットの後半の苦しみは読んでいてこちらが胸張り裂けそうなほど。フィクションもありながら実話ベースとのことで、リアリティに満ちていた。