- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334754150
感想・レビュー・書評
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ドストエフスキー5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を順番に読んでいくというドストエフスキーチャレンジを実施中なのですが3つ目の『悪霊』まで読了しました。
しかしながら『悪霊』を読了したところで、その精神性の難解さにかなりダメージを受けてしまい、この『悪霊』よりもさらに難解だと言われている『未成年』にそのまま取り組むのはいかがなものかと思ってしまったのです。
このままの精神状態で『未成年』を読み始めると最悪、途中で挫折ということにもなりかねないので、ちょっと分かりやすい中編小説を挟むことにしました。
ちょうど良いことに、亀山郁夫先生の新訳で読みやすいことで定評のある「光文社古典新訳文庫」の『賭博者』が2019年の年末に新たに出版されたのでこの本を読むことにしました。
さすがに亀山郁夫先生のドストエフスキーの訳は読みやすい。
亀山先生のドストエフスキーの訳文を読むのは『罪と罰』以来ですが、江川卓先生の訳で読んだ『悪霊』、木村浩先生の訳で読んだ『白痴』に比べ、言い回しが現代的で読みやすいですね。
そして巻末に付いている『読書ガイド』が詳しく、ドストエフスキー初心者にとっては至れり尽くせりです。
さて、本書『賭博者』ですが、自身もギャンブル狂であったといわれるドストエフスキーの自らの経験が多分に反映されている物語です。
ドイツにある『ルーレティンブルグ』という架空の町でカジノに集う各国から来た賭博者たち。
主人公のアレクセイの恋愛と彼が賭博にのめり込んでいく様子が恐ろしくも美しく描かれていきます。
やはり、ギャンブルは恐ろしい・・・。
というか、僕はアレクセイと彼が恋する美女ポリーナとの関係が好きだな。
どS美女のポリーナとマゾのアレクセイという関係性が(笑)。
彼らの関係が僕が好きなマツリカシリーズのマツリカ様と柴山君の関係性を彷彿とさせてしまって、マツリカ様をポリーナ、柴山君をアレクセイに見立てて本書を読んでいたらちょっと吹き出しそうになってしまいました。
という訳で、やはりドストエフスキーは面白いということを再認識できたので『未成年』にチャレンジしていきたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
▼「賭博者」ドストエフスキー。初出1866年ロシア。亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫。
▼ドストエフスキーさんの未読の小説だったんで、いつか読もうと思っていました。電子書籍が割引セールしていたので購入。ドストさんはここ数年の間に「罪と罰」「カラマーゾフ」を再読して超絶にオモシロかった。10代の頃に多分ほかに「貧しき人々」「虐げられた人々」「白痴」「悪霊」は読んだんですね。どれも忘れているのでいつでも再読したいと思っています。それにしても題名だけ読むとどれもこれも陰鬱ですね…。
▼罪と罰の後に書かれたものだそうで、中編です。総論、「なんだか設定がわかりにくかったんだけど、後半オモシロかった」ですね。
▼1866年前後の現代劇でしょう。多分、ドイツかどこかの保養地に、ロシア貴族ととりまき一行が泊っていて、そこはカジノが有名。主人公は、多分全然金持ちではなくて、貴族一家の家庭教師の青年。で、とにかくちょっと初期設定がわかりづらくて、でもそのままどんどん読んじゃったんですが、
・実はご主人様もそんな金はなく、親戚の遺産を当てにしている
・取り巻きの一人であるロシア娘に主人公は恋をしているが
・ロシア娘は弄ぶタイプではっきりしない。
・そこにみんなが遺産を当てにしている、瀕死のはずのロシア老女が全快で登場して
・制止を振り切ってカジノで遊んでひと財産すってしまう。
・主人公が惚れている相手はフランス人とくっついて
・主人公はカジノで大フィーバーで一気に大金持ちになり、別の女とパリに去るが
・やがて無一文に戻ってギャンブル中毒、カジノで下働きまで身を落とし、生きていく。
みたいなお話でした。
▼で、なんだか基本的な前提がよくわかんないんですけれど(笑)、とにかくギャンブル場面が、アツい。ものすごい濃度です。カラマーゾフで、長男ミーチャの放蕩場面もすごかったんですが、こういうのドストさんすごいですね。体の奥から、精神から焼かれるようなギャンブルの魅力と怖さが、なんと言ってもハイライトでした。 -
明らかにエンターテイメントの小説ではないことは確かでした。主人公であるアレクセイを通してドストエフスキーの思考および嗜好を伝えようとしているのは理解できました。
全てを理解することは難しかったが、訳者あとがきの定められた運命=ルーレットとする解釈など視点が穿っており、大変刺激的だった。 -
女に狂い、博打に溺れる。
人間の汚さ、愚かさ、無様さ、健気さ。
詰まってる。 -
ドストエフスキーにしては登場人物少なめ。ストーリーはいまいちだが賭けに狂った車椅子のイカれたババアの印象がすごかった。
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カネ、恋愛、名誉は改めて言うまでもなく、人間の欲望の根源である。そうした欲望を満たすために、程度の差こそあれ、誰でも無謀な賭けをした経験、したくなる衝動を感じるものであろう。ルーレットにハマる主人公を通して、そうした根源的な心理を追体験できる。
ただ、カラマーゾフの兄弟や罪と罰で感じたような、こころの奥底が揺さぶられるような刺激までは受けなかった。自分のギャンブラー的な側面を客観視し、ふと我に帰らせてくれるような、軽い快感を得られるくらいである。 -
テーマがギャンブルであり、普段隠れている人間の欲望がお尻丸出しぷるんぷるんである。そこをただの下世話なだけでなく、何に幾らいつかける、という人生そのものの縮図のように表現され、皆が共感できる作品となっている。こういう人生の苦悩的な作品はポールニューマンが映画でやると似合うな。→金持ちの老婦人が親戚連中の所にやってくる。遺産目当てのおためごかしをバサバサ斬ってゆくのが爽快。ギャンブルとは自分という人間を過信することとの戦いを表している。こういう人は戦国時代に生まれろ。
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人物描写が素晴らしい。壊れた人たちだらけだが。