- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334754242
感想・レビュー・書評
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今年、様々な書評で見かけた一冊。
クリスマスキャロルに匹敵するような、心が暖かくなる物語。
まず、表題の「みずうみ」。これは、自分の初恋回顧のお話。言ってしまえばそれだけなのだけれど何故かみずみずしさと切なさと、それからちょっぴりの後悔とが心を惹き付けます。色鮮やかな情景が目の前に広がるような繊細で素敵な文章です。
「人形使いのポーレ」
人形使い。なかなか身近な職人ではないが何故かまるで身近でお話を見ているような臨場感がある。時代の流れは残酷ではあるが身近な人を大切に思う心は美しく、そんな心を持ち続けたいと思わされる。
過去に読んだ古典文学の中でも、かなり心捕まれた一冊。 -
19世紀ドイツの作家シュトルムが、青春や家族の心理を詩情豊かに描いた3篇を収録。切なさと愛しさと心強さと。
みずうみ、この作品は新海誠の『秒速5センチメートル』を彷彿とさせる。なぜ、連絡をとらなくなったのか、なぜ、こうなってしまったのか。長い時間における心理の描写がすっぽり抜けていて、こちらが想像するしかない部分が多く、唐突な結果にあぜんとする。それだけに切なさが強烈で、読後に独特の余韻を残す。この感じも、まだ尖っていた頃の新海誠作品に似ていて、自分はこちらの方が好みなんだよねぇ。
三色すみれ、この作品は継母を迎えた父娘の葛藤を描いた、現代でもドラマとかでよくみるパターン。衝突を繰り返しながらも、とある決定的な出来事で新しい家族の絆が紡がれていく。あふれる愛しさが半端なくて、自分も家族を大事にしたくなる。いないけど。
人形使いのポーレ、この作品は、とある旅芸人一座との出会いと別れが描かれる。ノスタルジーと青春と家族愛と、すべてがある集大成的な感じで、中篇程度の長さであるにもかかわらず、情緒ある光景と、繊細な心理描写も相まって、どっぷりと読み応えがあった。また、ところどころで意外な事件が起こるので飽きさせない。ラストは愛する人の心強さに感動する。本書で一番のお気に入り。
この作家の作品をもっともっと読みたいのだけど、そんなに数は残していないようなので、いずれ他訳にも挑戦してみたい。名作保証☆ -
初シュトルム。幼い頃に読んだ海外小説の高揚感を思い出した。自国の文化ではない見知らぬ世界の風景、人々の営み、人生の有り様。
松永さんの訳も良かったのだと感じた。 -
「三色すみれ」後妻、継子、アホ旦那。継子は多分5歳位。母親がいなくなって、寄りかかっていたものがなくなり、後妻は懸命に支えようとする。しかし喪失感はそのまま、新しい人間が増えただけであり、アホ旦那は二人の焦燥感を理解できないという。水、油、金粉をビーカーで懸命に回しても、全然混ざりません。奇跡の乳化剤的な物カモーン。
しかし、現実をきっちり見据える二人と理想だけを押し付けて終わりな男。女がロマンチックって、誰よりも現実的だから、逃げどころが欲しいんじゃ!世の中の男性、わかっておろうな? -
「みずうみ」幼馴染の二人、ラインハルト10歳とエリーザベト5歳の頃からお互いに好意を抱きあいそのまま数年間が過ぎるが、ラインハルトが17歳になり寄宿学校へ入ることになって、遠距離になった途端、気持ちにも距離が出来る。やがてラインハルト不在の間にエリーザベトは湖の傍に土地を持つエーリヒというラインハルトの同級生と結婚してしまい…。
成就しなかった初恋の物語。短編だが、すでに老人となったラインハルト(独身のまま)の回想の形で進むことで深みが増している。ところどころとても鮮やかで美しい場面があり(夜の湖に咲く1輪の睡蓮までラインハルトが泳いでいくも届かない場面など)とても瑞々しい気持ちになるが、基本的には当のラインハルトのマヌケさゆえに逃した恋なので、あまり主人公に肩入れできなかった。そんなに好きなら、彼にはもっと出来ることがあったはずなのに、ぼやぼやしすぎ。招かれてエーリヒの家にいくデリカシーのなさも理解できず。これが名作と呼ばれているのはひとえに作者の描写の力のみではないかという印象。
「三色すみれ」母を亡くしたネージー(アグネス)の父親が再婚し、新しい若い妻がやってくる。継母と継子の確執もの。後妻イリスは別にネージーを苛めたりはしないが、どうも被害妄想が激しいというかネガティブ思考というか、話を聞いてるだけで疲れてしまう。ただこの後妻自体がものすごく若いようなので、十代なら実際にはネージー(10~11歳くらい?)とさほど年齢差はないのかもしれず、そう思うと気の毒ではある。
「人形使いのポーレ」これが一番面白かった!機械工の老パウル・パウルゼンに弟子入りした「ぼく」は彼が「人形使いのポーレ」と嘲り呼ばれていたことを知る。パウルは「ぼく」にその由来を語る。少年時代、町にやってきた旅芸人の人形芝居の一座、その娘リーザイとパウルは仲良くなり、パウルはすっかり人形芝居の虜になる。お気に入りの人形カスペルルをめぐる騒動などがあり、家族ぐるみで仲良くなるが、旅の一座であるリーザイ一家はやがて町を去っていく。それから12年の月日が流れて、ひょうんなことでパウルはリーザイと再会し…。
大変ベタな展開だけれど、善良で親切な人たちがたくさん登場して、回想ゆえ、最後のハッピーエンドも約束されており、ベタゆえの安心感があるのは逆に良かったと思う。 -
スミレには、継母とその子供と継子の椅子を表す、と言うのを「野生の思考」で読んだような(冒頭だけ読んで終わってしまったけど、たぶんいつかまた)。
有名らしい「みずうみ」知らなかった。シュルトムすら聞いたことがなく「人形使いのポーレ」も初めて読んだ。が、「三色すみれ」って知ってるなあ。何処でいつ読んだのだろう。 -
短編集.
3編共過去を思い出すというより,過去と寄り添っているような味わい深い物語.訳もいいのだろうが簡潔な文章で物語の風景世界が目の前に広がっている.森の中のいちご摘み,枯れたバラ園,人形劇など目に見えるようだった. -
全編、きれいなきれいな風景が目にうかび、きれいな心を持った人たちがそこに生活しています。美しく、味わい深い、余韻がどうしても残る短編たちです。切ないのはみずうみだけれど、三色スミレも人形つかいのポーレも、これは人間賛歌。少年少女のうちに読むことをお勧めするかな。いや、みずうみのせつなさはある程度の年齢にならないとわからないでしょうね。そういう意味ではR18もの。
大好きな作品なので、タイトルを見ただけで嬉しくなりました!
読んだのは相当昔なんですが、忘れ...
大好きな作品なので、タイトルを見ただけで嬉しくなりました!
読んだのは相当昔なんですが、忘れることはありません。
こういうタイプの本がなかなかタイムラインに乗らなくて、いつも物足りない思いをしています。
久々に引っ張り出して読みたくなりました。
ありがとうございます!