19世紀イタリア怪奇幻想短篇集 (光文社古典新訳文庫)

著者 :
制作 : 橋本勝雄 
  • 光文社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754372

感想・レビュー・書評

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  • 編訳者によれば、
    リアリズムが重んじられたために発展が遅れたものの、
    19世紀半ば、E.A.ポオ作品の輸入と、
    独自の文学運動の波によって花開いたという
    イタリア幻想小説から選りすぐられた9つの短編が収録されている。
    主なテーマは「死者の帰還」「強迫観念」「奇譚」といったところ。
    もっと“変な話”を期待していたが(笑)
    意外にアッサリした理知的なトーンで、やや拍子抜け。

    以下、ネタバレしない範囲で全編についてザッと。

    ■イジーノ・ウーゴ・タルケッティ「木苺のなかの魂」
     Uno spirito in un lampone,1869
     狩猟に出た青年男爵Bが喉の渇きを覚え、
     木苺を摘んで食べたところ、
     自分が自分でなくなったような、
     何者かが自分の肉体を奪ったかのような奇怪な感覚に囚われた――。

    ■ヴィットリオ・ピーカ「ファ・ゴア・ニの幽霊」
     Lo spettro di Fa-ghoa-ni,1881
     大金がなければ幸福になれないと思った
     アルベルト・リーギはパオロ・ヴェリーニに苦衷を吐露。
     魔術でめでたく金を手に入れ、結婚したのだが……。
     日本人のネーミングがデタラメで、
     日中印のイメージが混濁しているところに苦笑。

    ■レミージョ・ゼーナ「死後の告解」
     Confessione postuma,1897
     死んだ若い女性が告解のために神父を呼び寄せる話。

    ■アッリーゴ・ボイト「黒のビショップ」
     L'alfier nero,1867
     スイスのホテルのサロンでチェス対局をすることになった
     ジョージ・アンダーセンと黒人の青年富豪トム。
     白人対黒人の勝負を
     そのままチェスの白黒の動きになぞらえているが、
     差別的な表現が多い。

    ■カルロ・ドッスィ「魔術師」
     Il mago,1880
     幼少期から死の恐怖に取り憑かれ続けて年老いた男は、
     様々な研究に打ち込んできたが……。

    ■カミッロ・ボイト「クリスマスの夜」
     Notte Natale,1876
     ジョルジョは愛する姉とその娘を亡くして悲しみ、
     自身も体調不良に悩まされながらミラノを歩き回って、
     姉に似た顔立ちのお針子を見初めた――。

    ■ルイージ・カプアーナ「夢遊病の一症例」
     Un caso di sonnambulismo,1881
     夢遊病になった警察署長が、その渦中、
     悪辣な強盗殺人の有り様を透視し、筆記。

    ■イッポリト・ニエーヴォ
    「未来世紀に関する哲学的物語‐西暦2222年、世界の終末前夜まで」
     Storia filosofica dei secoli futuri,1860
     イタリア統一運動を踏まえて描かれた“その先”の世界。

    ■ヴィットリオ・インブリアーニ「三匹のカタツムリ」
     Le tre maruzze,1875
     絶対に嘘をつかない正直者のドン・ペッピーノ、
     最大の危機。

  •  19世紀後半の、日本では全く知られていないイタリアの作家たちによる幻想短編集。
     怪奇小説であっても全体的にあまり暗いトーンを感じず、明るい雰囲気がある。
     無数の作品から選び出したアンソロジーなのだろうから、確かに様々なアイディアによる短編が集まっており、それはなかなか楽しい。が、「これは」と身を乗り出すようなものは見つからなかった。まあ、何となく楽しんで読めばいい、という本ではあるだろう。

  • 9篇から成る短編集。印象に残ったのは後半の4篇。「クリスマスの夜」神経症的幻想。「夢遊病の一症例」夢と現実の混乱と発狂。「未来世紀に関する哲学的物語」善良なる人々の教皇ヨハネス・マイエル。

  • ニ世紀前のイタリアの怪談を日本語で読める機会なんてそうそうないので、読めたこと自体は貴重だった。

    が、ひとつひとつの話の内容が薄くて面白みはいまいち。
    どの話もキャラクターの性格に厚みがない。
    喜怒哀楽がステロタイプで共感できず苦痛になってくる。

    最初の三作ほどは新鮮さもあり、日本が舞台だけど人物の名前がとても変なファゴアニの話、チェスの話あたりまでは楽しく読めたが、ジョルジュぼっちゃんの話、ひたすら死を恐れて引きこもるおじさんの話あたりで冷めた。

    ふつう50歳前後にもなったらもっと生死に対しては達観するし複雑な感情もあるだろうに…共感できない。

  • 日本ではなじみの薄いイタリア文学のそのまたなじみのない作家たちを集めたちょっとふしぎでこわい短編集。あまりはまるものがなかった。

  • 19世紀イタリアの怪奇短編集です。今までこのような古典アンソロジーは無かったのではないでしょうか。やや古さは感じるものの、さすが光文社古典新訳文庫、飽きずに読み進める事ができます。二重人格もの「木苺のなかの魂」怨霊が迫る「ファ・ゴア・ニの幽霊」が良かった。

  • 読み応えある9作家の短編集。

    怪奇幻想といっても幽霊…SFなど種類が分かれているので、ネタバレが大丈夫な方であれば最初の説明書きを読んで興味のある話から読み進めるもよし。順番に読むもよし。

    どの作家も日本での知名度が高くない分、素敵な宝物に偶然出会った感覚を味わえること間違いなし。

  • イタリア文学ってあまり読んだことがないかも……作家さんの名前も全然知らないけれど。とりあえず怪奇幻想ならば読んでみるべし、と。
    お気に入りはカルロ・ドッスィ「魔術師」。死が怖い、というのは人間として当たり前のことではあると思うのですが。それがまさかこんなことに! 本末転倒ともいえるラストは、恐ろしいというよりも皮肉です。
    王道な怪奇小説としてはヴィットリオ・ピーカ「ファ・ゴ・ニの幽霊」も面白かったです。だけど……「どう考えても日本じゃないだろそれ!」というツッコミを入れたくなってしまいました(笑)。まあこちらも海外のあれこれは区別がつかない部分があるので、それとおなじなのでしょうけれど。

  • 「知られざる」イタリア19世紀作家のの幻想短編集。とくにアッリーゴ・ボイト『黒のビショップ』、ルイージ・カプアーナ「夢遊病の一症例』、ヴィットリーオ・インブリアーニ『三匹のカタツムリ』が面白かった。とくに『黒の…』は極めて劇的、と思っていたら、ヴェルディのオペラの台本作家ということで成る程と納得。
    イタル・カルヴィーノの評価が19世紀の文学の評価に(評価を下げる方向で)影響をあたえているというのも興味深い話。

  • クリスマスの夜まで読んで中断した。

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著者プロフィール

1967年生まれ。京都大学文学部卒業、同大学大学院博士後期課程単位取得退学。現在、京都外国語大学教授。訳書に『イタリア語の起源――歴史文法入門』(パトータ)、『イタリア20世紀史――熱狂と恐怖と希望の100年』(コラリーツィ、共訳)、『プラハの墓地』(エーコ)〈第2回須賀敦子翻訳賞受賞〉などがある。

「2021年 『ぼくのがっかりした話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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