ラガド: 煉獄の教室 (光文社文庫 も 19-1)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334763862

作品紹介・あらすじ

始業直前の中学校の教室に包丁を持った男が乱入、学級委員の女子生徒を刺殺した。怨恨か、無差別殺人か?警察は教室の原寸大セットを組み、犯行の再現実験を行うが、再現を重ねるたびに予想外の事実が判明し、迷走状態に陥る。一方、事件の真相を生放送で暴くと予告したテレビ局は、公約を実行することができるのか?第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 純粋に推理を楽しむミステリー小説ではない。
    ホラーミステリーといえばいいのか、それともSFミステリーといえばいいのか。
    終盤に向かうまではとても面白かった。
    テンポの良さ、登場人物たちの動きがわかりやすく描かれ戸惑うことはない。
    やたらと多い教室内の図式もいい。
    事件当日のようすを探ろうと情報を集める秘書やテレビ局。
    証言に基づき事件を解明しようとするふたりは、互いに情報を補完しながら真実へと近づいていく。
    事件の本質は思いがけないものだった。
    次々と明らかになっていく新事実は隠されていた過去や人の醜さをあぶりだしていく。
    ではこの物語の本質はなんだろう?
    ホラーという素材をミステリーで味付けしたような、ちょっと変り種の面白さがある物語だった。

  • 『自由は、野方図の中からひとりでに生まれるものなどでは絶対にありません。『よき管理』のもとで初めてあたえられるものだということを、わかってくれたんです。』

    面白かったけど、ミステリの枠を飛び越えてしまったので、期待していたものではなかった。でも、これはこれで良かったな。続編が出て欲しいな。

  • 教室で起きた,父兄による生徒殺傷事件の謎を追う話。
    タイトルと表紙から,「悪の教典」的な虐殺劇かと思いきや,非常に論理的。
    この作者の「ブラッグ 無差別殺人株式会社」同様に良い意味で期待を裏切った作品。

  • ストーリー:
    始業直前の中学校の教室に包丁を持った男が乱入、学級委員の女子生徒を刺殺した。怨恨か、無差別殺人か?警察は教室の原寸大セットを組み、犯行の再現実験を行うが、再現を重ねるたびに予想外の事実が判明し、迷走状態に陥る。一方、事件の真相を生放送で暴くと予告したテレビ局は、公約を実行することができるのか?

    感想:
    真実(と思われること)が一転二転三転四・・・・となっていくスピード感、先を読みたいと思わせる展開はピカイチだと感じた。図が多々出てくるがそれも展開描写として必要だと感じられるレベルで邪魔だとは感じなかった。本当にラストの不明瞭さが残念。あとは読者の想像にお任せしますスタイルなのかもだが、それにしては雑に感じた。

    以下感想・疑問点箇条書

    ・○○とは結局なんだったのか?ちょいちょい○○のヒント?のような記載はあったが、鏡に映らないことがある~ってとこからは「幽霊」かと思ったがそれだと他の供述(ヒント)といまいち一致しないし・・・ほんと謎
    以下○○のヒント?
    「○○とは、この場面でまさか出てくるとは誰も思ってみなかった言葉であり、同時に、日本の現状では活字にすることのできない言葉であった。」
    「瀬尾将との会話をとったテープがある。この中で瀬尾将は、人間として許されないようなこと(のちにこれが"クラスの中に○○がいる"という内容だとわかる)を喋っているんだ。これが公表されれば終わりだぜ。」
    「身体のあそこがそんな感じ」
    「ものを食べるときもそう」
    「ときどき鏡に映らないことがあるらしい」
    「日本よりも外国に○○が多い」
    「親戚にも(○○と思われていた転校生の?)○○がいるらしい」
    「転校時の健康診断書に○○と書いてあったらしい」
    「いまどき、○○とは・・・21世紀の話とは思えない」
    「問題なのは、どの学校でも○○について正確な知識を子供たちに伝えていないことだ。教科書にはもちろん載っていないし、教師たちもこの話題にふれようとしない。だから子供たちは、自分なりのイメージだけで○○というものをとらえ、解釈するしかない。そしてそのまま大人になっていく。これはかなり危険なことじゃないだろうか。」・・・・謎すぎる
    「生徒たちが感じた”変なもの”とじゃそれ(SメソッドのS)だったんだ。クラスの中に、なにか異質なものがいる。変なものがクラスの中にいて、なにかをしてまわっている。生徒たちは本能的に感じ取っていたんだ。異物感を。その変なものが、いつのまにか○○だということになって、噂としてひとり歩きし始めた・・・」

    ・藤村綾の「わたしのかわりに」という発言・命令に関して、彼女が何か超越的な謎の支配力をクラスの統治のために身につけたとしても(この点がこの作品の一番の核でありながら一番不明瞭なとこだが)、それはあくまでクラスのためという意図の元動いていたはずなのに、最後で最初となる命令が独裁者みたいな露骨な命令であったことが納得いかなかった。(これもよくよく読んでいたら徐々に思い通りにできている状況がおもしろくなってきたのではという想像もあったことから堕ちていったのかもしれない)
    ・ラガドがこの事件後、90時間母子、関係者共々盗聴していたとの描写があったが(この後に書いたが、よくよく読んだら盗聴していたのはブルースリーであって≠ラガドでないかもしれない)、この事件が始まってから藤村綾が完成しかけていた「何か」に気付き監視していたということなのだろうか?それとももっと以前から?ラガドがどんな凄まじい機関だろうがどうやってその点に気付けたのかが謎。そこに気付ける力があるのならば、島津に自白剤をつかって何か少しでもヒントを手に入れようとするような遠回りなことはする必要がなかったのでは?
    ・「モン」の由来
    ・後半部から凄まじい勢いで真実が一転二転していったが、甲田の想像部分もあり、明確にならないまま(なってるのかもだけど)のとこもありどれが真実がわからない点も多々あったような気がする。
    ・バベル=ブルースリーではないということのようだが、バベル=ラガドであって、ラガド=ブルースリーではないということであっているのか?そうなると、盗聴者=ラガド(バベル)であって、ブルースリーは盗聴者でないということなのか?でも、作中で登場人物たちの会話に対してリアルタイムでコメントを入れているとこをみると盗聴者=ブルースリーであって、ラガド(バベル)は作中の意味深な第三者としてはほとんど出てきていないということなのだろうか?
    ・飯沢が不良共を道から退去させたシーンが謎。何故、飯沢は握手までして不良共を退去させれたのか?ただの勇気あるシーンというには謎すぎる。
    ・冬島康子がブルースリーと話した内容とはなんだったのか?
    ・ブルースリーが最後のシーンでこの後行くと言っていた「いい温泉のわく保養地があると聞いたものですから」という行き先(冬島曰く"あの国に温泉なんてあったかしら・・・"とのこと)とはなんだったのか?この意味深なフリは一体?

  • 3 

    巻末の綾辻行人との対談で、著者は“広義のミステリーとして書いた”と言っているが、今どきの“広義のミステリー”ほど曖昧なジャンルはない。仮説と否定が繰り返される構成は、ある種のミステリの構造の一つとしてすでにある。しかし本作は基本的に読み手から情報を隠し、作中人物が勝手に仮定を構築し、勝手に否定されていくのを大量の図版と一緒に傍観していくだけなのが物足りない。個人的には、教室を舞台にしたSF謀略小説と感じたが、あながち的外れでもなかったようだ。やはり対談で、著者はかつてはシナリオライター志望でSF好きで映画好きということが明かされるが、なるほどそういった嗜好や特徴が本作には表出している。ラストに向けての図版の連続によるスピード感は圧倒的で、盛り上がりにも一役買っている。このあたりは多分に“実験映像”的で作家受けは良さそうだが、はたしてそうでない向きにはどうだろう。
    本作を“面白かった”と言い切れないのは、肝であるはずの“空気感”あるいは“空気を動かす感”がいまいち伝わってこないからだろうか。描写自体はあるのだが、作中人物に陳腐な台詞を喋らせているだけで説得力はあまりない。そのあたりは、状況描写は図版におまかせのシナリオ的筆致が逆に足枷になった感がある。

  • なんか評価が高そうだったが、読了後感はそれほどでもなかった。

  • 可もなく、不可もなく。
    まぁ時間を潰すには良い本。
    確かに、斬新だと言えなくもない。

  •  中学校のある1クラスで起こる殺人事件。犯行の再現実験を繰り返しながら、「緑の鹿」に至るまでの、圧倒的な読みやすさ。この謎解きのためにこそ、あの大量の図版が必要だったのかと納得。
     映画でも漫画でもなく、活字で追うからこその愉しみを十分味わうことができる一冊。

  • 面白かったです。でも、これ…図版がかなりあって、その図版で頁数が増えてて(苦笑)そんなに気にはならなかったけど、ちょっと吃驚でした(笑)

  • 始業直前の中学校の教室に包丁を持った男が乱入、学級委員の女子生徒を刺殺した。怨恨か、無差別殺人か?警察は教室の原寸大セットを組み、犯行の再現実験を行うが、再現を重ねるたびに予想外の事実が判明し、迷走状態に陥る。一方、事件の真相を生放送で暴くと予告したテレビ局は、公約を実行することができるのか?第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作

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著者プロフィール

1960年埼玉県出身。北大教養部理Ⅲ系中退、一橋大学経済学部卒。2010年『ラガド煉獄の教室』で第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。著書に『人間性剥奪』『ブラッグ』『ハンザキ』『困った作家たち』など。ショートショートから長篇まで、幅広く執筆している。twitterで「両角長彦の140字小説」発信中。

「2020年 『ある実験 一人選べと先生が言った』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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