狐武者 (光文社文庫 お 6-30 光文社時代小説文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334773427

感想・レビュー・書評

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  • 岡本綺堂の文庫初収録作品、全7編。
    時代小説文庫なので、すべて時代劇かと思っていたが、
    そうではなかった。
    『青蛙堂鬼談』の愛読者ゆえ、
    ゾッとする怪異譚を期待していたけれども、
    意外に薄味、アッサリしていた。

    ■うす雪(1918年)
     雑誌編集長・須郷匡三の妹・貞子は女学校の教諭で、
     自宅に数人の生徒を寄宿させていたが、そのうちの一人、
     栗田男爵令嬢・雪子が姿を消したという。
     捜索に力を貸そうとした匡三は意外な事実に行き当たった――。
     携帯端末どころか固定電話すら普及率の低かった時代、
     探偵ごっこも大変だったのだ(笑)。

    ■最後の舞台(1920年)
     語り手「私」は六、七年前に一度会ったことのある女性と
     偶然再会。
     かつて女優志望の彼女に見込みはなさそうだから
     諦めた方がいいとアドバイスした「私」だったが、
     彼女はその後、ほどほどに活躍しているらしかった。
     ところが……。

    ■姉妹(1921年)
     タイトルの読みは「きょうだい」。
     某男爵家に仕えていた女性「わたくし」の回想。
     男爵令嬢姉妹の姉・常子について。

    ■眼科病院の話(1920年)
     梶沢医師が近所の眼科医院で起きた一件に巻き込まれる話。
     院長・津幡の女性関係と、
     それに付け込んで悪事を目論んだ者たちについて。

    ■勇士伝(1924年)
     天正十年四月、豊臣秀吉に攻め込まれた備中高松城。
     城主・清水長左衛門宗治に仕える矢坂次郎兵衛光近は
     河童と狸の助力で様々な手柄を立てたが……。

    ■明智左馬助(1923年)
     近江国の若侍・入江小七郎十七歳が狐に取り憑かれ、
     禰宜がお祓いをしようと申し出たが、
     後から訪ねてきた父・長兵衛の知人・三宅弥平次が疑義を……。

    ■狐武者(1924年)
     元弘三年、
     肥後の菊池から大宰府へ向かった入道寂阿の配下、
     十八歳の若侍・真木小次郎重治の記憶。
     彼は父が母と結婚する前に契った狐の化身に
     見守られ続けていた。

  • すべて文庫未収載作品。
    素人探偵物、世話物、怪異物と、綺堂氏の得意分野からそれぞれ集められています。
    「姉妹」という作品がなんだか解釈がいくらでも出来そうで、ドラマにでもしたら演出次第で、全く違う印象(結末)を与えると思います。

  • 岡本綺堂の短編集は中公文庫から出てた山本タカト表紙絵のシリーズを揃えていたので、若干内容かぶりのある光文社文庫のほうは手を出してなかったんだけど、これは「全部文庫初収録」というアオリだったので購入。初収録にこだわったせいかジャンルは意外とバラバラだったけど、逆にそれがバラエティに富んでて良かった。

    お気に入りは後半の時代もの3作。河童との相撲に勝って河童の守護で出世した男の末路「勇士伝」、狐に化かされた親子を助けたのち明智光秀に仕えた武士の「明智左馬助」、父親の元カノが狐だったおかげで狐の加護を得た若侍の「狐武者」。いずれも河童とか狸とか狐とかの力を借りて一旦は出世する武士の話だけれど、仕返し要素の強いシニカルな「勇士伝」もいいし、義理堅く恩返しする狐のやさしさがありがたい「狐武者」もそれぞれいい。

    前半はミステリー系の短編だったけど、最初の「うす雪」だけは無駄に長いわりにつまらなくて辟易。親に交際を反対された男女が登場するのだけど、この女性がどうもヒステリックで苦手だし(当時の29歳独身女性って相当年増扱いだったのだろうな。年下男への執着が怖い)、相手の男も煮えきらなくてイライラするし、探偵役は行き違い擦れ違いばかりでこれまたイライラしてしまう。他の短編は面白かった。とくに女の嫉妬が怖い「姉妹」が良かったけど、タイトルと内容は関係なかったですね(姉妹の葛藤ものではない)

    ※収録作品
    「うす雪」「最後の舞台」「姉妹(きょうだい)」「眼科病院の話」「勇士伝」「明智左馬助」「狐武者」

  • 語彙や言葉遣いにほっとする。
    中身はあんまり面白くないのも多かった。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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