今はちょっと、ついてないだけ (光文社文庫 い 60-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334777463

感想・レビュー・書評

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  • 20年前に一世を風靡したが、一発屋として廃れてしまったフォトグラファータチバナコウキを中心に描かれる、人生停滞中の中年世代の人間の連作集。

    異性関係、仕事で行き詰まるも、この年齢で新しいことにチャレンジし、その楽しさを知っていく姿には勇気がもらえます。

    年齢を重ねてから過去の自分を改めて見ることで、その時には見えていなかった景色が見える様子は、読者を前向きにさせようという作者の想いが感じ取れて心があたたかくなりました。

    自分の今までやってきたことが無駄になったと感じても、またそこからやり直せばいいのかもしれない。生まれ変わった気持ちで、一からやり直して、そんな生活もきっと幸せなのかもしれない。そう思わせてくれる作品でした。

  • 最初、一人称で語られる主人公は、本当に冴えない情けない人のように思えた。
    けど、語り手が変わるごとに、語り手以外の人の魅力的な姿が見えてくる。
    本人が語る自分は誰しも情けない姿だったものが、だんだんとお互い絡み合い、自分への視線が優しくなってくる。
    辛い時は一人で殻に閉じこもることも必要だけど、人と関わりあってこそ見えてくる自分の姿ってあるよなと思った。

  • 人生再スタートってかんじの本だった。「今は」っていうワードけっこう重要だなと思った。今の状況がずっと続くわけではない。流れに逆らわず、来るもの拒まず、ただただ受け入れる。そう生きたいものだ。でもそれが難しいんだけどね〜。

  • 立花浩樹は『タチバナ・コウキ』と名を変え、自然写真家として一世を風靡した。バブルがはじけ、事務所の借金も背負わされ返済をするため、地元に帰り、なりふり構わず働いた。最初の章は情けない中年男性の敗者復活戦の話かと思ったが、読み進めていくうちにまるで違った。借金を背負わされた本人と対面するシーンまで描かれている。お見事!あっという間に読んでしまった。

  • 負け惜しみ的なタイトル通りの第一話で読む気がなくなったが、その先は少し意外な展開もあった。テーマとしては敗者復活戦というところだが、小説として楽しめない感が残るのは自分の年齢のせいか。だとしたら、この小説は誰が読むんだろう、あまり勧める相手もいない感じがしての星評価。案外このテーマは難しい。

  • バブル期に,カリスマ的プロデューサー巻島に振り回され、ネイチャー番組で人気絶頂から、借金の保証人として金も生活も恋人もなくし,ただただ返済のため故郷で働き続けた写真家の立花。母親の病院で、立花と知り合い,その後の人生に深くかかわりを持つ宮川。大学時代の友人,岡野。見合い写真を立花に撮ってもらいに来た佐山。立花と同じシェアハウスの住人で、立花の撮影に関わるうちに、諦めかけていたヘアメイクの仕事に進んでいく瀬戸、そして一発逆転を狙う芸人の会田。立花に関わりながら、それぞれの道を見つけ、立花自身も まだ見ぬ場所を探しに動きだす。映画化され、立花を玉山鉄二さんが演じるとか。きっと素敵な立花になるだろうな。
    どの人も、すすっと人生うまく行ってる訳じゃない。私の人生にも、何度も 今はちょっとついてないだけが 訪れた。何がきっかけで 復活できたのかもう思い出せないけれど、きっと私も誰かに助けてもらったような…。救いのあるおわりかたで、読後感が良かった


  • 若くして「時代の寵児」として虚像を造り上げられ、その時代の終焉と共に全てを失った男が、母親の見舞いに訪れた病院で出会った親子との縁で、それぞれに挫折を抱えた人々と触れ合う。

    それぞれの再生の物語。


    ◯立花弘樹…大学時代にスカウトされ、カメラマンが秘境をめぐる番組「ネイチャリングシリーズ」で時の人となるがバブル終焉と共にブームは去り、さらに恩人の作った多額の借金を背負う事に。
    人間不信で寡黙だが佇まいが美しい。

    ◯宮川静枝…弘樹の母親の入院仲間で、
    弘樹に写真の撮影を頼む。

    ◯宮川良和…静枝の息子。
    映像の制作会社に勤務。
    お色気番組で一世を風靡したが、リストラに近い自主退職に。
    母の見舞いで、かつての有名人「タチバナコウキ」と出会い、その変わり果てた姿を罵倒するが、実は当時の「コウキ」は自分の憧れのヒーローだった。
    押しかけで、弘樹のアシスタントになり
    ナカメシェアハウスに。

    ◯宮川菜々子…良和の娘。
    幼い頃からバレエをしていたが、良和の知らないうちに創作ダンスの劇団で活動。
    祖母・静枝の紹介で弘樹にパンフレットの撮影を依頼する。

    ◯巻島雅人…弘樹をスカウトしたプロデューサー。ネイチャリングシリーズの仕掛け人。多額の負債を背負うが自己破産し姿を消した為、保証人の弘樹に弁済義務が。

    ◯岡野健一…弘樹の大学時代の友人。妻子との関係修復の為アウトドアの指南を受けるが、次第に自身がハマって行く。
    ネット関係の分野に明るく弘樹達に協力。

    ◯瀬戸寛子…ナカメシェアハウスの住人。美容全般のスキルを持つメイクアップアーティストだが、接客が苦手でリストラされ現在就活中。
    弘樹たちの撮影にメイクアップで関わって行く。

    ◯会田健…旬を過ぎて仕事の無い大物お笑い芸人。宣材写真の依頼がキッカケでナカメシェアハウスに加わる。



  • 他人から「終わった人」と思われようが人生は続く。その続きをどうしていくかを他人のせいにしたら本当に終わる。いつまでも輝く人はきっとそれがよくわかってるんだ。
    他人が持っているものを羨ましくなったときは思い出そう。どこにだって行ける、何だってできる、あとは自分の心持ち次第。

  • 人生の敗者復活戦。ひょんなことで、自分の進む道が閉ざされたり、真っ暗になったりする。しかしその反対もあり、急に道が開けたり明かりが照らされたり、道筋が見えたりする。生き抜くことで、このようなことが起きる。だからなにが起きても生き抜かないといけないなと思わされる。このタイトルのように「今はちょっとついてないだけ」を思えば少しは嫌なことがあっても凌げるのではないだろうか。面白く読ませて頂きました。

  • 淡々と話は進んでいくけど、なんだかほんわか前向きになれる。
    まあ、うまくいきすぎな感はあるけど。
    敗者復活戦、合ってほしいよね。

    登場人物の会話のテンポが軽快で楽しい。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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