逆転のアリバイ 刑事花房京子

著者 :
  • 光文社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334914585

感想・レビュー・書評

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  • 容疑者が完璧だと確信したアリバイが、敏腕刑事花房京子によって覆される物語。警察官を除く主要登場人物は宝石商の壬生真理子、夫の陽介、そしてイタリア人のフェルナンド。本作は序盤で犯行の様子が描かれるので、読者の興味はアリバイ崩しの腕前に注がれることになる。

    宝石が扱われる物語だが華やかさとは遠い。警察側は常時冷静沈着で、花房京子は目立つ外見を抑えたイメージだ。宝石商関連の人物、特に3名については良い印象が全くない。容疑者が、仮に才能にあふれ情状酌量の余地のある人情家であれば、アリバイ崩しにも緊迫感がうまれるのだろう。京子が犯行の様子を説明するだけで終わってしまったのは残念。最初に犯行が明らかなケースでは、鉄壁のアリバイと突出したキャラクターが必要。

    地元神奈川の交通事情が詳細に描かれ、ドライブしてみたい気分になったのはよかった。

  • 追い詰める側も追い詰められる側も、狡猾さより慈愛をまとっている。それが何やら不思議であって、新鮮に感じられる倒叙ミステリー。花房京子さん(この作品の登場人物たちは敬称を略すのに抵抗あり)はもちろん、彼女と共に捜査にあたる刑事さんたちは、それぞれに思うことがあろうとも所轄や職務職階をこえ、相手への敬意を忘れない。被疑者に対してさえも思いやりを失わないし。もちろん犯罪を企てた者たちは利己的に違いないものの、いわゆるクズどもじゃあない。謎解きのインパクトが強烈とは言えないながら、いい人たちで貫く展開に感心した。

  • 普通の倒叙式のミステリーになっているところが、香納さんらしくなくて笑う。
     これは、そういう注文があったのだろうか。

  •  『刑事コロンボ』ファン必読の花房京子シリーズ、2018年6月以来の第二作が登場。倒叙ミステリーの代表とも言われるコロンボですが、これを日本に置き換えての作風で綴るのが、まさかの香納諒一とは驚くけれど、かといってハードボイルドや警察小説の名手が、突然本格に目覚めたということでもなく、コロンボの風味にチャレンジしながらも、香納諒一のオリジナル作風はきちんと残されていて香納ファンをやっぱり裏切らないのが素敵だ。

     この作者は若手の頃から地理をよく調べて書く作家だと思っていた。小説の舞台となる土地について、現代の都会であれローカルな田舎街であれ、しっかりその土地の陽と陰、風の匂いなどが感じられてとても好感を懐いた記憶がある。マーローやハメットなどハードボイルド作家が大切にきた街の描写がしっかり継承されているように思うのだ。この日本に。

     本作では田園調布界隈と三浦半島の二か所が事件の舞台なので、ぼくとしてはさほど詳しくない場所なのだが、他の作品でぼくの心当たりの土地を舞台にしているときはかなりリアルな描写をされていて感心したものだ。本作でも生き物のように、あるいは凶器や仕掛けのように土地の具体的な高低、建物周辺の道路までが材料として使われる。

     無論倒叙型ミステリーなので、コロンボのTVシリーズと同じく完全犯罪を目指す容疑者側と、あらゆる現場・人間行動の矛盾に鼻の利く特殊な刑事との対決構図は楽しい。しかし、そこに物欲と情欲、人生とそれを取り巻く経済環境、生活環境などの条件が重なって、時間的リアリティと空間的奥行きを幾重にも備えた犯罪トリックとそれを暴く名探偵=花房京子の駆け引きが息を抜く間もなく連ねられる。

     ぼくが思うにコロンボ以上と思える犯罪の意外な罠を、本作ではタイトル通りアリバイというところに持って行くクロージングがまた味わい深く、そこに本格推理ミステリーの面白さというだけではなく、人間の愚かさや葛藤を練り込んで描く辺りが、やはりトリックよりも人間重視で貫いてきた香納諒一という人ならではのビターテイストが利いている辺りが、実に憎い。

     TVのコロンボよりも一層大人の、そして身近な日本の土地に材を取った本作の魅力と、巻置く能わずの面白さを是非とも味わって頂きたい。

  • 刑事・花房京子シリーズ第2弾。宝石商の妻と夫が完全犯罪を目論むイタリア人の殺害。夫の目的はそのアリバイを逆手に取り妻を殺害すること。田園調布と三浦半島で起きた二つの事件。香子の丁寧な捜査が徐々に夫を追い詰めていく。面白かった。

  • 108前作より切れ味が鈍った感がある。最初に動機も手順も明かした上で権力に立ち向かうという構図は無理が多い。しかも善人やしね。次があるならもっと主人公の良い点を活かして欲しいなあ。

  • 人物のキャラクターが
    イマイチでした。

  • 宝石商の壬生真理子が夫と画策した殺人計画が今宵遂行される。ターゲットは自分たちに偽造ダイヤを売りつけたイタリア人。アリバイ工作も整い、完全犯罪成立寸前と思われた矢先、予想外の人物が凶弾に倒れる。予断を持って捜査を進める集団の中で、ただひとり花房は違った。

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著者プロフィール

1963年、横浜市出身。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。91年「ハミングで二番まで」で第13回小説推理新人賞を受賞。翌年『時よ夜の海に瞑れ』(祥伝社)で長篇デビュー。99年『幻の女』(角川書店)で第52回日本推理作家協会賞を受賞。主にハードボイルド、ミステリー、警察小説のジャンルで旺盛な執筆活動をおこない、その実力を高く評価される。

「2023年 『孤独なき地 K・S・P 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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