- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334927028
作品紹介・あらすじ
童話「シンデレラ」について調べていたライターが紹介された女性、倉島泉。長野県諏訪温泉郷の小さな旅館の子として生まれた彼女は、母親に冷遇され、妹の陰で育ったが、町には信州屈指の名家、片桐様の別荘があり、ふとした縁で、松本城下の本宅に下宿することになる。そこで当主の一人息子との縁談がもちあがり…。多くの証言から浮かび上がってきた彼女の人生とは?不況日本に暮らす現代人にこそ知ってほしい、新たなるドキュメント・フィクション。
感想・レビュー・書評
-
泉という女性について取材し一冊の本にまとめたという形になっている小説。話の結末がどこに向かうのか全く想像もつかないまま読み進めました。かわいそうな泉の最後を知りたくてそれはもう夢中で。そして悲しい結末。自分の気持ちを押し込めて人のために尽くし続けるひと。人によってはその姿は美しく見えなかったけれど人の本質を見る力のある人にはとても美しく見える。子供の頃にたぶん自分で決めたであろう、というかそう生きることしか選択肢がなかった泉を思うと涙がでます。
他人のために自分のちからを惜しまず使う人を誰かの小説で読んだな・・・・。と、三浦綾子さんを思い出しました。姫野さんもどうやらクリスチャンのようですので納得です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
倉島泉という聖人ような人物(架空)を取材した体で構成した物語。
泉の生き方にはとても共感できる。
むしろ泉の母親も妹も元夫の再婚相手も、いるいる、こういう女を武器にするのが当たり前な女ってヤダなーと思っちゃうし、
泉には裏なんかたぶんないよ…と人の言葉は額面通りにしか受け止めない自分は思うんだけど、それは人が良すぎるか。
ラスト前、泉の小さい頃のエピソードがネタバレ的に昔語りされるが、その内容にもひっかかる。
あまり愛されなかった幼い頃の記憶を封印する的なエピソードで
泉に共感できない読者に、やっぱりね、って思ってもらうには必要なエピソードなのかな。
でも、泉の生き方、かっこいいよーって思う私には結局否定されちゃうの?というちょっぴり残念なエピソードな感じがした。もっとも、泉を全肯定しちゃうと、全然本当の幸せって?シンデレラって?というテーマからは外れてしまうけど。なのでラストについても、正直よくわからなかったデス。 -
心、洗われました。私も居酒屋の雰囲気になじみまくって、独り飲みしている、泉さんのようになりたいなあ…
-
初姫野です。食わず嫌いでした。ほんとうによかった。
私自身が母親なせいか、子供が苦しい思いをするのが、一番泣けますなぁ。
イタチの神様は、泉の置かれた辛すぎる現実を逃避するために、泉自身の頭で作り出しちゃったかなぁとか想像しちゃいました。ほんと泣けるわ。
私の職場での現状とかぶり(何かと軽んじられる的な)、私自身が周囲がどう思われているか、ちょっと発見できた気もするし...
まぁ、泉のように周囲の人の幸せを自分の幸せとするには及ばず、お客の方ばかり向いていたことに気づかされ...まぁそういう本ではないのでしょうが...
3つの願い事がとにかく泣けた。とにかくよかった。-
2012/09/15
-
-
一般的に不幸、かわいそうとされる人生
周囲の人はそう評価しながらどこか羨ましくて、尊くて、そんな気持ちを抱えていたんだろうなと感じた
個人的にはおじさんの洋平さんが一番好きなキャラかも
人の幸福を喜べるというのはほんとにほんとに素敵で大事なことだと思う
芯のある人になりたい -
幸せってなんだろうと考えさせられる。
御伽話のシンデレラは、憎い継母や姉に復讐ができて幸せだったのかもしれない。
大勢の価値観から外れている主人公の「泉」は他者から見ると「不気味」な存在。自分の価値観とかけ離れた人間をそのように表現する人たち。その一方で泉の美しさに気付いている人たちもいる。外見だけではない滲み出る清廉とした美しさが泉にはあったのだろう。
それは大勢が好む女性らしさとは無縁かもしれないけれど、人間の心根の美しさ。
姿が消えるというハシバミの粉を振り掛ける姿はいじらしいを通り越して切なくなる。
小口の「家族にも相性はある」って言葉はどんなに泉を楽にしただろう。3つのお願いの中の2つ目の願いは、今まで泉を不気味な存在として追っていた自分にはほっとするものだった。
「やっぱり辛かったんだ、そういう感覚はちゃんとある人間だ」と。
そう思うと泉に起きた出来事に傷ついていないはずがない。自分を犠牲にしても他者の幸せを願う。それが辛くないように3つ目のお願いをしたのだろうか。
姿を消してしまったのは小口とその妻の幸せを願うからなのかな・・・