海路 (テーマ競作小説「死様」)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927639

感想・レビュー・書評

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  • 私が70代になった時、どんなことを思うのかな。今はまだわからないことがたくさんあると思う。

  • ★3.5

    ー死様ー

    一人で過ごす寂しさを感じながらも、月島診療所という個人病院で、
    看護師として懸命に働く43歳の志木。
    月島は70過ぎの医師で、15年前に離婚し、診療所の二階で一人で暮らしている。
    ひと月程前、突然診療所を閉めると聞かされた。
    予め告げられていたの閉院の前に、突然月島先生はいなくなった。
    志木は、先生が何処に行ったか手掛かりを探し、
    沖縄の離島でやっと再会できた…。

    死様をテーマにした6人の競作の内の1つの作品。
    頁数137で文字のとっても大きな本。
    一時間…あっという間に読み終えた。
    藤岡さんの文章が心地よく大好きです。
    醸し出す雰囲気、行間の空気感大好きです。
    老医師の言葉や志木の言葉ラストのシーンがじんわり染みわたった。
    生きて行くことと死にゆく事の厳しさが胸に刺さりました。
    「大切なものが何もないまま死んでいくことが怖いんですよ」
    老医師の言葉です…しっかり生きていかなきゃって思った。
    少し私には読むのが早かったかなぁ…(*T^T)

  • 2017/9/4
    今までとは違って、薄めの本で、字も大きく?と不思議な気になってましたが、やっぱりいつもの藤岡さんでした。
    初老の医師と看護師の慎ましいやり取り
    年齢が
    30程離れているとはいえ、慕っていけば2人で暮らしていけるだろうと思われるが、男性は彼女に別の道を勧める。それも、思いやりなんだろうな
    懐の深さを感じる。

  • 老医師の晩年の人生の過ごし方

  • 静かな作品です

    「死様」という競作のテーマで書かれた作品の一つです。
    70才を過ぎた孤独な開業医とその診療所に勤務する40才を過ぎた孤独な看護師
    二人の静かなやり取りの中から、孤独、年をとるということ、死について考えさせられます

    重いテーマですが、作者はあまり深く掘り下げず、その分読み手に任されているので読みやすいです

  • 海の向こうはあの世に繋がっているんだろうか。
    もしそうなら、その波にさらわれていきたい。

  • 内容紹介
    「私」は、「月島診療所」という個人医院に看護師として勤めている。月島は、七十過ぎの医師で、十五年前に離婚して妻子は出て行き、医院の二階に一人で住んでいる。「これで終わりですか?」最後の診療が済み、月島先生が口にするいつもの言葉だが、「私」は、何年も聞いてきた言葉なのに「オワリ」という先生の声が特別な響きをともなって耳に居座る。ひと月ほど前に、診療所を閉めると聞かされた。月島先生はゆっくりと診察室を出て行く。「私」は無言で後ろ姿を見送り、先生の背中に影が張り付いていないかを確認する。長年看護師をしてきた「私」は、人の背中に「命が終わる影」を見ることがあるからだ。「私」は、二十七のときから十六年間診療所で働いている。大学病院に勤めていたのがあまりに忙しく、結婚を考え始め、夜勤がなく規則的な勤務ができる職場を求めていた。七年前まで一緒に暮らしていた男がいた。最初の一年でどうしようもない類の男であることは確信したが、その後惰性の数年間だった。月島先生は、本人に、君はジガバチのような男だと言ったことがあった。予め告げられていた閉院の前に、突然月島先生はいなくなった。「私」は先生を捜す。沖縄の離島でやっと再会できた。そこで初めて月島先生の本音を聞かされた。一人で死ぬのが怖いという。──精一杯務めた老医師、その晩年に悔いはあったのか。

  • 「死様」競作小説・海路切なくやるせなく、優しい物語。人生に於いて、これまで手に入れたもの、失ったもの、手放さないもの。そして、人生の終末へ向かうなかで、自然的に取捨選択がなされ、満ちて引く海のような、穏やかな感覚を受けました。人と人とは目には見えなくても、鎖のように確かなつながりを持つのだけど、そんな確かなものでも、ながーい時間の流れでは、風化し失われていくのでしょうね。失われたものの持っていた意味が、当人には掛替えの無い事であるのが、嬉しい。

  • 重いテーマであり、人それぞれにいつかは思うことであろう。ただ現実には、こんなことを考える余裕は無いのだろう。あのような事件があれば、どうしても日々の生活を見つめるだけで精一杯であり、その日をどう生きるか、どう食べるかである。
    なぜここまで酷評するかと言えば、設定が?だからである。
    作中のようなことが起これば、当然社会的信用は無くすし、まして余程の余裕がなければ開業なんか出来ない。余裕があれば大学病院などには勤務していない。
    もっと言えば、この件が報道された事実に鑑みると、有罪になっていれば、医師免許剥奪である。
    何か重いテーマにしては、薄い内容のような気がした。
    ただ、心情的に理解できる部分は多々ある。

著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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