一匹羊

著者 :
  • 光文社
3.33
  • (10)
  • (39)
  • (66)
  • (12)
  • (2)
本棚登録 : 268
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927820

作品紹介・あらすじ

縫製工場に勤める大神は、若いころと違って事なかれ主義で働いていた。そこに、職場体験に中学生がやって来る。年下の同僚とともに、中学生の面倒を見るはめになった大神。そこで、ある問題が生じて-(「一匹羊」)。OL、女子高生、フリーター、元野球選手、主婦…相手にされなくても。変人に思われても。一歩踏み出すと、素敵な自分が見つかるかもしれない、それぞれの「明日が少し元気になれる」物語。表題作ほか、7編を収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 明日が少し元気になれる短編集。
    先日、「ある日、アヒルバス」を読んで山本さんの本をもっと読んでみたいと思い、図書館で借りてきた。テーマ通り、元気を貰える内容だった。ありがちな日常の一コマで、各話読み終わった後少しずつ元気を貰える。明日も頑張ろうと思える。それが押し付けがましく書かれていないのがいい。一話目の書き下ろしから気に入って、どの話も「いい話だな~好きだな~」と思えた。
    山本さんの文章は男性っぽくも女性っぽくもなく、なんとなく中性的に感じる。

  • 表紙の羊の可愛さに一目惚れした本。
    とても可愛い短編集。
    どのお話もラストで前向きな気分になれる。
    偶然の出会いやちょっとしたハプニングによって背中を押された主人公が1歩踏み出す瞬間が描かれている。

    1番好きなのは「夜中に柴葉漬」。
    才能がない、人望もない、そんな登場人物を「拒絶しない」物語。
    よくよく考えるとこの本の中に収められているお話は全て「拒絶しない」物語と言えるかもしれない。
    積極的に受け入れるわけではないけど、そこに存在することを否定しない、そんな優しいお話達。
    その中で1歩進むことによって何かが変わるのかそれとも変わらないのか、それはまた別のお話。

  • サラリと読めて面白かったが、サラリとしすぎて翌日は話の内容を忘れてしまうことがあった。

    その中で、最後の『一匹羊』が印象に残った!
    一匹狼だった昔の大神も、今は四十となり会社の意向に従わねばならず、一匹羊のようになり、会社が目印とするアドバルーンの羊に自分を重ねる。

    そのアドバルーンが空に飛んでいってしまい、必死に追いかけるシーンの後の展開がいい。キクチ君、さわやか。やはり職業人として大事なことはずれてはいけないと思った!

  • 『大地』を読んでいたんですが、図書館の返却期限がギリギリになってきたので浮気しました。

    や~前作の『パパは今日、運動会』も含めて、山本さん、良い!
    最初の方の作品も面白くて「お、良い作家さんだなぁ」って思ってたんですが、ここ数年「何、言いたいか分からない……」って感じでした。
    だけど、この2作で帰ってきましたね。おかえりなさい!

    『一匹羊』は短編集で、どの章も最後がホッコリしたり、前向きになってたり読後感がよろしいです。
    特に「どきどき団」は長い間、夫に従ってきた老いた妻の反抗って話なんですが、勇気を出して意見を言います。
    その妻が何とも可愛い!
    こういうの良いなぁって思わせてくれます。

    で、今回は山本さんが何で良いのかなぁって考えながら、読んでたんですが、この方は表現が上手いなぁと思いました。
    あと、手法としては「何でもない話に違和感のある要素を付け加える」てな感じかと。
    さっきの「どきどき団」だと、老齢夫婦の確執という平凡な要素に、何か知らないけど息子を怒らせているらしいっていう情報が加えられてたり。
    これからどうなるんだろう……って飽きさせませんね。

    何の間の書きましたが、面白かったです!

  • 書き下ろし1篇と2004年発表から順を追っての7編、計8短篇。やはり最近のものになるにつれて、段々と輪郭がはっきりする感じで良くなってる様な気がします。短編なので続きが読みたかったり、物足りなさもありますが、山本さんのは色んな人が居るけれど、最終的には人間の良い所を信じている作風が好きです。

  • あいかわらず上手いのに
    知名度がいまひとつ・・・

    ダメそうな人間が
    ふとかっこよく見える
    「夜中に柴葉漬」
    「野和田さん家のツグヲさん」

    ふとしたことで
    人生の新しい一歩を踏み出す
    「どきどき団」
    「テディベアの恩返し」
    「踊り場で踊る」
    「一匹羊」

    最後の高揚感で
    「どきどき団」がベスト

  • 遠距離恋愛中の彼氏に会いに行く女子高生・・・「狼なんてこわくない」
    バイト先の憧れの女性と、付き合いで芝居を見に行くフリーター・・・「夜中に柴葉漬」
    中学一年生に憐れまれる三十路男・・・「野和田さん家のツグヲさん」
    島のキャバクラに流れ着いた女・・・「感じてサンバ」
    口うるさい夫にあきあきして、ボランティアの世界に飛び出した妻・・・「どきどき団」
    プロ野球選手であり、かつてのクラスメートでもある男と就職支援会社勤務の男・・・「テディベアの恩返し」
    元恋人の新居の家具を選ぶことになった家具メーカー勤務の女性・・・「踊り場を踊る」
    職場体験の中学生を受け入れた縫製工場の面々・・・「一匹羊」

    一人、をテーマにした短編集、とのこと。
    山本さんらしい、人間くさいキャラクターたち。
    普段から、色んな人をよーーーく見てるのかなぁ。
    テーマは一見重たそうな感じを受けますが、中身はひとつひとつさらっと読めるお話です。
    悪く言えばちょっと軽くて後に残らないお話。
    でも読めばちょっと元気がでる・・・、かな?

  • 帯の通り「明日が少し元気になれる」かな。

  • ところどころキュンとなる話や、少しだけジンと来る話が散らばっているが、残りは少しだけ頑張ろう、という気にさせる話。

    表題作や、「どきどき団」がお勧め。

  • 「後悔の連続だ。やがていつか、満足できるときが訪れるかもしれない。だけどそれがいつなのかはわからない。こない可能性だってある。それでもやるのが仕事だ」(258ページ)

    さまざまな迷いや後悔を重ねながら、日々を生きていく人たち。
    そんな中でも、少しばかりの光と、少しばかりの温かさが訪れる短編集。

全66件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本幸久の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×