- Amazon.co.jp ・本 (803ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334927837
感想・レビュー・書評
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鏡像段階
シニフィアン/シニフィエ
装飾殺人
現象学
精神分析
母子論
オイディプスコンプレックス
アブジェクシオン(棄却)理論
ヨブ記
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『オイディプス症候群』でひさびさに復活した矢吹駆(カケル)とナディア・モガールが送る哲学ミステリー。怪異な要素を多分に帯びた連続殺人事件を現象学を駆使した「本質直観」よって解明するというスタンスは変わらないものの、『哲学者の密室』で極点に達した実存を巡る差し迫った危機感は和らいでおり、安心してページをめくることができる。題名から明らかなように、本作ではこれまで笠井潔が固執してきた観念論から距離を置き、身体論に重きを置く心理学に焦点を当てている。フロイト、ラカン、クリステヴァなどを批判的に検証することで、「神とはなにか」という命題に迫ろうとしている。そもそも現象学やそこから派生した実存主義も、コリン・ウィルソンが指摘しているように生々しい身体論に行き着くように思う。カケルの宿敵であるイリイチが『オイディプス症候群』でHIVに感染したという設定を複線として、笠井潔がどこに論点をもっていくのか。免疫疾患とは異物を「異物」と認識できない状態であり、他者性が曖昧になるという視点から、いろいろ転回できるように気がする。
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ふうっ、長かった。
因縁と宗教と精神分析。理屈っぽくて、横溝正史っぽいおどろおどろしさと、ほんの少しの胡散臭さ。 -
哲学の装飾を剥ぎ取ってもミステリとして良作であるのが作者の持ち味だったはずだが、本作はミステリの筋はやや平凡、前々作あたりからかもしれない。
そろそろ、装飾の方が自分の専門から外れてきているようなので、あまり無理をしないでミステリの本筋のほうに力を入れてはもらえまいか。6.5