ニッポンの穴紀行 近代史を彩る光と影

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334976347

作品紹介・あらすじ

トンネル、炭坑、地下世界…。北海道から沖縄まで、忘れ去られた場所をめぐる、12の旅の記録。『僕の見た「大日本帝国」』から6年、気鋭のライターが、新しい視点で「日本」を見つめなおすノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 釜石と人形峠。地震と原発にシンクロ。

  • 筆者の余計な推測や勝手な決め付けが若干うざいものの、近代史としてかなり面白く読んだ。
    北海道の山の中で、実際に電車を猛スピードで走らせて、わざと脱線させる実験をしていたとか!考えたこともなかったけど、確かに、コンピューターシミュレーションがなければやるしかないだろう・・・けど、すごいなぁ。今じゃ絶対無理だよな。。。
    タコ部屋、の本当の意味を知り、土木工事でどれだけの人が軽く死んでいったのかを知った。過酷な奴隷労働や人柱の末に実験線を作って、電車の安全を確かめる実験をしていたのだ!
    人の命が軽かった時代・・・ラディカルだけど、パワーにあふれていて、考えられないような大事業が「手作業で」行われ、日本が急速に発展した、その昔。
    企業が利益を追い求め、お金が流れなくなれば都合よくポイっとされた街。。。
    でもなにか、今はあの時代のパワー的なものは失われて、すっかり停滞している。なんだか、とっても複雑な気持ちになった。

  • 日本中の産業遺跡や軍事遺跡などの記録。
    軍艦島なんかの有名ポイントからうらびれた鉱山跡まで、いろいろ載っています。
    昔は人が住んでいたんだって思うと、ものすごく寂しい気分になります。なのにひかれてしまうのは、かつての暮らしぶりを想像するのが楽しいからかもしれません。
    だけど行ってみるのは怖いから、本を読む(笑)

  • 軍艦島にはじまりアブチラガマで終わる
    この本はいい本だ

  • ノンフィクションライター西牟田靖氏による興味深い一冊。日本各地の廃墟や歴史的遺構を中心に「穴」という空間に限定した旅の記録である。北は北海道から南は沖縄まで、12か所の「穴」は、いずれもディープさに溢れ、日本の近代史を雄弁に物語る。

    ◆本書で紹介されている12か所の「穴」
    第一章 軍艦島(長崎県) --------捨てられた集合住宅と穴
    第二章 釜石鉱山と東北砕石工場跡(岩手県) --------宮沢賢治ゆかりの穴
    第三章 新内隧道と狩勝隧道(北海道) --------開拓の苦闘が印された穴
    第四章 国立国会図書館(東京都) --------書庫になっている地下8階までの穴
    第五章 滋賀会館地下通路(滋賀県) --------文化施設がコラボする宙ぶらりんの穴
    第六章 人形峠夜次南第2号坑(岡山県) --------怪しい光を発する希望の穴
    第七章 黒部ダム(富山県) --------高熱隧道とクロヨンの穴
    第八章 日韓トンネル(佐賀県) --------全長200キロの穴
    第九章 吉見百穴と巌窟ホテル(埼玉県) --------親子3代の夢の穴
    第十章 諏訪之瀬島(鹿児島県) --------ヒッピーと巨大資本の抗争史
    第十一章 友ヶ島第3砲台跡(和歌山県) --------使われなかった要塞の穴
    第十二章 糸数壕と山城本部壕(沖縄県) --------沖縄戦の傷痕が残る穴

    いずれの「穴」も人工的に作られたものであり、そこに関わってきた大勢の人々がいる。著者は、その人々の気持ちにもしっかりと寄り添い、何らかの理由で光の当たっていない部分にも、クッキリと光を照らしてくれている。そこに見えるのは、無念さ、古い価値観、虚栄心など思わず目の逸らしたくなるものから、活気、エネルギーへの希求など、実にさまざまである。「穴」の話を読むにつれて見えてくるのは、自分の無知さと、その「穴」に関わった人々の”心の穴”の中である。

    多くの「穴」に共通しているのが、人権などという意識が薄かった時代に、多くの人命の犠牲と引き換えに作られたものであるということだ。その当時、”個”は弱いものであったかもしれない。しかし、社会には未来への大きな希望があった。そして、我々は今、その未来の真っ只中にいる。”個”の時代などと言われてはいるが、今の我々の社会は、当時の人たちに胸を張れるようなものなのだろうか。

  • 震災前の本。今訪れたらどうなっているか?

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著者プロフィール

フリーライター。1970年(昭和45年)大阪生まれ。旅・現場・実感にこだわった作品を発表し続けてきた。近年取り組んでいるテーマは、日本が抱える国境離島の問題と防衛のあり方、さまざまな親子のかたちと共同親権、入管法改正案や移民の是非など。こうした賛否の分かれる国内の政治的な課題について、イデオロギーに追随しない、まっすぐで公平な取材・執筆にこだわっている。旧日本領のその後を訪ね歩いたルポ『僕の見た「大日本帝国」』(2005年、情報センター出版局)、書斎の床が本で埋まった体験を出発点に本と人の共存を考えた『本で床は抜けるのか』(2015年、本の雑誌社)、爆発的な経済成長を遂げた中国を四半世紀ぶりに回った『中国の「爆速」成長を歩く』(2020年、イースト・プレス)など話題作多数。

「2023年 『誰も国境を知らない 令和版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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