ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12)

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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336025678

感想・レビュー・書評

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  • ボルヘス監修「バベルの図書館」シリーズ。青く縦長の装丁が美術的です。

    今回はドイツ人幻想作家グスタフ・マイリンク。
    ユダヤ人女優と、ドイツ人大臣との私生児だったらしい。
    神秘主義に興味を持ち秘密結社とも関わったが、オカルト詐欺を暴いたりもしたらしいので、ただ盲目的に信じたわけではなく、それらの論理を考えるのが楽しかったのか。


    祖父の墓石に刻まれた言葉「VIVO―余ハ生キテイル」。探るうちに出逢った一人の男。彼は人から希望や期待を蛭のように食い尽くす時間蛭の存在を説く。
     / J・H・オーベライト、時間-蛭を訪ねる

    育て主の血を栄養に成長するアオトリカブト、アコミトゥム・ナペルスを巡る宗教結社員の語り
     / ナペルス枢機卿

    ”この男は死体のようなもので、自分のたましいを手に
    持って、それを燃えくすぶるランプだと思い込んでいるのです”
    月を故郷とし、死の輝きと無機質な機械の主人とする男たちが行った月夜の儀式。
     / 月の四兄弟



    「月の四兄弟」に「お前の生涯にかつて女性がある役割を演じたことがあるかね?」という言葉があるのですが、そういえばこの3作品には決定的に女性の存在がないことに気が付いた。
    作者自身の結婚生活はあまりうまくいかなかったようだし、生身の人間より精神や理論に興味があったのだろうか。

  • 『私たちには、魔術的でないことは、何ひとつできない』。青い花と球体の映像が印象に残る『ナペルス枢機卿』をはじめ、三つの短編を収録。

  • マイリンクの初期の3つの短篇を収録。いずれも奇妙な読後感を残す物語だ。まず、普通の意味でいうプロットがほとんどない。また、登場するのはいずれも数人の男たちだけであり、しかもそのことごとくは老人、もしくは老人的な人物だ。したがって、物語には情熱や愛が描かれることは絶えてない。そこにあるのは、月であり金属的な光であり死の影である。マイリンクが社会的な関心を持っていたとは思われないが、「月の四兄弟」には彼の死後にやってくる壊滅的な世界大戦が予兆されていたことには驚かされる。きわめて直感的な作家だったのだろう。

  • 第12冊/全30冊

  • 『J・H・オーベライト 時間-蛭を訪ねる』『ナペルス枢機卿』『月の四兄弟』の三篇を収録した短編集。太陽の憎悪と月への憧憬、廃墟、等々、私のようなデカダン萌えの人々向けの単語が大量に。逆にその手のものが苦手な人はそれだけで倦厭してしまうかも知れないけれど、マイリンクはなかなか深いものを書く人だと感じるので、特に幻想文学好きという訳ではない人にもお勧めな短編。読めば読むほど味が出る作品だと思う。私はまだ三度目だけど。
    特に表題作の『ナペルス枢機卿』がお気に入り。青トリカブトで埋め尽くされた墓、なんて物凄く綺麗な情景。もちろん青トリカブトが毒花であるところが最大のポイントであることは言うまでもない。

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著者プロフィール

1868-1932。オーストリアの作家。神秘小説「ゴーレム」で名高い。

「2017年 『ワルプルギスの夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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