- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336040022
感想・レビュー・書評
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これは夢の話です。未来へ希望に燃えた夢の話ではありません。眠っているときにみる夢の話です。
面白い夢を見たとします。夢を見ているときはとても面白いのに、朝目覚めて他人に話してみると、なぜかそれは面白くなくなっています。何がそんなに可笑しかったのかちっとも訳が分かりません。そんなことはないでしょうか。わたしは度々そんな気まずい雰囲気に陥ってしまいます。話してる方がそうなのだから、他人の夢の話を聞いている方はもっとつまらないでしょう。まして目覚めときに覚えている夢はほんの稀で、夢は夢の世界に置き去りになっています。
それでも、悪夢は別物です。悪夢は時として目覚めたあとにも追いかけてきます。そして、繰り返し見ることもあります。わたしは幼い頃に見た悪夢を大人になった今もしっかりと覚えています。悪夢はひっそりと現実世界に種を蒔いているようです。ふとした綻びから芽を出し、思わぬ時に人を恐怖に陥れます。悪夢はなかなか忘れることが出来ません。昼間忙しくしていても、ふとした瞬間思い出してはどきっとしてしまいます。
そんな悪夢は他人が聞いても恐ろしいものです。聞けば他人の悪夢が今夜自分の夢に浸食してくるようで耳を塞ぎたくなります。それでも幼い頃にゾクゾクしながら聞いた怪談話のように、聞きたくないのに聞きたいような、そんな気持ちにさせてしまいます。
ここには、他人の悪夢があちこちに散らばっています。悪夢が活字になると訳の分からない不穏な文章になって益々幻想的な不気味さを醸し出します。こんな話ばかり読んでいては白昼夢に脅かされるのは時間の問題です。もちろん、悪夢の話ばかりが収録されているわけではないのですが、印象に残ったのはやっぱり・・・悪夢の話でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本作も随所に編者の妙を感じる…。
佐川ちかの「童話風な」で、読者は”現実と夢の境目を見失う。
幻惑と脅威の夢を渡り歩く中、多田智満子の「初夢」にかすかに穏やかなまどろみを覚えて小休止。金色のみかんの中に入ったことが、きっと誰しもあるはず。
須永朝彦訳の『摂津国風土記』より「夢野」は、妾の女鹿を慕い海を渡る牡鹿による町名の由来話。こういう逸文が読めるのが、アンソロジーの面白い部分だな…と実感。
同じく須永氏訳の『兎園小説』より「夢の朝顔」もとても好きな雰囲気だった…。夭折の娘と朝顔…おかかさま、花が咲きました…。
『捜神記』より「蟻の穴の夢」も、短文ながら非常に幻想的でとても好みだった…やっぱり中国文学はいいね…。”審雨堂”という語の美しさよ…。
人の見る夢を通り過ぎ、辿りついたのは半神半人の王の見る夢であった。まさかギルガメシュ叙事詩まで収録してくるとは…東雅夫氏の他分野に及ぶ本棚の広さよ…。
『ギルガメシュ叙事詩』より「ギルガメシュとエンキドゥの夢」しかもこの部分を収録するとは…。これがかの有名な…フンババ退治にイシュタルの求婚…不老不死を求める旅…。あまりにも長く短い夢のような、唯一の友と過ごした王の時間。幸せな思い出が悲劇であるほどに、夢は醒めないのだ。
澁澤龍彦「夢ちがえ」、最近めっちゃ澁澤龍彦よみたかったから嬉しかった…。めっちゃ好みだった…。耳しいた姫が恋焦がれた若武者…恋敵を討とうと暗躍する女と、その女を寵愛する姫の異母弟…。もうこれだけでたまらない…。黒いおとぎ話…呪術…舞踊…天狗…生首…ドラコニア・ロマネスク…最高だ…。 -
夢に関するさまざまな話が集められているが既読の話が多かった。印象に残ったのはサヴィニオ「人生という名の家」。
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宮部みゆき「たった一人」、筒井康隆「夢の検閲官」、ボルヘス「円環の廃墟」、カフカ「夢」など、夢の文学に照準を絞り、古今東西より拾い集めた30篇を収録
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第2巻 全20巻
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宮部みゆき「たった一人」が素晴らしかった。他に澁澤龍彦、筒井康隆、ダンセイニなど秀逸。やはりこのシリーズは面白い。
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書物の王国シリーズの第2巻 (全20巻)