透明な対象

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336040299

作品紹介・あらすじ

「これが彼にとって4度目のスイス旅行であった。最初の旅行は18年前で、そのときは父と一緒に数日間トルーに滞在したのだった。10年後、32歳になって、ふたたびその古い湖岸の町を訪れたときには、2人で泊まったホテルを見に行くことで半ば驚きと半ば悔いの入り混じった感傷的なスリルを味わうことに成功した…。」さえない文芸編集者ヒュー・パーソンは、スイスに住む大作家Rのもとを訪れるため列車に乗り込んだ。車内で同席した若く美しい女性アルマンドに心惹かれた彼は、やがて奇妙な恋路へと足を踏み入れていく。ナボコフ一流の仕掛けが二重三重に張り巡らされ、読者を迷宮へと誘い込む最後の未邦訳作品、待望の刊行。

感想・レビュー・書評

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  • さまざまな死に満ちているのに、肩の力の抜けた語り手(たち)のツッコミがおかしいこなれた中編。「透明」の設定がよく効いている。

    一回読み終わった時点での感想は「何これ(笑)」。しかし五冊目ということでそろそろナボコフ慣れしてきているので、そのまま二周目に入り、パースンの予兆に満ちた、透明な螺旋型の生を楽しむことができた。ストーリーを追うというよりパズルのピースを嵌めていく面白さ。実人生があんなふうに照応に満ちていたらたまらないけれど。

    校正のエピソードから透けてくるナボコフの「読み」に対する考え方も興味深い。ナボコフの小説はナボコフ式に読むともっと楽しめそうだから、「文学講義」シリーズが読みたくなった。

    横道にそれた感想メモ。「置いていかれる主人公」「つかまえられない女」「異界からの声」から村上春樹の初期作品を思い出した。スキーリゾートのホテルが舞台で貧乏臭くなくて。

  • ナボコフは常に人生とは取るに足らないものだと言ってるような気がするとここでも韻を踏んでみるし。

  • 非常に難解だった。
    でも不思議なことに、話を追っていくだけでもとても楽しめる。

    言葉でしかできない表現で埋め尽くされているのだろうけど、主人公の人生を俯瞰する謎の語り手の手引きや、不意に挿入される過去の映像、切り替わるシーンなど、とても映画的でもある。

    透明な対象へと移っていくプロセスを鉛筆で例えるところなど、解ったような気にさせられるけどやはりよく解らない。
    乾いた印象だけど、どこかおちゃめでユニーク。

  • 理解できなかったものに感想を書くのは良くないのかもしれない。解ってはいるが……。ロシア語の講義を受けながら読み解きたい一冊である。

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著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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