- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336047366
作品紹介・あらすじ
「だけど、また本を最初から読みはじめれば、みんな帰ってくるんだよ…きみだってそうなんだ」孤独な少年の元に物語の登場人物が訪れる-ウルフの代表作にして不朽の名作「デス博士の島その他の物語」、治療を目的とした島における少年たちの非情な運命を詩情豊かに描き出すネビュラ賞・ローカス賞受賞作「アイランド博士の死」、冷凍睡眠から目覚めた男を待ち受けていたものは…「不死」のテーマをサスペンスフルに展開する「死の島の博士」、文明崩壊後のアメリカでの謎と幻惑に満ちた彷徨を流麗な筆致で綴る「アメリカの七夜」、目の見えない少年が繰り広げる夢と奇蹟と冒険の物語「眼閃の奇蹟」、そして限定本に付された著者による「まえがき」を特別収録。「もっとも重要なSF作家」ウルフの傑作中短篇を集成。
感想・レビュー・書評
-
再読。
「アイランド博士の死」
ある島で、物事の理解に問題を抱えた少年が次第に世界を発見していく。これまでかなりの部分を理解できていなかったな。これまた大傑作。世界の認識が転換するというようなモチーフが作品全体に散りばめられている。残酷でありながら優しく美しいウルフワールド。
「死の島の博士」
自ら語る本を開発をした発明家が罪を犯し、新しい技術である冷凍睡眠の実験台で四十年後に送られる。ディケンズ作品のオマージュがふんだんに取り込まれているなど、なかなか謎が多い作品。ただオーディオブックや電子書籍が当たり前になるはるか前(朗読テープなどはあったと思われるが)にテーマにしているのが興味深く、『書架の探偵』につながるのは明らかでありこれまた読みどころの多い作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
デス博士の島その他の物語 (未来の文学)。ジーン ウルフ先生の著書。私はSF小説が好きで今までたくさんのSF小説を読んできたけれど、こんなに難しくて考えさせられたのは初めて。単純なSF小説ではなくて、奥が深いSF小説を読みたい人には自信を持っておすすめできる一冊です。
-
母と二人暮らしの少年がドラッグストアで買ってもらった小説を読み始めると、物語の登場人物が目の前に現れて…。
子供のころの純粋な読書の高揚感を思い出させてくれるジーン・ウルフの代表的短篇。 -
収録されている中で「アイランド博士の死」と「アメリカの七夜」が比較的分かりやすくて面白かった。信頼できない語り手を利用した読書の面白さを生み出していると思う。再読してみると発見が多そう。
「眼閃の奇蹟」はオズの魔法使に、「デス博士の島」は絵本に救いを求めて現実とフィクションが溶け合っていくのだが、その感覚が読んでいて心地良い。これは物語や空想に現実の辛さを救われたことがあるのなら多分わかると思う。
本全体を通して色んな楽しみ方ができた。きちんと理解はできなかったが……(難解だった)。ディケンズの引用にもオズの魔法使のキリスト教的価値観にもピンと来ないので……。 -
文章はわりと平易なのに描かれる世界は難解で、淡々と物語が進むわりに次の1行が予想できない感じが面白かった。暗黒版オズの魔法使いみたいな『眼閃の奇跡』が1番好き。
-
2/16 読了。
美しいが奔放な母親と利害が絡んだ大人たちに囲まれて暮らす孤独な少年のもとに、冒険小説の登場人物たちがおとずれる「デス博士その他の物語」。問題を起こした子どもたちを再教育するために作られた人工島と、そこに送られてきた少年少女たちの物語「アイランド博士の死」。服役とともに冷凍保存されて40年眠っていた男が、かつて自ら開発した本の読み上げシステムに介入してディケンズのキャラクターを氾濫させる「死の島の博士」。以上のdeath/doctor/island並び替え三部作に加え、文明が衰退し、かつての中東やエジプトのようなエキゾティシズムの対象となった亡国アメリカをおとずれたイランの御曹司が記した、デカダンス幻想旅行譚「アメリカの七夜」と、遺伝子操作によって超能力を手にしたが、網膜を焼かれて盲目になった少年の逃避行「眼閃の奇跡」の二編を収録。
想像の世界と現実の世界の、はざまに生きることを描いた作品群。「デス博士」の主人公は現実を拒絶して小説の世界が消えていくのを悲しみ、「アイランド博士」の主人公は考えたことがそのまま"島"という現実に反映される世界に住んでいる。「死の島」の主人公は40年を隔てた世界を現実として受け入れることができない。
このテーマを端的に表しているのは「眼閃の奇跡」のラスト。盲目の超能力少年はオズの魔法使いの登場人物たちに導かれてさまざまな奇跡を起こすのだが、最後の導き手として主人公のメアリーが登場し、少年はニッティと再会することができる。少年はニッティにメアリーを紹介するが、ニッティは「メアリーなんて僕には見えないよ」と困惑する。そこで盲目の少年はこう返す、「だけど、僕にはニッティが見えないよ」。ここでは現実と空想の可換関係が示唆されている。
ジーン・ウルフははじめて読んだけれども、ハイコンテクストな文章で頭をフル回転させてくれるファンタジーの書き手で面白い。「アメリカの七夜」はいろんな仕掛けがあるらしく、まだまだ読み込みが足りないけど、サラ〜ッと読むだけでもフローベールのエジプト旅行記などの立場を反転させたパロディのようでお洒落。 -
満足感はある。でも、1回で理解しきるのは無理…。また読みなおそ。
-
設定は未来、カテゴリーはSFなんだろうけどノスタルジックで幻想的な美しい物語たち。現実と虚構が交錯しその狭間に“何か”が隠されているのでは?とイマジネーションを刺激する。まだまだこの本の真髄は理解できていない。でもあせることない。何度も読み返していこう。その度にきっと“その他の物語”が発見できるに違いない。