ショーペンハウアーとともに

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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336063557

作品紹介・あらすじ

《世界が変わる哲学》がここにある!

現代フランスを代表する作家ウエルベックが、19世紀ドイツを代表する哲学者ショーペンハウアーの「元気が出る悲観主義」の精髄をみずから詳解。その思想の最奥に迫る! 

***

本書『ショーペンハウアーとともに』は単なる注釈書ではない。一つの出会いの物語でもある。二十五から二十七歳のころ――つまり、一九八〇年代半ば――ミシェル・ウエルベックは、パリの市立図書館でほとんど偶然に『幸福について』を借りた。「当時、私はすでにボードレール、ドストエフスキー、ロートレアモン、ヴェルレーヌ、ほとんどすべてのロマン主義作家を読み終わっていたし、多くのSFも知っていた。聖書、パスカルの『パンセ』、クリフォード・D・シマックの『都市』、トーマス・マンの『魔の山』などは、もっと前に読んでいた。私は詩作に励んでもいた。すでに一度目の読書ではなく、再読の時期にいる気がしていた。少なくとも、文学発見の第一サイクルは終えたつもりでいたのだ。ところが、一瞬にしてすべてが崩れ去った」。衝撃は決定的だった。若者は、熱に浮かされたようにパリ中を駆け巡り、『意志と表象としての世界』を見つけ出す。それは、彼にとって「世界で最も重要な書物」となった。そして、この新たな読書はさらにすべてを「変えた」。

私の知る限りでは、いかなる哲学者もアルトゥール・ショーペンハウアーほどすぐさま心地よく元気づけてくれる読書を提供してくれる者はいない。「書く技術」の問題ではないし、この手のジャンルに見られる饒舌でもない。それは公衆に向って発言しようというほどの勇気をもつ者ならばあらかじめ同意書にサインすべき前提条件のようなものだ。『反時代的考察』第三篇は、ショーペンハウアーを否定する少し前に書かれたものだが、そこでニーチェは、この哲学者の深い誠実さ、廉直さ、正直さを賞賛している。ショーペンハウアーの声の調子、その一種の粗野な善良さについて名調子で語り、それを読めば読者は名文家や文体に凝る連中に対して嫌悪感を覚えるだろうと述べる。これこそ、広い意味での本書の目的である。
(本文より)

***

Arthur Schopenhauer
アルトゥール・ショーペンハウアー
(1788-1860)
19世紀を代表するドイツの哲学者。
ドイツ観念論に東洋哲学を取り入れ、実存主義・ニヒリズムの先駆者としても知られる。
主著は『意志と表象としての世界』(1819年)。彼の唯一で独自な思想は、若き日のニーチェを熱狂させたほか、ヴィトゲンシュタイン、フロイト、アインシュタイン、トルストイ、プルースト、ボルヘス、ワーグナーなど、後世の哲学者・作家・芸術家などに多大なる影響を与えた。
今日においては『余録と補遺』(1851年)からの抜粋である『幸福について』『読書について』などのエッセイが広く一般に親しまれている。

感想・レビュー・書評

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  • 豪華な新書サイズで値段もそれなり。マニア向けではあるものの、知的好奇心を刺激される。

  • ウェルベックによるショーペンハウアー解説本
    解説、というより礼賛に近い

    私の好きな小説家や芸術家は元を辿ればショーペンハウアー(部分的にはカント)に行き着く事が多い
    本書も例外でなく、ウェルベックの観点からショーペンハウアーを解釈するのは楽しかった。

    途中でプツリと終わってしまうが、想像の余地を残しているようにも感じられる

  • 立派な装丁の割には、きわめて短い本である。
    筆者が気に入ったショーペンハウアーの一節を引用し、それについて、小説家としてはあまりにも素直な注釈が加えられる。それだけショーペンハウアーに対する愛着が強いのだろう。

    私が気になったのは序文(作者ではなく、アガト・ノヴァック=ルシュヴァリエという批評家が書いている)に書かれていることだ。

    ①著者のウエルベックはオーギュスト・コントとの出会いから(消極的に)実証主義者になり、ショーペンハウアーから離れている。

    ②「世界が、意志として、欲望として、生の躍動として実在し、他方で表象として、知覚される」という論旨が、現在の自由主義における「スーパーマーケットの論理」によって打ち負かされている。

    以上のことを、ウエルベック当人による筆で詳しく語って欲しかったというところがある。私はショーペンハウアーの著書の敷衍より、むしろ一個人が如何にショーペンハウアーという道を歩いたかということに、より興味があった。そういう意味では、少し残念でもある。

    残念といえばひとつ、この本は分量のわりに高すぎる。
    しかし装丁は美しく、私は久しぶりに帯を捨てない本に出会った。しかし肌触りに関しては注意が必要なところで、たとえば紙の端で表紙を擦ったりすると、悪魔のようなおぞましい感触と音とを体験することになる。これはどうでも良いことか。

  • ミシェル・ウエルベックの最新刊は哲学者・ショーペンハウアーについてのエッセイ。
    唐突に始まり、唐突に終わるという構成が妙にウエルベックらしくて面白い。巻末の訳者あとがきにもあるように、もう少し読んでみたい気分だが、やや物足りないぐらいが丁度良いのだろうか。
    ちょっと変わった判型や、黒と黄色のスタイリッシュな装丁も気に入っている。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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