「探偵小説」の考古学: セレンディップの三人の王子たちからシャーロック・ホームズまで

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  • Amazon.co.jp ・本 (804ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336070906

作品紹介・あらすじ

近代性そのものとも言うべき「探偵小説」は、どこに起源を持ち、どのような紆余曲折を経て、ジャンルとしての結晶を見るに至ったのか? 古代に始まる膨大な文献を博捜し、通常の推理小説論では見られないような人名をも援用しつつ描かれる、その成り立ちの歴史。江戸川乱歩が熱いまなざしをそそぎ、ヴァルター・ベンヤミンが激しい関心を向けその『パサージュ論』で引用を繰り返した伝説的大著。

■江戸川乱歩
この最後のもの〔フォスカ著『探偵小説の歴史と技巧』〕は訳書のゲラ刷りを一読して序文を書いた関係から、私はそこに屢々引用されている同じフランスのレジ・メサックの大著「科学思想の影響と探偵小説」に興味を感じ、フランス語が読めもしないのに、当時もう戦争のために輸入がむずかしくなっていたのを、アテネ・フランセを通じてやっと同書を取寄せて貰ったことを思出す。この本は大判七百頁余の大冊で探偵文学の歴史をギリシア、ローマの昔より説き起して最近の諸傾向に及び、博引旁証、その視野の広さ、その態度の学究的真摯、その量の厖大遙かに類書を抜くものであった。

[目次より]
第一部 フィラーサの秘法
  第一章 セレンディップの王子たちの旅と冒険
  第二章 アテナイへの道の途中
  第三章 アルキメデスの冠
  第四章 奇跡と現実
  第五章 奇跡と文学
  第六章 明敏な王子たちの帰還
第二部 幽霊と盗賊
  第一章 密偵たちの章
  第二章 ボーマルシェの陽気な話
  第三章 見霊者
  第四章 ユードルフォの謎
  第五章 ケイレブ・ウィリアムズ
  第六章 ヴィーラントから『ウィーランド』へ
第三部 観相学的な旅
  第一章 照応
  第二章 開拓者たち
  第三章 暗黒事件
  第四章 徒刑場のフィガロ
  第五章 ヴィドックとヴォートラン
第四部 モルグ街の謎
  第一章 ブラックウッド誌風の作品の書き方
  第二章 ケイレブ・ウィリアムズの遺産
  第三章 自然魔術
  第四章 デュパンからカンパネッラまで
第五部 現代の千夜一夜物語
  第一章 次号に続く
  第二章 悪の道の辿りつく先
  第三章 パリのモヒカン族
  第四章 ヴォートランの継承者たち
  第五章 ロカンボールの武勇
  第六章 ルコック氏
第六部 シャーロック・ホームズとニック・カーター
  第一章 「ニューゲート・ノヴェル」
  第二章 ニック・カーターの(幾度もの)死
  第三章 シャーロック・ホームズの演繹
  第四章 ロカンボール最後の変身

感想・レビュー・書評

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  • この本は二段組700頁の本なので読むにはなかなか骨が折れるとは思いますが探偵小説の歴史、定式を知るにはオススメの文献です。探偵小説の古典的教養を得るのに大いに役立つこと間違いなしです。 映像学科 4年

  • 1929年にフランスで博士論文として書かれた探偵小説論。
    「探偵小説」というと、ポーに始まり…みたいな話かと思いきや、そんなレベルの話ではなく、「探偵小説」が成立する以前に遡り、古代ギリシャ文学(オディプス王とか)や千夜一夜物語、中世の文学を経て、18世紀・19世紀の文学へと脈々と受け継がれてきた謎と論理、恐怖にロマン、冒険、悪漢小説に刑事小説…といった数々の物語が科学的思考と相俟って、ポーにより「探偵小説」として成立し、シャーロック・ホームズが誕生するに至っ――という過程を解き明かしていく長大な論文でした。
    今回、タイトルが「考古学」となってるんですが、元の論文のタイトル『「探偵小説」および科学思考の影響』の方が、本文の内容は言い表せているような気がします。(本のタイトルとしてはキャッチーじゃないのでこうなったんでしょうが)
    筆者の個人的感想(主張)を声高に織り交ぜながらの文章で、力作でついていくのがやっとでした。(これを翻訳された方々、ホント凄い労力だったと思います)
    ガボリオやコリンズ、デュマぐらいまでは出てくるのもまぁ分かるんですが、ボードレールやバルザック、ゲーテまで入ってくるともはや探偵小説史というより、文学史で、そこらへん既読の人じゃないとこりゃあ内容についていくのも大変だぁって濃度で凄かったです…。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1378902

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著者プロフィール

1893年、フランスに生まれる。1914年、第一次世界大戦に従軍、頭部に重傷を負う。1922年、高等教育教授資格(アグレガシオン)を取得、アイルランド、カナダの大学で教鞭を執る。1929年帰国、『「探偵小説」および科学的思考の影響』で博士号を取得するも、フランス国内の大学ではポストを得られなかった。モンペリエ、次いでクータンスの高校にてラテン語とフランス語を教える傍ら、自伝小説、SF小説、新聞小説、政治パンフレット、評論、書評等々、多分野にわたって旺盛に執筆。著作の大半が生前には未発表ないし未刊行で、刊行作品もほとんど注目されなかった。第二次世界大戦でフランスがドイツに占領されると、レジスタンス運動に参加。1943年、ゲシュタポに検挙され、「夜と霧」囚人としてドイツに移送される。複数の強制収容所を経たのち、1945年1月、消息を絶つ。戦後、『半球の弔旗』をはじめとするSF作品が再刊ないし初刊行され、このジャンルの先駆者の一人として再評価されたものの、依然として「知る人ぞ知る」存在であり続けている。

「2021年 『「探偵小説」の考古学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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