インヴィンシブル (スタニスワフ・レム・コレクション)

  • 国書刊行会
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336071347

作品紹介・あらすじ

《レギスⅢへの着陸完了。サブ=デルタ92型砂漠惑星。われわれは第二手順に則ってエヴァナ大陸の赤道地帯へ上陸する》この通信から40時間後、まったく意味をなさない奇妙な音声を伝えてきたのを最後に消息を絶ったコンドル号を捜索するため、二等巡洋艦インヴィンシブル号は琴座の惑星レギスⅢに降り立った。そこは見わたす限りの広大な大地に生命の気配のない、赤茶けた灰色の空間であった。やがて、偵察のために投入された撮影衛星が人工的な構造物をとらえ、探索隊が写真が示す地点へと向かう。たどり着いたのは、奇怪な形状を有し廃墟と化した《都市》であった。《都市》の内部へと足を踏み入れ、調査を進める探索隊であったが、そこにコンドル号発見の知らせがもたらされる。急ぎ現地に向かった一行が目にしたのは、あたり一面に物と人骨が散乱し、砂漠にめり込んでそそり立つ、変わりはてたコンドル号の姿であった。謎に満ちたこの惑星でいったい何が起こったのか⁉――『エデン』『ソラリス』からつらなるファースト・コンタクト三部作の傑作のポーランド語原典からの新訳。

【目 次】
黒い雨
廃墟の谷間で
コンドル
一人目

ラウダの仮説
ロアン隊
敗北
長い夜
会話
不死身

訳者あとがき(関口時正)
解説 稼働する物語装置、星の啓示(沼野充義)
スタニスワフ・レム年譜

感想・レビュー・書評

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  • 2021年9月図書刊行会刊。砂漠の惑星の新訳版。1964年発表の話だがアイデアは古びていない。レムらしいファーストコンタクトな物語。装丁が90度回転していて、本文、横書き?と思いましたが、ドッキリデザインだったです。楽しい。

  • 三体なんかで余計な足を取られてしまって、ようやく読めた。
    今回、宇宙船の内部の様子が匂いっだったり、鋼材が冷却中に発する音や暗い食堂といった描写によって活き活きと描かれることに気づいた。また、「会話」の章での艦長とロアンの対話がすさまじい。人間やらざるを得ない状況ってあるよね。やってくれって言えないけど、やるって言ってほしい状況を見事に描いていて苦しくなる。読み返すたびに凄いと思える数少ない作家。本そのものの品質も素晴らしいです。電子版にするか迷いましたが紙版で良かった。

  • 第二期始まってたのね。ソラリスに負けず劣らず大傑作。アイデアは今も斬新。このままアニメにできる。無敵とは傲慢である。そして不死とは。

  • SF。旧題『砂漠の惑星』。
    著者お馴染みのファーストコンタクトもの。
    ホラー小説といってもいいくらいに怖かった。
    自分の想像力では思い浮かべることができないほどの、圧倒的な情景描写が魅力。
    もちろんSF的なアイディアも素晴らしい。
    著者の作品は、いつも理解が及ばないことが唯一の難点だと感じているが、充実した解説が理解の助けになってありがたい。

  • SFの巨匠スタニスワフ・レムの名作。『エデン』、『ソラリス』と並ぶ、ファーストコンタクト三部作の一角。国書刊行会"スタニスワフ・レム コレクション"より、ポーランド語原典から訳された新訳版が発売されたので、この機会に手に取ってみた。

    琴座の惑星レギスIII着陸後に消息を絶った宇宙船コンドル号を捜索するため、姉妹機であるインヴィンシブル号がレギスIIIに降り立つ。この砂漠で覆われた惑星で乗員らが目にしたのは、荒廃した"都市"の跡、そして"何か"の襲撃を受けて沈黙したコンドル号だった。コンドル号に一体何が起こったのか。この"砂漠の惑星"が抱える秘密とは――――。

    「未知の惑星で目の当たりにする、想像を超えた"進化"。」

    本作では、『ソラリス』で描かれた「宇宙生命体=意思疎通の出来ない異質な存在」というスタンスが継承されている。そこに人類が考えるような"敵意"はなく対峙すべき理由もないのに、"仇討ち"と息巻く乗員に違和感を抱く主人公の姿が、レムの宇宙生命体観をよく表しており印象的。

    「宇宙生命体=意思疎通の出来ない異質な存在」と、作品のテーマとしては『ソラリス』と同様だが、作風は「"静"の『ソラリス』、"動"の『インヴィンシブル』」といった印象。コンドル号を襲った謎に迫るスリリングな展開から、現れた"未知の存在"との壮絶な戦いと、非常に映画映えする内容となっている。(個人的には、『ソラリス』の方が好みだったが。)

    巻末には、本作への理解を深めることが出来る非常に良い解説が付いているので、本編で終わらず最後まで目を通してもらいたい。

  • SF 普段読み慣れない本で新鮮。難しかったが面白かった。

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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