星宿海への道

著者 :
  • 幻冬舎
3.30
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本棚登録 : 112
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344002814

作品紹介・あらすじ

中国南西端の地より、燃え盛る炎を胸に男は姿を消した。父の顔も知らぬ幼な子をかかえて生きる女と、兄を追う弟のたぎる想い。その愛しい生命の絆の再生を鮮烈に描く感動巨編、ここに誕生。

感想・レビュー・書評

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  • NHK BS 「伝説の地 星宿海」 黄河の源流域の湖沼郡、星宿海を辿る映像を観た。
    茫漠とした静寂、圧倒的な美しさは、孤独感と哀しみとなって迫ってきた。
    『星宿海への道』は、その星宿海に憧れた男の話だと手に取った。
    読んでいる間も、星宿海の映像を観た時の孤独感がまとわりつき、雅人の人生の孤独感と哀しみとシンクロして、不思議な読書体験だった。

  • 兄‼︎
    童話のようにでもリアルに心残る幼少期

  • NHK特番で星宿海について放送していたのをきっかけに読むことにした。
    気になった点は、以下。
    ■前置きも何も無く、事実を最初に書くこと
     まず事実を書いた後、事実となる理由を書いていく文章スタイルが多かった気がする。
     これが作者の文章の特徴かもしれないが、読んでいて急にがらりと話題が変わってしまい、私は混乱しかけることが多かった。

    ■雅人の生死
     私はウィグルで生きていると思う。ウィグルで出会った雅人に似ている子どもの父親になっているのではないかと思う。

    ■星宿海
     星宿海についての書き込みが浅いような気がした。(もちろん私の読み込みが浅いのもあるが。)
     雅人の星宿海への思い入れは良く伝わってきたが、なにもチベットの湖にしなくても良いのではと感じた。
     作者の思い入れがあるのでしょうか。

  • また読みたい

  • 幼き日の陰を持った兄と弟。そして兄が50歳を超えて少年時代から憧れ続けてきた中国の黄河の源・星宿海ではなく、カシュガルで失踪。幼き日をたどり、そして兄の実母の出身地である瀬戸内海を訪ねる。兄の小さい女の子を産んだ母娘、そしてこれも幼き日から出会いのあるお好み焼き屋の女主人などが織り成す叙情的な小説でした。自らの年と同年代になるだけに、昭和30年代の貧しい日本、物乞いをする母と子などが今では美しくさえ感じます。

  • なんともロマンチックなタイトルのこの小説は、宮本輝さんが、瀬戸内の「しまなみ海道」と中国の黄河の源流にあるとされる無数の湖「星宿海」とをイメージして描いたものです。

    主人公と血のつながりのない兄・雅人がこの「星宿海」のイメージに取り憑かれて、中国のウイグルで失踪したところから物語は始まります。兄はなぜ、失踪したのか。主人公が謎を追うにつれ、読者にも、主人公と雅人の生い立ちのエピソードが少しずつわかっています。
    主人公の両親に引き取られるまで、決して幸せな家庭環境になかった雅人が心に秘めていた「星宿海」とは何だったのでしょう。ストーリーは常にこのことを軸にして展開していくのです。

    後半、雅人の恋人とその子供も登場しますが、「しまなみ海道」のホテルの露天風呂に入るシーンがあります。そこで見ることのできる夜空と海と島こそ、「星宿海」という言葉がピッタリの景色でした。

    雅人は、亡き母への思慕をそのまま「星宿海」へ託したのでしょうか。無いものねだりをするかのように、永遠に手の届かない宝物を捜しに旅に出たのかなあと、想像はつきません。

    失踪の原因も雅人の生死もわからないままですが、雅人の不幸な人生をおくった母への思慕や血のつながりはなくても思いやる兄弟愛を、美しい「星宿海」のイメージにのせて、最後まで読ませてくれる一冊です。

  • 中国は新疆ウイグル自治区で失踪した男にまつわる物語。
    視点は章ごとに主に弟、妻など複数から人間像をあぶりだしている。
    物語の出発点は混沌の時代、大阪の川辺。
    宮本の「泥の川」の舞台と共通するのか詳しくはないが、自分にはそう想像させた。物乞いの子が兄として家族に加わり、時を経て失踪。兄は「星宿海」に強く惹かれ、それは兄個人の生い立ちに強く関わっている。
    全編を通してモノクロのイメージを感じさせたが、星宿海にまつわるくだりについては光輝く映像が想像される。蛍川みたいに、全体としては終局的雰囲気を一点の強烈な光によって照らす手法は見事である。
    しかし、読み進めていってこれといった盛り上がりは感じなかったし、結局あいまいにというか途中で終わってしまったような感じもして、特に感動を覚えることもなかった。
    少し期待外れ。

  • 宮本輝の本の中で、私が苦手な場末系の雰囲気をもつ部類に入りそうですが、これは別。うまく阪神大震災後系につながっています。

  • 兄が中国で失踪。その兄は養子。母親と2人で物乞いをする生活だった。遠慮しながら新しい家庭で暮らしていたのだろうか?星宿海(せいしゅくかい)という黄河の始まりの場所に憧れがあったよう。そこを目指して失踪したわけでもないだろうけれど、自由になりたかったのかも。

  • 初読みか再読かわからない一冊。書きたい焦点が定まっていないといった印象を抱いてしまった。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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