- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344014152
作品紹介・あらすじ
芙六小学校を卒業したのは全部で107人。みんな、団地に住んでいた。小学校の卒業式で起きたある事件をきっかけに、団地から出られなくなってしまった渡会悟。それを受け入れた悟は団地で友だちを作り、恋をし、働き、団地の中だけで生きていこうとする。「団地に閉じこもってたら、悟君の友だちは減る一方でしょ。さみしくない、そういうのって?」月日が経つにつれ一人また一人と同級生は減っていき、最愛の恋人も彼の前を去ろうとしていた。悟が団地を出られる日はやってくるのだろうか-。限られた狭い範囲で生きようとした少年が、孤独と葛藤に苛まれながらも伸びやかに成長する姿を描く、極上のエンターテインメントであり感動の物語。第一回パピルス新人賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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友達に勧められた本。勧められたのは数年前。やっと読破。すっごく面白かった!!!これは団地の中での話だけど、きっと、世の中にはいろんな人がいて、いろんな考えがあって、いろんな悩みを抱えて、いろんな夢をもって、いろんな生き方をしているんだろうなー、とすごく当たり前のことを改めて思いました。ヒーさんの懐の深さが凄かった。
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団地の中で暮らし、団地から出ることなく過ごした悟の物語。
夢中で読みました。
こんなことって、と思いながら、でも、トラウマに囚われていたら、あることなのかもと、途中から納得しつつ読み進めました。
団地という狭い世界での悟は、ホントに自由で、生き生きとさえしていて、それがものすごく切なかった。
みんないなくなり、母とも分かれることとなって、最後に悟が決めたことで、ようやく終わったと、ホントの終りを見た気がしました。
その後の悟を応援したいです。
映画化されていたのですね。
キャストを見て、濱田岳くんに、うーん。
ちょっと違うイメージを持っていたかも。 -
団地から出れないってのは極端だけど、
住み慣れたとこから離れられないってのは
誰にでもある感情のはず。 -
東京に有る団地の話である。私も縁有って江戸川区の都営団地に、数十回は遊びに行っただろうか。まぁあそこは左程大きな規模の団地ではなかったが、団地の雰囲気は分かるつもりだ。主人公はとある事件をきっかけに自分の住む大きな団地から一歩も出ることなく、子供から青年へと育っていく。学校、就職、恋愛等全て団地の中で済ましている。ラストはかなり切ないのですが、その中に新たなスタートを見ることが出来て良い。
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団地から出られない悟の物語。
世界の広さの感覚は人それぞれだなぁという感想。
広範囲で活動していても浅いかもしれないし、狭い世界で生きてるように見える人ほど深い場所にいるかもしれない。
勉強も恋愛も就職も団地の中で済ませてしまう徹底的な悟は清々しかったけど、団地を去る同級生たちに置いてけぼりにされる様子は物悲しかった。
団地から出られない理由が意外だった。 -
2014年7月7日(月)、読了。
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トラウマを抱え込んでしまった主人公に、あの母親がいなかったら、またはあの母親でなかったら、この物語はまったく違うものになっていただろう。
母親が必要以上に心配している気配を表に出さなかったことで、彼は閉じた場所でも気持ちがいいほど家族以外の他者に対して自分をオープンにすることができた。
師匠も恋人も隣人も同級生も、そして団地で彼に関わりのある人々みんなが互いに存在を認め尊重し合う。尊重し合うところに生きるための仕事があり、逆境に陥ったときの知恵が生まれる。その部分を蔑ろにされたとき、望むと望まざるとに関わらず、彼のトレーニングが初めて意味をもつものになる…。
団地で育った自分に、読んでいる間この物語はずっと、懐かしさと切なさと悲しみが、複雑に形を変えながら波のように押し寄せ続けていた。20数年前に出たきりのその団地は今は無く、略歴で知った著者は私と同い年だった。 -
団地から出られなくなってしまった理由、
そうだったの・・・。
知り合いが次々と団地を去っていくのを見送るのは、
焦りの気持ちがあっただろうな。みんなは普通に
平気で団地の外に出られるのに自分は出来ないって。
団地の中だけで生活するって、意外とやろうと思えば
できちゃうもんなんだなぁ。ただ何をするにもすぐに
噂が広まるね。常に周りに目があるのは不自由ね。
でも考えてみれば私だって似たようなものかも。
ほとんど寄り道することもなく職場の行き帰りと
スーパーへの買い物と図書館ぐらいしか行動範囲が
ないんだから。さすがに団地よりはもう少しエリアが
広いんだけど。限られた行動範囲の中で生活してる
っていう面では私も悟とあまり変わらないことに
気づいてしまった・・・。
タイトルの「みなさん、さようなら」は一本調子の
サラッとした言い方じゃなくて、小学校の下校時の
挨拶、ほら、ちょっと伸ばしたリズムの
「みぃなぁさん、さよ〜なら」の方なのね。 -
なんだか、なんでもない人間の生活をつぶさにみると、
平凡なことや、どこにでもあることって、
とてもドラマ性のある、「平凡」じゃないことになるんだなと感じる本。
フツーとかそんなの、人の一生にはない。
何かを成し遂げたとかじゃなく、ひとは生きて生活を続けていくことに
ほんとうに全力になってもいいんだと思える。
かっこわるいとか、そんなのどーでもいい。
誰がそういうの決めるの?
何も成し遂げなくても、全力で生きてることで充分じゃん。
スマホやパソコンに閉じこもっているよりも、
断然閉塞感があるように見られる、団地敷地内から出られない
主人公の生き方は、誰かに誇るものじゃなくても、
誰かがその生き方をけなすこともない、大切な一人の人間の生き方。
ひとはそれぞれの生き方をする。
別れは絶対にやってくる。
希望も喜びもあるけれど、人生にはどうにもならないことがある。
全部あるから、せつない。
ほんとうの、せつない物語だと思う。