ハマスの息子

  • 幻冬舎
4.40
  • (4)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 38
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344019997

作品紹介・あらすじ

裏切りかそれとも愛なのか!?憎悪、陰謀、拷問、自爆…中東を揺るがす恐るべき秘密の数々が今白日の下に。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • イスラエルの紛争に対する日本や各国のメディアの論調に何だかモヤモヤして、図書館で取り寄せた本が、ハマス創立者の息子でありながらイスラエルのスパイとして活動した男性の手記となる本作。パレスチナ偏重の記事が多い中で、こういうのが知りたかった!と思えた一冊。

    冒頭は、イスラエル軍に捕まった著者が劣悪な軍施設で暴力的に扱われるシーンから始まり、そりゃイスラエルを恨むのも分かるわぁ…と思える。そんなイスラエルをおとしめるためにスパイになったふりをしてパレスチナのために働こうとする著者が、パレスチナ側の権力者と組織の腐敗と残虐さに辟易し、少しでも犠牲を抑えようと諜報活動をするも果てしない暴力の連鎖に失望していく様子が克明に記されている。そして衝撃だったのが、
    「もしイスラエルが消滅したなら、パレスチナ人は一体どうするのだろうか?すべてのユダヤ人が聖地を捨てても、私たちはまだ戦っているだろう。スカーフをかぶらない女性をめぐって。誰が一番強くて重要で、誰が一番良い席に座るかをめぐって。」(一部抜粋)
    という、たとえいかなる状況になっても(イスラエル建国前の状態になったとしても)争いをやめない姿勢だ。

    いかにパレスチナの権力者たちが共存や和平を望んでおらず(口ではそう言っても全く実行せず)、各国からの援助や資金が自治区域インフラ整備や住民の社会生活に全く使われずに幹部たちの贅沢な暮らしや武器購入に費やされ、そして民間人(ユダヤ人もパレスチナ人の両方)の犠牲は彼らにとって「成功」となる図式が本当におぞましい。

    イスラエル軍から暴行を受けた経験を持ち、パレスチナの権力側にいながらその暴力構造に絶望した中でキリスト教を信じ、ユダヤ人とパレスチナ同胞の両者を愛した著者の手記には説得力を感じる。復刻版が出たみたいなので、購入検討中。

  • [回天]イスラエルを敵と公言するハマスの創設者の息子であったモサブは、ある出来事がきっかけで「ロアイ」と名乗る人物と出会い、意気投合の末にイスラエル側の情報機関のスパイとして働くことに。次第に彼は複雑な情勢下で存在感を強め、「グリーン・プリンス」というコードネームをつけられるようになるのであるが......。世界中が度肝を抜かれた一人の男の「改宗」に関するノンフィクション。著者は、本書の出版前に家族から絶縁を宣告されたモサブ・ハサン・ユーセフと彼の執筆を補佐したジャーナリストのロン・ブラックイン。原題は、『Son of Hamas: A Gripping Account of Terror, Betrayal, Political Intrigue, and Unthinkable Choices』。


    こういう人がいるということは知っていたので、「とんでもない話があるもんだな」と思いながらページをめくり始めたのですが、読んでみると想像を絶する衝撃作でした。事実は小説よりも奇なりを地で行く展開に、(不謹慎ではありますが)バツグンに面白いと思ってしまったのも事実。イスラエル・パレスチナ紛争に彼が直接・間接的に与えた影響だけでなく、彼と彼に関わった人々の心情(特にすべてが曝け出された後のそれ)に思いを致さずにはいられない一冊でした。

    〜自由、自由への渇望。まさしくそれこそが僕の物語の根幹にある。(注:評者訳)〜

    映画版も観賞してみたい☆5つ

  • イスラムのことに詳しくないのですが、興味深く読みました。

    私と年の変わらない青年がこんな日々を送っていたとは。

    ハマスの息子である著者がイスラエルのスパイを働き、結果的にテロで多くの人が殺されるのを防いでいた。ことがわかる。

    彼がキリスト教に改宗することも大きなおどろきだ。

    そして、家族とも絶縁されて、アメリカで亡命生活を送っているが、ホームレス同然という現状が何ともいえない。

    「正義」はどこにあるのだろう。

    豊かさとはなんなのだろうとか、思ってしまう。

全4件中 1 - 4件を表示

モサブ・ハッサン・ユーセフの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×