絵になる子育てなんかない

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344020832

作品紹介・あらすじ

子どもは田んぼと一緒。努力・辛抱・根性で手入れを続けると勝手に育ってるものなんです。二児のワーキングマザーが養老先生と考える、親と子のあたらしいしあわせ。

感想・レビュー・書評

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  • 子育てに真剣に向き合っている印象の小島さんと、全ては「自然」からの視点で捉える養老先生の子育て対談という、噛み合っているんだかズレているのだかよくわからない対談で面白かった。

    「変質する世界」に収録されていた、ぶっ飛んでいた養老節を思い出す。他のジャーナリストや学者さんが微に入り細に入りコロナ問題を議論する中で、養老先生は人間という生物の生き方そのものとは、みたいな高見からの意見で、印象に残っているのは養老先生のエッセーだけだ。

    第一パンチは「哺乳類の子育てが始まったのは6000万年前。人間はせいぜい25万年でそこに意識を持ち込んで、自然である子供をコントロールしようとしている」という話。ドキュメンタリーで見るシロクマやオオカミの子育てを思い出し、その延長に自分の子育てがあるという見方が目から鱗だった。

    その文脈で、早期教育や小学校受験、中学校受験はいわば抜け駆けであり、長い目で見れば結果は同じ、早期英語教育をしたところで、もし自分がそれなりの成果を出せば誰かが翻訳してくれる、という、一見乱暴な議論も、本当に何がしたいのか、人を育てる目的は何で、何を目指しているのかが定まっていれば話は簡単だという議論に納得。さらにその延長として、グローバル化も、ローカルがしっかりしていればグローバルがついてくるのであって、グローバル化しようと他に追従しようとする姿が間違っている(中身が伴っていない)という議論には色々頷く部分があった。英語が話せること等の能力はフリルであって、その能力で何がしたいのかという議論が抜けているということに気づかせてもらえた。

    男性が育児をすべきかという議論には、家事育児を公平にと考える小島さんとのズレが激しくてこれも面白い。養老先生の場合、子育ては母がメイン、でも子育てだけしていればいい状態はむしろ理想的で、それに文句を言うのは贅沢だという考えらしいが、その考えの元は「自然界ではメスが子育てしている」という事実と、自身の母親がシングルマザーの女医という、なんとも特殊な環境で育ったことにある。他の男性が発言したら「は?」というところも、先生の場合は自身を含めて人間をあくまで動物としてのオスメスで捉えている感があり、世間一般とのずれが激しくて面白い。そして時間がある人は山林の手入れに手を貸して欲しいというぶっ飛んだ結論。

    その他印象に残った部分
    原発の失敗:平均的な人間の能力内に収まっていなかったことが根本的な問題。現場にはそれに率先して対処しよう責任をとろうというエリートはいなかった。
    「ある程度の年齢になったら、育ちがああだった、こうだったと言わないことです。育ちのせいにしない。過去は全部チャラ。それが大人になるということです」
    一次産業=自分の力で生きることの重要性。

  • 小島さんの主張には全面同意できるけれど、養老先生にはあまり…。
    (特に、父親の育児について、「男は育児に向いてないよ〜ははは〜」というようなところ)

    ただ、この本はタイトルが素敵だと思う。もう、本文がなくてもタイトルだけで十分。
    私だけが限界を振り切ったボロボロの育児をしていて、皆は「絵になる子育て」をしているんじゃないか、
    という不毛な考えが頭をよぎることがあるけれど、
    そういう時は、「絵になる子育てなんかない」という言葉を思い出していきたい。

  • 哲学書というものを読んだことがない。だから一体どういう体裁で、厚みや文字の大きさがどんななのか、名称からくる取っつきにくさからもまったくおつきあいする気もないし、今後も変わらない思う。哲学って意外と身近なところに本質が隠れているんじゃないかと感じていたのも理由の一つだ。
    まさにこの本がその感覚。
    文字が大きめ、対談形式。パッと読める体裁。なんだか読み応えがないかもしれないけれど、しかし、内容はまことに哲学に富んでいる。膝を打つフレーズが連続する。
    子育てでひりひりしている方々、いろんなことが心配で子供を作り育てる自身がない方々、一度読んでいただきたい。
    自分の子供にがっかりすることの連続だとお嘆き(かく言う僕もその一人)の諸氏にとっていい気分転換と軽い意識変革がおこるかもしれません。
    完璧なんてありえない。そうなんだなと思い直すのにいい一冊です。

  • 解剖学者の養老孟司先生と、フリーアナウンサーで二児の母親の小島慶子さんが語り合う次の時代の親と子の幸せについての対談をまとめたものです。養老先生の言葉と小島アナの「母親の本音」が交錯しております。

    この本を作るきっかけとなったのは8年前に解剖学者の養老孟司先生の
    「子どもは自然。大人の思いどおりになんかならない。子育ては田んぼの手入れのようなもの」
    という子育て論に小島慶子さんが感激し、なんと、養老先生の自宅まで
    「養老先生と子育ての本を出したいんです」
    と押しかけていったいうことです。彼女の行動力にも非常に驚きましたが、対談の内容がこれまた深いことをさらりと書いていて、かつて子供であった自分も
    「そーだよなー。子供が親の思うとおりには育たんわなー。」
    と思いながら最後まで読み進めてしまいました。

    世の中が変わるなら子育ても変えなきゃいけないですか?
    「こんなに頑張ってるのに誰も褒めてくれない」
    と思うのはワガママですか? などの「理想の子育て」というものに縛られて身動きが取れなくなっている「いまどきの母親」のいうことを小島アナが代弁すれば、養老先生がこれまた達観された回答で快刀乱麻を断つすばらしい展開をされていて、読み応えのある本でございました。

    個人的に一番面白かったのは、養老先生が奉職されていた東京大学医学部でデキる学生というのはこっちが何も教えなくてもできた。逆に自分が教え込んだのは箸にも棒にもかからない学生たちだった、という箇所と、田舎と都会、それぞれに家を持って双方を往復する「旅人」のような生活をするのが望ましい、という箇所でした。都会と田舎に家を持っている人は最近だと仕事部屋で使うマンションのほかにその近辺、たとえば東京で言うと箱根湯本かどこかに書斎をかねた家を持っている、という方はいるそうですが、自分がこういう生活をするには、まだまだ時間がかかるだろうなと思ってしまいました。でも、あきらめてはいませんけれど。

    一方の小島アナの話も、自分の近くに住んでいる主婦で、何もかも完璧であるけれど、あるとき
    「私のことを何だと思ってるのよ!」
    という怒鳴り声が聞こえた、と述懐していたのが妙に心に引っかかっています。理由はわかりませんが。とにかく、育児書としてはもちろん、知的な対談本でもございますので、よろしければぜひ手にとって読んでいただければな、と思います。

  •  自然に反する子育てを真っ向から否定する主張には大体頷けた。お受験や早期教育は抜け駆けして安心したい親のエゴ。子育ては絵にならない瞬間の連続。外野に惑わされず、確かなものだけを見つめて生きたい。

  • まずタイトルにどきっとする。絵になる子育てにしてることってたくさんあるぞ私、と。

    「子育ては自然である。」という養老さんの説に沿って繰り広げられる対談本。

    面白かったのはテレビでホームドラマが流れるようになって、一個のカメラが撮っている画像を全視聴者が見るという非常事態が続いているという話。目は普通共有してなくて皆違うものをみてるのにそれを忘れてしまっていると。母親が見ているものと子供が見ているものは違うのだということ。

    そしてわるい叔父さんの意義。その人の器なりの人生。社会でどうやって人の役に立つか。二地域居住制。どん底に落ちたら掘れ。

  • 子育て論を期待すると期待外れになると思います。
    第一次産業、身体性などは共感できるけど、温暖化、男性の子育て、専業主婦あたりはちょっとなと思いました。

  • 子どもとはいえ,それは自分ではない。他人のこと。
    かけがえのない他者とどうやって生きていくかのヒント。

  • 養老先生の最後の言葉、「これからますます求められるのは、地に足をつけて自分で立つ人間です。それがよき市民、よき人生です。」が心にしみた。
    また、男性が子育てするのは自然に反すると養老先生は言う。パパがママと同じように子育てをすることは不自然とは思う。だから、男性として子育てにどう関われば良いのかが問題となる。ファザーリング、パパごはん、そのような背景から生まれてきたのである。

  • ◆きっかけ
    2016/8/15

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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