夜また夜の深い夜

著者 :
  • 幻冬舎
3.25
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本棚登録 : 916
感想 : 134
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026506

作品紹介・あらすじ

私は何者?私の居場所は、どこかにあるの?どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。

感想・レビュー・書評

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  • やはり桐野さんは正真正銘のストーリーテラーだなぁ。
    常に新しい舞台設定とぐいぐいと読ませるスピード感。
    中には合わない作品もあるけれど今回は面白かった。

    舞台はナポリ。
    ナポリで母と二人だけで貧しい暮らしを送っているマイコ。
    国籍もパスポートも持たずろくな教育も受けていない。
    整形を繰り返す母と様々な国を転々としながら生きてきた。
    一体母親の正体は誰なのか、自分は誰なのか。

    やはり桐野さんは日常と逸脱した物語を書く方が断然面白い。
    今ドラマ化されている「だから荒野」なんかよりこっちの方が好きだ。
    アウトローを描かせたらピカイチだ!
    おまけにこの作品にはマイコが一緒に行動する友達それぞれの祖国の話や生い立ちを描写することによって、普段は意識することのない世界情勢や社会問題をも読者に喚起させる。

    最後にマイコが選んだ彼女の生き方には賛否両論あるにせよ、存分に最後まで楽しめた作品だった。
    桐野さんが国外で評価される理由がなんとなくわかるなぁ。
    言語を超えた普遍的テーマを扱っているから?
    いやむしろ翻訳しやすい文章ってことかな(笑)
    まさにストーリーテラーです!

  • 19歳の主人公が産まれた時からの特異な環境の中で自我に目覚め他者との関わりを経て自分の運命を受け入れるまでー
    と、一括りにするには物足りないし、そんな生易しいストーリーではなかったけれど、読み手のわたしが受け取ったメッセージは、「生きていくこと、それこそが人生。」ということ。
    母も、主人公の舞子も、国は違えど壮絶な経験をして生き抜いてきたエリスやアナも、自分の人生を諦めてはいなかった。世間の掟や常識という枠からはかなりはみ出ていたかもしれないけれどね。善悪を問うてはいない、生きることは何人たりとも裁かれるものではないんだなと。

    後半に行くにつれ話しが加速するように、こちらもぐいぐい物語の中へ引き込まれていった。
    国籍もIDも持たない存在、不法入国者、犯罪者の子どもや家族の世間からの苛めを負い、贖う事実。闇を抱えた幾つものポイントがこのお話には撒かれていて、それこそがタイトルに暗示されているみたいに。
    唯一自身と重ねられるものがあるとしたら それは “ もう一人のわたし ” の存在かな。

    決して良い読後感とは言えなかったけれど必死さがガツンと届く一冊。

  • 桐野夏生さんの本は本当に大好き。
    面白くて面白くて、毎回一気読み。
    どうして、こんなに本の世界に没頭してしまうのか。毎回、桐野ワールドに引きずり込まれてしまう。

    今回はイタリア ナポリのスラム街を舞台にしたお話。
    地下世界があって、世界遺産の街を持ち、近くには活火山のベスビオ火山。
    地理歴史好きの私にとって、生涯行くとが出来ないであろう海外の街のお話は楽しくて仕方ない。
    特殊な環境で育ったマイコが、いろいろな経験をして成長していく姿が面白かった。
    その成長するきっかけというのが、漫喫に入り浸ってマンガ腐女子になるところから始まるのが桐野ワールド。

    ラストもまさかの展開で良かったけど、少し端折りすぎな感が。
    もっと詳しく顛末を知りたかったな。
    でも桐野さんの本は毎回最後ちょっと物足りない位で終わるのでこれが作風なのかな。
    桐野さんの本、図書館からもう一冊借りてきたので、そっちも楽しみ

  • さすが敬愛する桐野夏生さんであります。しっかり読み応えがありました。ありがとうございました。

    がしかし、こうなるとシュンはどうなるのー?と気になって仕方がない。

  • 物語は、ナポリに住む舞子の手紙で幕を開ける。
    一度も会った事の無い七海という女性に向けて自分の生活を語る。

    18歳の舞子は母と二人で、ナポリのスラムに住んでいる。
    幼い頃からアジアやヨーロッパをを転々とし、
    名前も偽り、友達も作らず小学校しか行っていない。
    母親は時々長く家を空けてるけれど、帰って来ると顔が違う…。
    何度も何度も整形を繰り返す。
    そして、自分の元の顔そっくりに育った舞子にも整形しろと言う…。
    国籍もIDもない幽霊…。
    父親も知らず、母の名前すら知らない。
    母はいつも何かに脅えている。
    母は何から逃れ、何を隠しているのか…?
    母は日本でどんな罪を犯したのだろうか…?
    MANGA CAFEのシュンとの出会いが舞子を変える。
    舞子は家出をする…。

    舞子の状況に何と可哀相なと思っていた。
    母親には怒りすら感じでいた。
    しかし、家出後に舞子が知り合った地下に暮らす二人の少女
    モルドバから不法入国したアナスタシア
    リベリアから不法入国したエリス
    もっと、もっと過酷な人生を送っていた。
    内戦中のアフリカで産まれたエリスの生い立ちや体験は、
    目を背けたくなる。凄惨過ぎる。
    常に虐殺の最中に置かれ
    生きて行く為には何でもせざるをえなかった。
    テレビで良く耳にする内戦…。
    その裏では、そういう現実も確かに存在するのだろう。

    どんな苦境て゛あっても、楽しく前向きに過ごす3人の姿には、
    何事にも屈せずに生きていく!という輝きが感じられました。

    最後の最後に大どんでん返し…。
    輝くアナと舞子には確かに嬉しかった。
    でも、終わり方が唐突だったからかな…。
    何だか物足りない…。
    何だか納得出来ない終わり方だったな。

  • え?それじゃぁシュンは?被害者の会はどうなるの?

    お母さんとまた暮らせるようになってよかったねーとは全然思えなかった。そもそもお母さんの告白は信用できるの?娘に国籍も与えず、本名も名乗らせなかったんだよ?何度も引っ越して整形して逃げ回っていたお母さんだよ?

    う〜ん、ラストに納得できなかった。

  • わけも知らされず名前を変え、引っ越しを繰り返し、友だちも作らない生活をしなければならないなんてかなしい。
    母親から理由さえ教えてもらえていれば少しは納得できるのではないだろうか?
    いやいや、若いと知らないほうが幸せということだってあるな。
    信頼できる人がいれば、少しは救われる気もする。

  • 初出は文芸雑誌GINGER L.、ジンジャーエール。アラサー向け女性雑誌GINGERの姉妹誌に連載された小説は、今を生きるその年代がリアルにホットに感じるだろう事柄が盛沢山。ハラハラドキドキの連続だが重くなり過ぎずに読み終える。スカスカの行間は、読者の知識欲と努力で埋めるためにあるのかも。桐野夏生氏は安定した筆致で最後まで引っ張ってくれるから台風待ちの連休中、ふらふらと揺れる気持ちで読むのに最適でした。

  • 意外性のある設定、展開に引き込まれて一気に読んだ。奇想天外な小説の世界で思いっきり遊んできた感じ。面白い!

  • アジアで産まれナポリで暮らすマイコから雑誌で読んだ七海への手紙の形で進む物語。マイコは名字も知らず、学校にも行かず、国籍もIDもない。共に暮らす母の仕事は不明で何かから逃げているのか母は整形を繰り返しながら各国を転々としている。自由を手に入れたくなったマイコはMANGA CAFEがきっかけで家出し不法移民のエリスとアナに出会う…。東京島と同じくモデルがあり、七海とマイコは元日本赤軍の最高指導者、重信房子の娘重信メイがモデルという。現実の世界の不可思議さ。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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