キャロリング

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026599

感想・レビュー・書評

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  • お正月前の年内最後のイベント、クリスマス。仏教が主の日本においては、海外ほどではないにしても、最近では一大イベントとなっている。神道の我が家でもクリスマスには、多少なりとも感化されている。

    イギリスでホームステイをしていた時に(イブではなかった気がするが)、子供たちが戸口で賛美歌を歌っていた。ホストに説明を受けたが、今となってはどんな説明であったのか、思い出せず、ただ残像で『あのことね』という感じの記憶のみだ。読み終えても私の残像と本作の意味繋がっていないような気がして、『ひょっとして、キャロリングって別の意味があるの?』と、不安になり意味を調べてみた。

    「キャロリング」とは、クリスマス・イブにキリストの生誕を賛美歌を歌って知らせること。のようだ。

    意味は間違っていなかった。と、なると作者が本作のタイトルを「キャロリング」とした意味が難しいく感じた。キーワードは、クリスマスなのか、子供なのか、新しい人生の誕生という意味なのであろうかと、思い巡らせる。

    本作は「クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーの社員・大和俊介。同僚で元恋人の折原柊子に秘かな思いを残していた。そんな二人を頼ってきたのは、会社に併設された学童に通う小学生の航平。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねることに――。逆境でもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖を描く感動の物語。(Amazon 内容紹介文より)」である。

    主人公・大和俊介は、両親からの愛情を受けることなく、不幸な人生を送っていた。そんな彼の一番の恩人であり理解者は、子供服会社「エンジェル・メーカー」の社長である西山英代だった。父親からの身体的な虐待、母親からの精神的な虐待…不幸の比較はできないが、母親のためにと思って行った行為が、母親から非難される。その時の大和の受けた切なさ、虚しさは想像するだけで、胸が締め付けられる思いがする。そのためか本作での彼には陰(かげ)があり、世の中を悲観的に捉えいるように感じられる。
    それでも、彼が発する言葉の真意、行動には優しさや配慮が感じられ、不幸な過去を経験したにもかかわらず、周りの人間から信頼される言動にはたいしたものだと思った。

    大和の身に起こったDV、倒産に加えて暴力団、誘拐と次々に起こる不幸の連鎖。

    一人の人の人生にこんなにたくさんの不幸が起こること自体が衝撃的であるが、本作においては、それほど深刻な問題には感じなかった。
    それはこんなに不幸が重なるわけはないと思っているからか、小説なのでそれほど深刻にはならないと思っているせいか、はたまた誘拐犯が人間味あるからか、いずれにしてもそれほど威圧感や切迫感を感じないところがいい。
    特にヤクザの赤木守とその子分の糸山光太、石田猛がいい味を出しているためであろう。

    クリスマスまで会社倒産のカウンドダウンで起こる事件。大和の受けたDVも何か意味があるのかもあしれないが、ひとまず、クリスマスを機に新しい人生がスタートするという意味でこのタイトルが付いたとしたい。また、時間をおいて再読した時…わかることがあると思う(ことにした)。

  • 大和っていい奴。引っ張っていってくれる感じで惹かれるな~
    航平君、まだ子供なのにしっかりしてる。
    お話しまで書けちゃうし、ちゃんと人に伝えるという事ができるなんて偉い。
    急にゆる~い流れが誘拐事件勃発でビックリ。
    倒産とか離婚とか誘拐とか、いっぺんにいろんな事が起こった冬の出来事。

  • 始まりは、いつものような入り込みがなかった。
    が、事態が動き出し、それぞれが思いをさらけ出すうちに、面白くなってきた。
    ハートウォーミングで、何度か涙。
    コメディータッチというか、舞台っぽいところも。
    あたたかい読後感。

  • 有川浩の本はドラマを見ている感じがするよね。登場人物の言動が大げさすぎて入り込めない。図書館戦争はそれが良かったけど、この本ではなぜかただうざかった。朝倉さんとベンさん?とか。

  • レビュー見ると、物足りなかったという人が多いようだけど、有川さんの作品への期待が大きすぎるのかな?
    私は初有川作品だったので純粋に面白かったと思いました!!
    これで物足りないというなら、他の作品がすごい楽しみです!
    最初、緊迫した場面から始まって後からそれまでの経緯が語られる。その経緯を知ってからは最初の場面が全く違った状況に見えた。それぞれの人にそれぞれの物語があるのだと感じた。

    「不幸の比べっこなんかしても意味ない」

    本当にいい言葉。。。
    大和の両親は最低だと思ったけど、それでも人を助けられる人になったのは素晴らしい。
    クリスマスのとうことのシーンは暖かくて感動。
    幸せになってほしいです!!

  • 最近の有川さん作品の中では一番楽しめた。
    先に後半のスリリング場面を持ってこられたときは「おぉっ?血生臭い展開か!?」と身構えたものの、そこは有川さんらしくお子さんでも楽しめる内容になっていた。

    登場人物の性格や、会話のやりとりは有川さんらしいテンポ感。
    恋愛もほんのり効かせ、「めでたしめでたし」が似合う終わり方。

    ところどころに、「空飛ぶ広報室」のような「植物図鑑」のような・・・他の作品でもあった雰囲気がちらついて、有川さんらしい雰囲気がファンには嬉しい要素かも。

    よかったのは、家族が出した結論。
    童話にならずにすんでよかったな。

  • 有川浩さんの作品ってことで、図書館で借りたんだけど、題名で想像できるようクリスマスの話。 少し時期的にはズレてるけど、それほどクリスマス・クリスマスした感じではないので、気にせず読めました。登場人物、誰を取っても、どことなく憎めない感じで応援したくなってしまう。赤木はじめ悪役までも。ネタバレになっちゃうけど、航平くん家族が元通りにならなかったのは残念。でも大和と柊子これから始まるんだね。

  • 久々の有川さん。
    文章の有川さん節が懐かしかったー。

    タイトルからクリスマス色のお話かと思ったら、
    クリスマスへ向けて会社を閉じる話と、
    別居中の両親によりを戻して欲しい男の子の
    話が軸となってました。
    プラス、主人公を中心とした恋愛話。
    有川さんといえば、やはりラブだもんなぁ。

    不幸の比べっこしても仕方ない、
    そうだよなぁ。

  • いつの間にか出ていた最新作。
    「明日の子供たち」からまだ3か月も経ってないのに、速筆である。

    内容はこの時期に読むと独身男性は心が根こそぎ持ってかれそうなものでもなく、少しの苦めな物語。山場がビックリするくらいあっさりと終わるのは拍子抜けしてしまったが。

    ドラマ化するらしいが、確かにドラマ映えはしそうな作品である。

  • 少しいつもと違うなって思ってたけど
    結局は有川浩なんだなって

著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

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