持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344027688

感想・レビュー・書評

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  • 印象的な部分(抜粋)
    ・生きるにおいて本当に大事なことは何かというと。「1人で孤立せずに社会や他人との繋がりを持ち続けること」と「自分が何を好きか、何をしているときに一番充実や幸せを感じられるかをちゃんと把握すること」の二つだと僕は思う。
    ・仕事をするのも大事なことだけど、仕事をするために人生があるのではなくて、より良く生きるための手段の一つとして仕事というものがあるにすぎない。
    ・人間は自分が自分の判断で自由に操作できる小さな世界を必要としているし、その中で自分で考えて何か変化を作っていくことに楽しさを感じる。結局人間のやっていることなんてそれだけのことだ。社会に出て一生懸命働くのも、庭で植木をいじるのも、ゲームの中で主人公のレベルを上げるのも、ゴミ屋敷にゴミを溜め込むのも、本質的には変わらない。
    ・お金をたくさん持つというのも豊かさの一つだけど、自分の中にいろんなものの見方を身に付けるということも豊かさだと思う。〜料理、草木を育てる、散歩など〜
    ・お金をかけずに生活を楽しむコツというのは一度身に付ければ一生残る資産だ。年をとってからとかお金がギリギリになってから新しいことを身に付けるのは結構しんどいし、人生のうちで早めに身に付けておくことを全ての人に勧めたい。〜読書、料理など〜自炊のできない人が貧乏になると毎日カップラーメンばかり食べる生活になってしまったりする。本当はうまく自炊すればインスタントラーメンより自炊の方が安くていいものを食べられるんだけど、効率的に自炊ができるようになるにはある程度の時間とお金と試行錯誤が必要だ。余裕のない状況で新しいスキルを身に付けるのは難しいから、できるだけ余裕のあるうちに身に付けておくのがいいと思う。
    ・複雑で忙しい時代だからこそ、お金や時間に振り回されないためには自分なりの価値基準を見失わずに持ち続けることが大切だ。そのためには「感覚や感情を大切にする」というのが有効だと僕は思う。「ごはんが美味しい」とか「散歩が楽しい」とか「夕焼けが美しい」とか、そうした生活の中にある些細な楽しみが人生の充実感の基礎を作っている。
    ・人間が人生の中でやることって結局、七割くらいは「居場所を作るため」の行動じゃないかと思う。
    ・一つのコミュニティだけに人間関係を頼りすぎているとだんだん閉塞感が出てくるので、顔を出せる場所を複数確保しておくと良いと思う。

  • 以前からニート「的」な生き方を推奨してきたphaさんが、ここにきて流行りのミニマリズムと合流して注目されている、という印象。

    僕がこの本を読んで思った感想は、「phaさんは、やはりハッカー的な思考をしている人なんだなぁ」という印象。ここでいう、ハッカーというのは、「不正アクセスをして、データを盗み取るわるいひと」ということではなく、「物事をちょっとした工夫で改善して楽な解決を目指す人」というような、従来的な意味。「ライフハック」などと言った時に指す「ハック」というのはこの意味で、物事を工夫一つでよりよく変える発送の転換術のようなものである。

    で、ハック(あるいはハッカー的思考)が成り立つためには、物事の整理が必要である。今どういう状況で、何が問題なのか。何があって、何が足りなく、何が障壁になっているのか。それらを冷静に見て、その上でちょっとした解決策やアイディアを提供する。
    与えられたものをそのまま受け取るのでは、この思考は成り立たない。場合によっては、それまでの「当たり前」をラディカルに捉え返す必要がある。そして、この本にはそのエッセンスがある。

    僕が特に面白いなと思ったのは、家族についての項目である。

    「「結婚」や「家族」というパッケージはすごく多機能で包括的だ。恋愛感情や性欲を満たす相手も、同じ家で一緒に生活をする相手も、子どもも病人や老人の世話も、家が持っている資産やか行の運営管理も、自分の病気や死を看取る人も、全部一つのグループの中だけでやっていこうという理想を持った、盛りだくさんなシステムが「結婚」と「家族」だ。だけど、そんなに多くの機能を「結婚」と「家族」という一つの仕組みだけで全部満たしていこうとするのは無理があるのだと思う」(p75)

    普通、「結婚する」とか「家族を持つ」とか言う時に、「機能」なんて言葉は使わない(社会学者か人類学者でもない限り)。
    しかし、ハッカーの眼からすれば、そこに内包されているものは「機能」と呼ぶべきものであり、それは冷静に吟味されるものになる。
    自分が生活の上で求めているものはなにか、それは結婚や家族などのパッケージに乗らないと実現できないものなのか、あるいはその費用は見合うのか、などを考えて、クレバーに判断していく。

    phaさんの良いところは、「家族は絶対に持つな」とかいわないところで、「別にあってもいいけど、それが絶対じゃないよねー」というゆるい視点を提供していることで、もしメリットがあると思うなら結婚してもいいんじゃない、ぐらいのスタンスである。押し付けがましくない。
    世間の規範を構築主義的な視点一本で行くとちょっと厳しい時もあるが、柔軟に別の視点を提供して、思考を柔軟にしてくれる、という意味では実践的な本だと思う。

    ちなみに、この本の難点があるとすれば、こうした「持たない暮らし」のようなものは、明らかに日本社会の貧困化を背景としている(それが近景なのか遠景なのかは様々言えるとは思うが)。そこで、「貧乏でもそこそこ楽しい暮らし」を提案するのはけっこうだが、しかし社会保障や雇用を充実させたくない連中は、必ずこうした生き方を称揚しようとする。つけこんでくる。
    だから、ミニマリズムも「楽しく貧乏」も良いが、同時に社会的な保障の充実は必要である。言うなれば、社会的なものは放棄するべきではない、ということ。

    phaさんが社会活動するイメージもないが、この本を取り上げる際には、そうした釘は打っておく必要があると僕は考える。

  • これってダンマだね。一言で言えば。
    囚われない生き方。幸せに生きる方法。

    <以下引用>
    僕が生きるうえで大事にしていること。
    1 一人で孤立せずに社会や他人との繋がりを持ち続けること。

    2 自分が何を好きか、何をしているときに一番充実や幸せを感じられるかを、ちゃんと把握すること。


    会社や家族に属さなくても、ネットやシェアハウスでゆるく仲間を作っていれば、孤独にならずにわりと楽しく暮らしていける。
    天気の良い日に外をぶらぶら散歩したりすれば十分幸せな気がする。
    p.16

    働くこと稼ぐことに囚われすぎても良くないが、働かないことに捕われるのも良くない。

    知識は人を自由にする。 p.17

    幸せとか不幸せは、かなり体調とか気分に左右される。
    p.32

    息詰まらないことは、ときどき旅をすること。
    旅は日常の軽いリセット。 p.58

    宇宙から見れば、どうでもいい。
    宇宙の数百億年という膨大な時間と、数百億光年という膨大な空間から見れば、一人の人間が何をしようと、どうでもいいことだ。すべては一瞬の些細なこと。
    そう考えると、自分の悩んでいることなんでどうでもよくなる。
    「すべてはどうでも良いことだから、自分が面白いと思うことだけやればいい」
    って思える。
    p.68

    家族という制度も、イエ制度も、さほど歴史もない。
    p.78

    自分のペースを守って生きたい。 p.110

    楽しく暮らすために一番大事なのは「他人と比べない」ということ。 p.119

    居場所があれば生きていける。 p.152

    ゆるさを保つ。 p.160

    場を自分でつくる。 p.162

    公園などにブルーシートを敷いただけで、オフ会をやる。
    会場代もかからない。
    p.166

    滅びたらまた新しいのをつくればいい。 p.172

  • 多種多様な生き方の可能性を広げる本。「知識は人生を変えるし社会を変える!!」

  • 会社で働き続けることをやめた筆者が、人生の中でやめられるもの、必要なものをまとめている。
    働かない、お金に縛られないことは固定費を抑えること、レジャーや暇つぶしを安価にすることで可能になる。家族を作らない、も必ずしも固定された人間関係をつくらなければ、とか子供がいなくては、と思わなければ可能。つまり、戦後に作られた幸せの形を追い求めなければ、持たない生活は可能になる。そもそも、社会環境の変化が大きすぎて、ステレオタイプな幸せの形はなかなか手に入りづらくなっているのが現状である。
    しかし、居場所は必要で、一人暮らしよりもシェアハウスのようなところで、ゆるく個人が繋がることは必要とのこと。

  • この本は「世間の常識」を否定するわけではなく、「世間の常識」から少し離れて物事を考えてみることを勧めているのだろう。
    常識に縛られず、自分の気持ちを認識した上で自分の生き方を決めるのがいいのだろう。
    「お金に縛られない」というのは自分の理想と似ている。自分自身、苦労してまでお金が欲しいとは思わないので。
    だったら節約能力を身につけ、無理しない程度に働けたらいいなと思ってしまう。
    一つのものに固執せず、複数のモノ・人・居場所を持つことは、いざという時の逃げ場所になる。

著者プロフィール

一九七八年大阪府生まれ。作家。著書として『どこでもいいからどこかへ行きたい』『しないことリスト』『夜のこと』『人生の土台となる読書』など多数。大学生のときに京大短歌会に少しだけ参加。第5回笹井宏之賞では最終選考に残る。文学系ロックバンド、エリーツの一員としても活動。東京・高円寺の書店、蟹ブックスでスタッフとして勤務している。

「2023年 『おやすみ短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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