あるヤクザの生涯 安藤昇伝

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037250

作品紹介・あらすじ

最大の武器は知力と色気、そして暴力!                             特攻隊員、愚連隊、安藤組組長、映画俳優……
昭和の一時代、修羅に生きた男の激動の生涯をモノローグで描ききる圧巻のノンフィクションノベル!     


あんた『雪後の松』という詩を知っているかい。昔、ある坊主から教わったんだ。『雪後に始めて知る松柏の操、事難くしてまさに見る丈夫の心』とな。男というものは普段の見かけがどうだろうと、いざと言う時に真価がわかるものだ。松の木は花も咲かず暑い真夏にはどうと言って見所のない木だが、雪の積もる真冬には枝を折るほどの雪が積もっても、それに耐え、青い葉を保っている。それが本物の男の姿だというのだ。/俺はこの詩が好きなんだ。
(「長い後書き」より)

感想・レビュー・書評

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  • 本屋で何度も見かけて気になっていたので読んでみた。
    文字数も少なく1日で読み終えた。

    「男の最大の武器は知力と色気、そして暴力」
    まさに昭和のお話ですな。

  • つまらなくはないが、俺の一人称と石原慎太郎が書いているということが脳内で混在してよくわからない気分になる 憧れて、こういう男になりたい(なりたかった)という願望も半分入ってる気がする

  • <慎>
    巻末に”長い後書き”という題をつけてあとがきが載っていた。僕の様に最初に後書きを読んでしまう天邪鬼な読者をけん制しているのだろうか。しかもいきなり "顰蹙" という読めない漢字でもって僕ら大衆を嗤いとばしているようにも読めるし。
    この難漢字。ネットの手書き漢字辞典を使って20分以上掛かってようやっと読むことが出来た。なので,こうやって活字でここに表記出来ているのだが,読めさえすればその読みから漢字変換するのは造作もなかった。意味もしごく一般的なものである。この言葉にどうしてこういうむづかしい漢字をつかうのだろう。恐らく著者自身がどこかでこの漢字に出会ったことがあり,その時今の僕と同じ様に読めなくて苦労したからではなかろうか。だからと云って僕は本件で覚えられたわけではないだろうし,この先使ってみる気もないが。すまぬ。

    ・・・ところが,である。この ”顰蹙” 実はその ”あとがき” のあとに読んだ本文にはちゃんとフリガナ付きで出て来るのである。僕は愕然とした。先に後書きを読む僕が悪いんだと(本稿の)再考に掛ったが,いや待てよこれはいわゆるネタになるなあ,とまたもや馬鹿な素人考えが浮かんできてしまって,先の文章になってしまった。
    あらためて著者には慎んでお詫びいたします。はなから石原慎太郎氏に僕ごときが喧嘩を売れるはずもなかったのだ。慎のすまぬ,である。

  • 敗戦という価値観のどんでん返しが起こって、
    日本が無法地帯化した時に現れた愚連隊。
    その中で伝説的だった人物が安藤昇です。
    その人物をなぜか石原慎太郎が私説小説化しています。
    一気に読んでしまいました。

    私は、なぜ石原慎太郎が、この人物を取り上げたのか、考えました。
    今日本は、敗戦前夜にあるではないか、そして、再度、
    日本人が絶望の淵に追いやられ、正確にいうと、無思考のまま、自ら自滅するように動きをし、
    また多くの人が犠牲になるではないか?という危惧が、
    石原慎太郎にあるではないかと考えました。

    そのような状況の時に何が参考になるか?
    その答えが、「安藤昇の生き様」ではないかと。
    この著書の前には、田中角栄を取り上げています。

    日本は明治維新(1867)から約80年後、
    大日本帝国というシステムが崩壊しました。
    そのシステムによって、300万人が犠牲になりました。
    その犠牲があったことさえ、今は風化しています。
    正直、犠牲になった人は、一体何だったんでしょうかと、思いますし、
    高度経済成長期からバブルの繁栄の時に、今の繁栄は、
    多大なる犠牲によって成り立っていると感じをした人がいたでしょうか?と思います。
    今の日本のどうしようない状態は、「そのツケ」を払わされているような印象を持ちます。

    歴史を「知らない」、「学ばない」、「わからない」、なぜなら、戦争は「怖いから」と、
    そんな「軽ーい感じ」が少なくない日本人の意識の中にはありますが、
    もうシャレにならない状況になっていると思います。
    もちろん、先の大戦と同じで、自滅に向かうパターンです。

    石原慎太郎は、戦後派と呼ばれる、戦前は「天皇万歳」から、戦後は「アメリカ万歳」という強烈な変化に対して、その筆舌尽くしがたい「日本(人)への違和感」と「過去の歴史を忘却する日本(人)」に対して、文学というツールを使い、カウンターカルチャーとして体現した人です。好き嫌いもちろんありますが、フニャフニャしていない日本人という点で、私なんかは好感を持っています。

    1945年から戦後民主主義が動き出し、もうすぐ80年を迎えるコロナ禍の日本。
    そのシステムでさえも今はガタガタになっているような気がします。
    何かこの80年というのは、社会システムが崩壊する、または新しいものとなる、
    一つの指標として重要な期間かもしれません。人の一生の時間と近いことにも、何か理由があるのかもしれません(戦前はもっと短い時間でしたが)。

    今、日本人が戦後築き上げてきた社会システムが、多くの人の命を奪っているように思います。
    よもや、システムの奴隷になっているような印象です。
    主体的に生きることが難しく、何かに所属していないと、何もできない、考えられなくなってしまう、
    日本の奇妙奇天烈な戦後民主主義は、今、終わりを迎えているのかもしれません。
    もちろん、その恩恵を受けている人は必死にそのシステムの中にい続け、そのシステムに依存しますが、
    敗戦時の状況を知れば知るほど、それは、百害あって一利なしとわかります。
    今の小学生の夢が、会社員で、大学生の希望の職業が、公務員ということからも、
    もう日本は、手の施しようがない状態になっているとわかります。
    コロナ禍の前の就職したいTOP10位の会社、その半分以上が、今倒産しかけています。

    戦前は、猫も杓子も、戦争、戦争、勝利、勝利と叫んで、
    絶望的な戦争に突入していたことと、
    戦後は、自由、人権、民主、戦争反対!と叫んで、
    わけわからず、経済的な戦争、つまり、金、金、金になっていたことと、
    表面的には異なりますが、底流を流れる日本人の行動原理は、
    戦前、戦後も全く変わっていないように思います。
    つまり、よく考えていないで他人をキョロキョロみて行動しているということです。

    無規範化した今の日本人は、まるで敗戦時のようです。
    社会が崩壊する前に、日本人が、今ぶっ壊れようとしています。
    そんな状況で安藤昇の生き様は参考になるかもしれません。

  • 悪くはない。
    表題のとおりヤクザの伝記なのだが、ボリュームがたりないのかな。
    力道山との関わりや嵯峨美智子との恋愛など赤裸々に描かれており、また、主人公が70歳超えてからどのように感じだしたのか正直に語られているところがとても好感がもてる。でも、もっと奥深い思いがあるのではないかと思う。少し消化不良

  • 一気読みでした。石原さんの文章力もすごいなぁと再認識。

    喧嘩三昧の幼少期から、特攻隊への入隊、極道と波瀾万丈だけど、決してクスリはやらなかった点や、子分の死をキッカケに極道から足を洗って、、、
    映画の脚本を作り、出演したり、晩年は八丈島で余生を送るなど、すごい!の、一言。

  • ー安藤昇という男の暴力に裏打ち彩られた生き様に、人生における人間にとっての暴力という誰しもが潜在的に嗜好する、否定しきれぬ極めて人間的な属性の意味合いを感じぬ訳にいかなかった。

    石原慎太郎が描きたかった事を努めて想像する。こうした暴力の魅力に生きた人物を記録しつつ、しかし、数ある安藤昇列伝において敢えて薄く焼き直したような中身にどのような意味があるのかを深読みすれば、恐らくは、石原慎太郎自身と安藤昇や喧嘩師花形敬、幹部西原健吾との出会いを描きたかったのであり、文中でも特に彼らにスポットライトを当てた。更には、拳銃相手にドスでは敵わない自然の理屈を、アメリカの核は日本の傘になり得ない自らの沖縄返還時のアメリカ基地見学体験で実感した核保有論者としての主張を、安藤も同意した事で語らせたかったのか。

    暴力を美化するのは気にくわない。しかし、その光と影において潜在的嗜好という絶妙な表現はまた、石原慎太郎らしいと感じる遺作であった。

  • 石原慎太郎による安藤昇の実録、大変面白かった。

  • 安藤昇について全く予備知識なく読んでみたもの。横井英樹襲撃事件というのは耳にしたことがあるワードだったが、中身はよくわかっておらず。。慎太郎さんはご高齢ですが、さすがの筆力で、物語としては楽しめた一気読みでした。

    会社からいつも見るプレデンシャルタワーが、火災事故のあったホテルニュージャパンの跡地だったことも今更、認識。

  • カッコ良すぎる!
    安藤昇の本読みまくる!

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著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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