霧をはらう

著者 :
  • 幻冬舎
3.84
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本棚登録 : 1169
感想 : 135
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037946

作品紹介・あらすじ

『火の粉』で裁判官の葛藤を、『検察側の罪人』で検事の正義を描いた
雫井脩介が問う、弁護士の信念とは? 作家デビュー20周年を迎えた著者の渾身作!

病院で起きた点滴死傷事件。
入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。
逮捕されたのは、生き残った女児の母親。
人権派の大物弁護士らと共に、若手弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む!

感想・レビュー・書評

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  • 霧をはらう‥‥これはとても大切なことなんだな、と思いました。でも、とてもとても難しい。
    この物語は裁判のお話だけれど、そんな大きなことでなくても、他人を自分の都合の良いフィルターを通して見てしまう、人とはそういうものだと思います。
    ましてや事件の容疑者ともなれば、どうしても先入観を持ってその人を見てしまうでしょう。
    そして味方がいない時に追い詰められたら人はどんなに弱くなってしまうのか、それが痛いほど伝わってくるお話でした。
    あぁ、どこまでも人は自分本位な生き物なんだなぁと思わせられました。

  • 同じ病室の子どもにインスリンが混入され、2人が死亡。
    逮捕されたのは、生き残った被害者の母親だった。

    決定的な証拠がない中、一度してしまった自白を、どうひっくり返すか?
    とても地道な弁護活動で、遅々とした展開。

    やっていないのに、つい認めてしまったり、誤ってしまったりする。
    人の弱さと向き合っていく。

    弁護士の伊豆原が、よかった。

    弁護士だから、供述を引き出すため、ではなく、人として向きあっていくからこその、すがすがしさ。
    心の交流に、あたたかみがある。

    被害者である、被告人の次女が明るく前向きなのも、救い。

  • 久々のリーガル物!
    中盤まで丁寧な人物描写のせいか、なかなか話が展開していかなくて、ちょっともどかしくはありました。
    だけど終盤のたたみかけが凄かった〜

    冤罪の話で「霧をはらう」のタイトルに納得。
    冤罪ってこういう風に作られていくのか〜とちょっとゾッとした。
    それにしても犯人として捕まった母親が苦手なタイプだったな〜
    そのせいか全然、悲愴感なく読めました笑

    あと消化不良だったのが痴漢事件と主人公の職場の話。
    胸糞悪い人達(アイスクリーム男、しらばっくれおばさん、嘘つき看護師)が出てくるんだけど、なんかそんなにお咎めなしでサラッと終わっちゃってびっくり!
    もっと、こてんぱんにやっちゃって欲しかった〜
    面白かったんだけど、個人的にはちょこちょこツッコミどころのある作品でした




  • 99.91%有罪と見做された中で、
    依頼人の無罪を掴み取るために
    若手弁護士が挑む法廷での戦い。

    国選弁護人を引き受けた伊豆原弁護士は
    被告人にかけられた霧をはらい、
    真実を明らかにできるのか。

    巧妙に隠された真実に迫り、
    最後まで息つく間もないです。

    ああ、読み終えれてよかった、
    次の目標は検察側の罪人です。

  • かなり久しぶりの雫井さんでしたが素晴らしく面白かったです。仕事柄、弁護士の方とお話しする機会も多いのですが、金儲けのためだけじゃなく伊豆原さんのように困った人や正義のために仕事してもらいたい。もちろん良い方もたくさんいらっしゃると思っていますが。

  • 雫井さんの文章は本当に綺麗で、読みやすい!

    ストーリー展開も無理なく、現実的、なのにページをめくる手が止まらない。。
    味があり、心に染みる素敵な作品でした。

  • 最後のどんでん返しが、想定外ではありましたが許容範囲なので
    気持ちよく読み終えました。
    (めちゃくちゃ飛躍しているわけではない)

    法曹界と医療業界がよくわかって面白かったです。
    私は高校生位まで努力しないわりに「大人になったらなりたいもの」がたくさんある少女だったのです。
    もし当時この本を読んでいたら間違いなく
    「弁護士になりたい」と思ったでしょう!

    そして北風より太陽のような大人の姿が
    頑なな由惟の心を動かしたのですね。
    自分はそんな大人でありたい。

    それと、自分がやっていないなら絶対に
    「私がやりました」と言ってはいけません。
    この先何があるかわからないから、しっかり覚えておかなくては。

  • 読み終えてすぐにこのレビューを書いてる。
    感動や思いが薄れない内に。

    この物語の主人公は二人。
    お金にならない案件ばかりを取り扱う事になる、人の良い弁護士の青年と母親が殺人の罪に問われている10代の少女。
    病院の4人部屋で、点滴にインスリンが混入され、2人の子供が死亡、1人は重体となる事件が起きる。
    被害にあった子供の一人は、事件の犯人とされた女性の子供だった。
    その母親は、事件の前に看護ステーションに出入りしており、事件が起きてすぐ、自分の子供の点滴を止めるという行為をしていた。
    その後、ミュンハウゼン症候群の疑いありと診断され、自供もしている。
    そんな不利な裁判をくつがえそうと立ちあがった弁護団の一人から誘われ、主人公の弁護士もその中に加わる。
    本当に、その母親は犯行におよんだのか、それとも別に犯人がいるのかー。

    ここで泣かそうとするんでしょ・・・という場面で泣いてしまった。
    それはその場面に感動して・・・というのでなく、それまでのストーリーを読んで、その登場人物の事を考えて流した涙。
    強烈に、健全な精神性というものがいかに貴重か、その人物の事をずっと見ていて感じた。
    今の時代、そんな当たり前のような事がいかに難しいかが自分の経験を通して痛いほど分かっている。

    人はどんな強い人だって、他に味方がいない状態だと弱い。
    弱くなると人は狡い事もするし、黙ってしまう。
    本当の事を言えなくなる。
    それがどんなに自分を傷つけてしまうかー。
    そんな人を最近、身近に見て、自分もそうだから実感した。
    中には、傷つかない人もいる。
    それは心が無い人。
    それ以外の人は自分の心を壊してしまうし、思考停止に自ら陥る。
    同じ人間だって、状況次第では強くもなるし、弱くもなる。
    だから、誰にでも正義や勇気をもてなんて、声高に言うのは見ていて気持ち良くない。

    私はいつも雫井さんの本を読んで、この人の書く人物が好きだな~と思う。
    好感をもてる登場人物が考えたり行動する様は見ていて気持ちがいい。
    だから、本全体からも好感をもてる。

    この話は、最後思いもしないような真相も描かれていて、その部分でも素晴らしいと思った。
    この本は誰にでも薦められる、素晴らしい本だと思う。

  • 刑事裁判の有罪率は99.9%。起訴されたらほぼ有罪になる、ということ。
    裁判員裁判においては特に無罪判決は出にくいという。
    有罪かも知れない人を無罪にする、というハードルは、無罪かも知れない人を有罪にするよりも高いのだろう。わかる気もするが、そこに「疑わしきは罰せず」は存在しないのか。

    病院内で起こった点滴死傷事件。入院中の4人の幼い子どもたちの点滴に異物を混入した容疑者はその母親。
    誰もがその罪を確信する中、無罪を信じて奔走する一人の弁護士。

    そこにあるのは冤罪か。0.01%の無罪か。
    手に汗握る法廷劇。正義は霧をはらえるのか。若き弁護士が開いたのは人の心と真実の扉。
    予想を超えた結末に思わずうなった。

  • 入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。逮捕されたのは、生き残った女児の母親。 個々の登場人物が、深く描かれており、最後の一捻りもあり、500頁も一気に読まされた。映画かテレビドラマになりそう。傑作でした。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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