わたしにも、スターが殺せる

著者 :
  • 幻冬舎
3.38
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本棚登録 : 155
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344041066

作品紹介・あらすじ

《エンタメは必要じゃないかな?》《誰か補償してくれるの?》コロナ禍、不用意な発言をしたスターをSNSで追い詰めるこたつライター。“殺される”のは、誰なのか? “自分”も加担していないと言えるのか?

時代の気分を大きく左右したコロナ禍の大衆の心理を生々しく炙り出す、息もつかせぬサスペンス!コロナ禍、SNSで不用意な発言をした2.5次元俳優・翔馬。これまで【M】と名乗り彼を「上げる」記事を書いていた平凡なこたつライター・真生は、その発言を捉えて彼を「叩く」方へ転じる。彼のファンは大反発し、【M】を炎上させる。しかし程なく流れが変わり、コロナウイルスに危機感を抱く世間が、一斉に翔馬を叩き始め、スターは“殺された”。高揚感が抑えられない真生だったが、以前から【M】の正体が真生だと知る何者かに、自宅マンションを晒されたり、脅迫のような郵便物が届けられていた。半同棲の恋人・春希と共に嫌がらせの犯人を突き止めようとする真生だったが、浮かび上がったのは意外な人物だった……!

感想・レビュー・書評

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  •  ヒロインはこたつライター(取材もせず、ネットなどの情報だけで記事を書く人)で、ある2.5次元俳優の秘密を知っているといえことを活かし、ある記事をきっかけにバズる。

     しかし、コロナ禍で、2.5次元俳優がツイートしたことをきっかけに応援から批判に転じ、まさに記事1つで社会的に殺しにかかるお話。

     実はその時の気分だけで持ち上げたり、叩いたりすることができるSNSというものがどういうものなのか、改めて考えさせられる作品です。

     読んでいて、3年前のコロナで初めて緊急事態宣言が発令されたときのことがもう既に過去のことになってしまったなと思うことです。

     喉元過ぎれば熱さを忘れるというのもあるなと思うくらい、私自身、当時の異様さというのを完全に忘れてました。そういう意味では当時を思い出すということの意味も含め、本作はなかなか有意義な読書になるのかなと思います。

     本作を読んでいて思ったのは、実名や実際に本人としてSNSを活用している人は別として、匿名で活動している人の炎上やバズリがリアル生活に大きく影響してしまうことや、バズるとなぜか調子にのってしまうことあるよなぁと思いながら、それはなんでだろうなと思いました。

     実はヤフーニュースのコメントやSNSでコメントするときっていうのは、一時の感情に流されて書いてるはずなのに、その感情に流されて書いたものの受け手はいろいろ考えてしまいますし、そのコメントが大量に集まるだけでなぜか社会的に殺されてしまうことがあるという凄いツールだよなと改めて思います。

     そして、実際にリアルの生活を攻撃されたわけでもないのに苦痛を感じてしまう。作中のSNSに疎いお母さんが直接攻撃を受けたわけでもないのにと言ったのもわかるような気がするのですが、ネットで炎上するとなぜか物凄くダメージを受けた気になるんですよね。

     場合によっては何の素性もわからない一般人が有名人を攻撃できてしまうのがSNS。きっと攻撃して反響を得た側の気持って正義感もあるでしょうが、愉快なんだろうなぁとも思いました。

     SNSというのは怖いといえばそれまでですが、きっと怖いだけでは片付けられない説明できない何かがあるんだろうなと思わされました。

  • コロナに触れている部分は共感しかない。
    なにがどうなったら"おわり"なんでしょうか。
    きっとそれは、世の中の大きな空気の流れであり
    世の中の『気分』なのでしょう。
    これはただの感想です。

  • 自由とか空気ってすごく便利だけれど変わりやすい。
    風船みたいにふわふわ浮いてすぐ弾ける。
    まさに水物。

  • まずは読了後、ほっとしたというのが一番の感想か。
    いわゆるコタツ記事と呼ばれるライターと、駆け出しの俳優、ひょんなことから有名人になった人、それから一般人によるSNSやメディアによる発言とそのコメントによる浮き沈み。
    熱烈ファンや批評家、面白おかしく眺める一般閲覧者、コロナ禍にはマスク警察や自粛警察など歪んだ主張が蔓延して、何気ないひと言から息もできないくらいの批判がくるリアルな現状を見てきた。
    一時期違う恐怖を感じてた、それを思い出した。
    また正義が変わる時がくるのを信じて齧りついて生きていく。
    212冊目読了。

  • コロナ禍、エンタメ業界、ライター業。
    コロナ禍で見えてきたもの、失ったもの。
    SNSで発信することについて考えるいいきっかけになった。

  • ネット上で軽く読み流せる記事を書く「こたつライター」の真生は、「M」の名前で新人俳優の鈴木翔馬についての肯定的な記事を書くことにする。彼女は人気が出てきた鈴木翔馬のとある事情を知っており、そのことから「M」の記事は鈴木翔馬のファンからも注目を集めることになった。しかし新型コロナウィルス感染症による世の中の変化、それに伴っての鈴木翔馬の不用意な発言を批判した「M」はファンからのバッシングを受ける。やがて真生のもとに怪文書が届き、彼女は見えない影に脅かされることになるのだが。誰にでも起こりうるかもしれない、現実感に富んだサスペンスです。
    ネットが普及して誰もが簡単に自分の主義主張を表明できるようになった世の中で、こういうことは起こりがちです。だけれどそれをどこまで重くとらえるべきなのか。ちなみに「こたつライター」ってのは知らなかったのですが。これも話題性と軽さが求められる分、読み流すべきであって深刻にとらえるものではないのか……それなのにそんな記事に振り回され、一斉に攻撃する相手を見つけようとする人たちの姿が滑稽なような、怖いような。
    そして意見と感想の線引きをせずに他人の言葉を受け止めてしまい苦しむのは、真面目な人の方なんでしょうね。発言する方は歯牙にもかけていないのに、ちょっとしたその言葉が本当に人を殺せるものだということは、現実でもあったことですよね。この物語の中でも、ネット上以外でそれほどたいした事件が起こっているわけではないのだけれど、とても恐ろしく感じられました。

  • 意見と批判と同じに考えているのか思っている事を口では言えないけどその他大勢という枠に守られて考えなしで送信する。
    みんな全てにおいて平等なら嫉妬もひがみもなくなるのにと幼稚な考えを持ってしまう。

  • 現代の生活にはかかせないSNS。
    SNSの発言をある時攻撃される。読んでいて怖くなった。

  • 流石に鈴木翔馬はスターと呼ばれるには若過ぎるな

  • 2023.7.9

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著者プロフィール

藤井清美 (ふじい・きよみ)
1971年生まれ。徳島県で育つ。筑波大学在学中に舞台から仕事をはじめ、映像の脚本でも活躍。近年挑戦している小説では、大学で歴史学を学んだ経験を活かし、綿密な調査と取材を強みとする。舞台では小劇場から大劇場まで多くの作品を発表。『ブラックorホワイト? あなたの上司、訴えます!』(作・演出)など。ドラマ・映画のシナリオでは恋愛ものからサスペンス、スケールの大きなアクション作まで手掛ける。「相棒」「恋愛時代」「ウツボカズラの夢」「執事 西園寺の名推理2」(以上ドラマ)、「引き出しの中のラブレター」「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」「るろうに剣心」シリーズ、「見えない目撃者」(以上映画)。小説では『明治ガールズ 富岡製糸場で青春を』「偽声」『京大はんと甘いもん』。

「2020年 『#ある朝殺人犯になっていた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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