- Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344419018
感想・レビュー・書評
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再読。
同じぐらいの時期に発表された作品(あるいは同じぐらいの時期を扱った作品)には、当然ながら同じ人をモデルにした登場人物が登場するので、黒木亮ファンとしては、そのような読み方も乙かとおもわれる。
本書に登場した女性の財務官僚は直前に読んだ『獅子のごとく』に登場するし、『獅子のごとく』の主人公は、本書ではモデルの人物が実名で登場する。
閑話休題。
前職で債券発行の部署におり、ムーディーズやらSPから格付け取得で仕事をしたことがある。すでに何度も発行してきていたということもあり、この本に書かれたようなひりつくやり取りがあったわけではないが、格付け会社の特異な位置づけは、当時から腑に落ちない部分もあったことは確かだ。あなたたち、私の何を知っているの?と。
黒木氏の金融系小説には必ず登場する、金儲けしか考えないアメリカ人、それになりきろうとする日本人、そして反対に、それに必死で立ち向かう日本人が、ここでも登場する。勿論最後の人にあたたかな視線が注がれるのも黒木流だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(上下巻合わせてのレビューです。)
骨太小説。
こういう小説は、読む前に少しためらいがありますが、
いざ読んでみると面白すぎてあっという間に読んでしまいました。
この小説は、格付け会社を中心に日本の(そして世界の)マーケットの歴史をざっと振り返ることができる本。
それが小説になっているのだから、いわゆる経済系の本より数段読みやすい構成になっています。
(一部、本名をぼかしてあります。)
ちょうど、山一證券破綻のドラマを見ていたので、
色々な方向から日本経済を見るきっかけになりました。
今、ちょうど高い理想(社会を)と
こんなに面白い小説なら、もっと早くに読んでおくべきでした。 -
山一証券の破綻、エンロン事件、リーマンショックなどの現実に起きた事件を、格付け会社の目線で描いた、事実に基づいた物語。
「依頼格付け」と「勝手格付け」、発行体の信用力が国の信用力にキャップされてしまう「カントリーシーリング」、MBSやCDOなどの証券化商品など、分かりやすく説明されているので知識がつきます。
そして、臨場感ある格付け委員会の描写、なるべく低利で資金調達したい発行体と、なるべく高利で金を貸したい投資銀行、その間に立たされる格付け会社の立場、格下げをすると発行体から容赦なく非難される、他の格付け会社よりも高い格付けをすると営業上有利になる投資家を無視した格付け会社の利益相反な行動原理など、格付け会社のリアルも色々知ることができます。
「格付けの深層」もよかったけど、小説で知識を得られるという意味では、こっちもおすすめです。
著者の本は、実名とそうじゃないのが混じっていて、ちょっと分かりづらいのが難点ですが。 -
格付けについて良い勉強になった
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難しい話なのにとても容易に理解できるよう、工夫されて書かれていて、とても面白かった。
合間に障害を持つ子を持った夫婦の話が入るところも、「ザ・金融小説」感を薄らげていて程よい。 -
物語に展開が無いな~。ただ淡々と出来事をつみ上げていく感じ。
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格付に携わる三人の視点を通して、1984年のバブル景気から2007年のリーマンショックに至るまでの金融業界の興亡を描く。下巻は内容が若干難しくなってきた(それはそのまま金融商品の複雑化を示すと思うが)ので、テンポは落ちる。金融のことなんか全然分からんが、エピローグのやり取りから、作者の日本愛と、それゆえの厳しいメッセージが伝わってくる。なかなかに熱い一冊。
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サブプライムバブルまでほ格付会社の歴史を辿る上下巻。メモ。(1)我々の顧客は投資家である。迷った時や疑いのある時は、投資家の為になるかどうかで判断せよ。(2)私の今のシナリオは今後七八年は国内で借換が出来る。その後は海外で発行をして凌ぐ。十二三年後に海外でも国債を発行出来なくなって壁に衝突する。そして一九七六年のイギリスみたいに、IMFに介入され、尻をひっぱたかれながら再建を目指す…。
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格下条項や国債の記述は流石。
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格付会社を題材にしている経済小説。
ニッチなテーマではあるけど、今の私にとってはどんぴしゃのテーマで、
日本に格付会社がやってきた1985年ごろからリーマンショックまでの金融史と一緒に学べて非常に面白かった!!
これぞ小説の力。