往復書簡 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 13813
感想 : 975
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344419063

感想・レビュー・書評

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  • 手紙のやり取りを通じて過去の事件の真相が明らかになっていくという、書簡形式の連作ミステリです。

    スマホでのメールや電話ではなく、あえてコミュニケーションに時間の掛かる手紙でのやり取りという、時代を感じさせるスタイルで展開されています。
    互いにじっくり考える時間のある事から、読者も一緒に思考を巡らせる事が可能であり推理に遅れを取りません。

    どの章も、登場人物のそれぞれの視点で事件の核心に迫っていきますが、どれも事実が明かされる過程は見事です。湊かなえ作品では珍しいのが、登場人物も癖が強くて「憎たらしい」人物がほとんどおらず、いずれの作品も読後感はすっきりとした気分になるのが心地よかったです。

  • ✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼手紙だからつける嘘。手紙だから許せる罪。手紙だからできる告白。過去の残酷な事件の真相が、手紙のやりとりで明かされる。衝撃の結末と温かい感動が待つ、書簡形式の連作ミステリ。
    ✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼••┈┈┈••✼
    手紙のやり取りだけ
    ①7人全員が手紙のやり取りをするのかと思って、誰が誰に送ってるのか把握しなくてはと構えてしまったけどそんなことはなくすぐ慣れた。
    10年でそんなことになるか?と思ったりもしたけど、ラストは思いがけなくて面白かった。
    ②入院中の教師が6人の教え子たちの近況を知りたく、教師となった教え子に調べてもらう話。その6人は過去にある事件に関わってた子たちで、最後に訪ねた教え子が事の始まりだった。
    吉永小百合主演の「北のカナリアたち」の原作
    これとは内容も違いそうだし映像も見てみたい
    ③郵便が届くまでに20日間かかる地との文通をする2人のほっこりした遠距離恋愛の話かと思ったら、やっぱり違った。2人で触れないと決めた過去の事件の真相が明らかになってく。

    どの話も面白かった
    手紙のやり取り最近しなくなったな

  • 人の本音を書簡を通じて表現した短編3作品。
    10年後の卒業文集については、私自身、中学時代に友人の自転車に後ろから自転車で突っ込んで怪我をさせてしまったことを想いだす。後ろからだったのでその友人は私がぶつけたことに気づいていなかった。7年後の大学の飲み会で、その友人には真相を明かして笑い話にしてくれた。誰もがそれに近い経験をしているのかもしれない。
    そして、人間は万能じゃない、だから人の言動は本人しかその本当の意味はわからないものである。

    二十年後の宿題は、6人の教え子の近況を知ろうと、元教子の教師に依頼するところから始まる。彼ら7人には共通の出来事があった。そしてそれぞれのその出来事に対する気持ちが明らかになっていく。
    子どもの時の出来事は生徒たちに陰を落としていると先生は思っている。
    知らない方が良い事も多々あるが、本編は知ってよかったのだと思えた。

    15年後の補習では、中学時代から15年付き合っている2人、国際ボランティアの彼との書簡。15年前の事故により、友人を亡くしたが、その真実が語られる。更にその先の真実も明かされる。そして最後は。予想外の展開だった。

    一年後の連絡網、それはこの物語の後日談、全てが収束する。素敵な気持ちにさせられた。

  • それぞれの視点によって、先生の印象が変わることで話がややこしくなっていく。
    見えたものを見えたようにしか話していなくても、見え方が変わると、間違ったことを誰も言っていなくても話が食い違う。
    手紙のやり取りというスタイルも新鮮で良かった。

  • 手紙のやり取りのみでストーリーが進んでいく。こんな形の小説に出会ったのは初めてだったが、作中に出てくる「メールを打つときとは違う気分で、自分の気持ちを表現出来そうな気がする」という言葉のように、言葉が交わされながら進んでいくストーリーとはまた違った感情移入をしていたと思う。

  • 手紙のやり取りで綴られる短編集。
    一話) 行方不明の友人の足跡を辿るため、高校の友人へ手紙を書き高校時代に起きたこととその後を振り返る。いつも一緒にいて全てを共有していた仲良しグループではあったが、それぞれの見ていた景色もそれぞれの心の中も、実はあまりに違っていた。

    かつての恩師から、忘れられない子供たちに直接会って、先生から各々へ宛てた手紙を渡すことを依頼される。

    湊かなえの小説は人間の闇があらわになって怖い。

  • タイトルから想像できるとおり、物語は手紙のやり取りを通して綴られています。
    私は筆まめではないけれど、手紙が好きです。
    なかなか返事が手元に届かないのがいい。ゆっくりと待つ時間は今の時代、かえって貴重な気がします。

    手紙だから言えること、偽れること、明かせることがあって、それを余すことなく活用しています。
    静かなトーンは湊さんらしくありながら、あまり毒がなくて安心して読めました。内容は軽くないはずなんですけどね。

    4編の中では、「20年後の宿題」が一番印象的でした。
    どうして大場くんに白羽の矢が立ったのか、最後になってわかるのですが、なんともまあ自己中心的な手紙もあったものだ、と読み返してみると思います。
    それどころか、少し見方を変えると誰もかれもが自己中心的。そして、それは大抵悪気がない。悪気がないからこそ、かえって厄介で、なんでもない時ならさらっと流せるような自己中心さも、ひとたび大きな事件が起これば見過ごせない傷になるようです。

    通常は見えない何かを、目線を変えさせることで気付かせるのが日常ミステリーだと思っています。
    時間が経過して物事の捉え方が変わることによって気付くものもありますし、手紙を通してうまく読者に新たな目線を与えてくれた気がします。
    最後の短編のおかげで少し明るい未来も垣間見えて、珍しく読了後心がざわつかない読み心地でした。

  • ◯でも、ありがとうって受けてもいいんじゃないかって思った。それで、いつか返せたらいいって。単純だろ、卵焼き一つで。(133p)

    ★短編が4つ。いずれも、二人の人物が交わす手紙で物語が進行する。手紙だから延々一人語りになる。往復される手紙で徐々に真相が明らかになっていく。

    ★一つ目の話は、友だちのふりをしながら、相手のことを全く信用していないのに、情報は引き出したい、という駆け引きみたいなやり取りが気持ち悪かった。

    ★二つ目の話は、関係者の証言により明らかになっていく事実によって、事件の見え方がどんどん変わっていくのが面白かった。

    ★三つ目の話は、本格サスペンス+純愛のストーリー。まるで宮部みゆきさんのような。

    ★4つ目は今までの登場人物の名前が出てくる、ごく短いエピローグのような話。

  • 書簡で真相が明かさせれる短編ミステリー。
    印象に残ったのは「15年後の補習」ラブラブな文通のはずが破局に至る展開に、終局がとても気になり夢中で読みました。結局、二人の思いは一生完全には癒やされることはないのだろうけど。書き下ろしの「連絡網」はなくてもよかったかな。
    「20年後の宿題」は最後に明かされる、書簡のきっかけか微妙で「同情されずに彼に事故のことを知ってもらう方法」として迂遠過ぎるし、結局彼氏には骨を折らせ自分に会いにこさせることを考えるかな、と冷静に考えてしまいましたが、フィクションとしては面白い着想かな、とも。最後の手紙は本当に大場さんなのか疑っていまいました。
    「10年後の」はちょっと凝りすぎかな。
    とはいえ、いずれも楽しめました。

  • メールでも電話でも、もちろんLINEやSNSのDMでもなく手紙でのやり取りで語られるお話。

    声が聞きたいと思ったら電話がある。連絡を取りたいと思ったらメッセージを送る手段がたくさんある。その中で、あえて手紙という手段を使うことが、今この世の中でどれだけあることなのだろう。
    そんな手紙だからこそできるトリックがあって面白かった。

    個人的には、湊かなえさんの作品にはドロドロとしたものを求めがちなので…結末が見えてしまう本作は少し流し読みしてしまった。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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