七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344423053

感想・レビュー・書評

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  • そろそろ該当年齢に近づこうかという読み手にとっては、その刺激的なタイトルに、思わず引き付けられてしまう(笑)。
    日本人は七十歳で死ぬことになるという「七十歳死亡法案」が可決され、その施行が2年後に控える日本。しかし、ここでの主要なテーマは、法案よりも主婦の家事だろう。介護問題に、ひきこもり、ブラック企業も俎上に載せられる。
    姑の介護を一手に引き受けている主婦が、主人公。
    介護されている姑はわがままで感謝の気持ちもない、夫は自己中で家庭のことは妻に任せきり、息子は就職で失敗し引きこもり、娘は自由を求めて家を出て一人暮らし。
    そんな家族に愛想をつかし、主婦は家出。
    それがきっかけで残された家族は・・・
    著者は、深刻で悲惨なテーマをユーモアで包み込む明るい筆致で、読後感の良い物語に仕上げている。

  • 世の中には2種類の人間がいると思う。介護する人と介護しない人だ。介護しないで家族の誰かに押し付けるのではなく、介護は外注するのがスタンダードになればいいのになと思った。介護は子供がやって、嫁がやって当たり前ではないよね。介護は外注する。そして口から食べれなくなればそのまま枯れるように死んでいくのがデフォになればいいのに。日本の終末期医療は狂っている。変えていかないと若者の人生が高齢者によって搾取されていく。

  • 七十歳死亡法案が可決され、2年後に施行されることになる。自宅で義母の介護を一手に引き受けている東洋子は、その日を心待ちにしていた。

    ワンオペ在宅介護で押し潰されそうな東洋子、同居しながら自分事として介護を受けとめていない夫、引きこもりの中年息子。
    東洋子が家出してからは状況が一変。あれよあれよという間にみな好転して、鼻白む。お仕事小説もかくや。オチに至ってはなんともはや…
    エンタメとして読み心地はいいが、釈然としない。

  • 政府が「七十歳死亡法案」を強行採決した。
    施行まで二年。
    義母の介護を十年以上も続けている主婦の宝田東洋子は、法案が可決され介護生活に期限が設けられたことで、何とかくじけそうな心を支えている。

    垣谷さんの作品に登場する男性は、どうしようもない人が多い。
    この作品の夫も息子も、読んでいて嫌な気持ちになる位に勝手だ…。
    でも、東洋子自身もそれを当然のように受け入れている。
    昭和の古き時代の家庭という感じ。

    七十歳になると何種類かの安楽死の中から、自分で方法を選べるというとんでもない法案により、世の中の人達があれこれ言い合い、新しい考えが生まれたり、衝突が生じたり。
    施行までの二年間を東洋子の家庭を中心に描いていて、垣谷作品っぽく読みやすかった。
    最後は何となくうまく収まるところも、出来すぎ感がありつつ、安心できるとも言えるだろう。

  • ものすごくインパクトのあるタイトル!

    垣谷美雨さん。
    まだ8冊しか読んでいないけれど、好きな作家さん。
    インパクトのあるタイトルの本、そんな設定あり?と思う本、熱い本、等々。
    面白い!

    今まで読んだ本は(読了順)
    1.リセット
    2.あなたの人生、片付けます
    3.結婚相手は抽選で
    4.if さよならが言えない理由
    5.あなたのゼイ肉、落とします
    6.農ガール、農ライフ
    7.老後の資金がありません

    そして、【七十歳死亡法案、可決】
    実はこの本、かなり前に古本屋さんで手に入れていました。
    が、
    なかなか読む気持ちになれずにいました。
    最近、ようやく気持ちが落ち着いてきたのでしょうね。
    気が付けば、読み始めていましたから…


    2020年2月、『七十歳死亡法案』が可決された。
    これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならなくなった。
    例外は皇族だけ。
    施行は2年後の4月1日。

    冒頭に、法案可決の週刊誌記事。
    ものずごい設定だ、と驚きつつ読み始める。

    84歳の義母を自宅でたった一人で介護する東洋子(とよこ)55歳。
    58歳の夫。
    一人暮らしをする長女、引きこもりの長男。

    この家族が直面する問題。
    2年後の法案施行に向け、5人の心には変化が。

    タイトルから想像していた内容とは違った。
    少子高齢化問題、介護問題だけでなく、家族の問題、就職難やブラック企業等々、現代の生きにくさが描かれている。
    そして、70歳と言っても、誰一人として同じ状況の人はいない。

    絶望的な未来を暗示するかのようなタイトルの小説だけど…
    ラストはちょっと違う。
    良かった。
    まだまだ未来は変えられる!

    『七十歳死亡法案』
    現実ではこんなバカげた法律はあり得ないけれど…
    自分自身のこをちょっと考えさせられた。

    著者の垣谷さんは1959年生まれ。
    この本は2012年に出版された。
    すごいテーマの小説に挑戦されたのですねぇ…

  • 男と女、若者と年配者。
    お互い分かりあうことは難しいかもしれないけど、わかろうとすることが大事。
    男たちの発言でイラッとしたけど、ラスト、良かった。

  • 面白くて数時間で読めた。

    父親や息子がクソ過ぎてイライラした。
    けど、あんな感じで悪気なく本当に気づかない人達って多いんだろうと思う。

    我が家の旦那もそうだもんな。

    そして、意外とちゃんとお願いする前に諦めてる主婦達も多いと思う。

    私もそうだもんな。

    お願いするより先に自分がやった方が早いから。

    総理大臣いいね。
    大胆な発想で、国民の意識を丸ごと変えたという。
    寿命が決まるということは、命の、人生の大切さを改めて考えるきっかけになるもんね。

  • 職場のおじちゃんが貸してくれた。危機的な社会保障制度を救済すべく70歳以上の老人は安楽死させてしまおうという法案を強行可決。介護に苛まれる家族の実情を描いた本作品。
    介護に疲れ切った家庭はこうかんだなぁと俯瞰的に思うと同時に明日は我が身か⁈と危機感も覚える。
    伏線やらどんでん返しなんかはないけど、楽しめました^_^

  • 「七十歳死亡法案が可決された。
    これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならなくなった。例外は皇族だけである。尚、政府は安楽死の方法を数種類用意する方針で、対象者がその中から自由に選べるように配慮するという。<週刊新報・2020年2月25日号>」

    というブラックユーモアで始まる垣谷美雨ワールドに、はまってしまうわたし77歳。はじめは自虐的に読んでいたけれど・・・。

    物語は宝田家の「嫁」東洋子(55歳)がわがまま放題の姑(84)を介護して15年間。能天気な夫(58)、転職中なのに引きこもりの息子(29)、娘30は家を出ていて無関心、家族は手伝ってくれない孤立無援状態なのであったが、この法案が強行採決されてほっとしているところから始まる。
    だがその2年が待てなくなった東洋子は家出を決行。
    死亡法案によって後12年しか生きられないと思った夫は、早期退職して念願の世界一周旅行に友達と勝手に出かけてしまっている。寝たきりの状態のおばあちゃんの世話は引き込もり孫息子にかかってきて、祖母の娘たちも冷たい、姉も知らん顔、父は帰ってきてくれない。小金があるのに祖母は介護サービスは嫌だという。さあ、大変なことになった・・・。

    わかりやすくて、テンポがよくて、笑いながらサラッと読めてしまったけれども、本当だよね。

    解説(永江朗氏)にある
    「タイトルは刺激的で設定もいささか露悪的」「荒唐無稽ではあるけれども」 「長寿化は不幸の種のひとつ」「と誰もが心の底で思っている現実を突いている。」
    それと同時に
    「家事労働を貶めて」「家事労働に携わる働き手を忌避、買い叩く」を非常に明確に表しているのである。
    また、介護職の専門性への尊厳、待遇がよくならなければこれからの日本は無いのではないかと思う。

  • タイトルのインパクトと現代社会が直面している深刻な問題に切り込んだ内容に惹かれて、垣谷さんの作品を今回初めて読みました。
    とても面白かったし、読みやすかったです。
    語り手が複数いて、それぞれの立場からの考え方に寄り添える形になっていて、それぞれに自分では解決しきれない切実な問題を抱えていることが理解できました。(夫の主張にだけは全く共感できなかったけれど)
    終盤に向けてとんとん拍子に問題解決改善に話が進んでいき、そんな上手いこといくわけないと思いつつも、私はハッピーエンドが好きだし、打開策を掴んでいく過程が爽快感があって心地がよくて、どんどん引き込まれていきました。
    妻、その娘、その息子のそれぞれが良い方向に進めたのは、それぞれが勇気を振り絞って何かしらの行動を起こしたことがきっかけになっていて、今を変える為には思い切りが必要だということも示してくれていました。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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