天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語 (幻冬舎文庫)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425866

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  • クロード・レヴィ・ストロースはいう「料理とは自然を文化に変形する普遍的手段だ。」食は、素材、季節、そして調理法、盛り付けによって成り立っている。それは、人類の作ってきた文化である。家庭料理から、レストラン、そして高級料理までを含めて成り立つ。そして、その極みもあるはずだ。
    大阪で、フランス料理の開店から1年5ヶ月の史上最速で、ミシュラン三つ星を獲得したシェフ 米田肇。プロフェッショナル仕事の流儀にも出演した。その尋常でないこだわり方 温度計ではかり、定規で測るような緻密で見える化しようとする料理法に驚いた。米田肇は「食は希望」という。「食は五感を使う、最高のエンターテインメント」「何をしたいかが大切」という思いから「料理とは温度による食材の変化をコントロールすること」と言って、正確に食材の温度をはかり、何時間もかけて調理する。その素材のうまさを最大限引き出すために。どうしたら、美味しさを感動に変えるかを貫く。美味しさを求め、もがき苦しむ米田肇。
    「これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない。この世に完璧というものはない。ただ完璧を追い求める姿勢だけがあるんだよ」ミシェル・ブラス。米田肇へのアドバイス。
    小学生の頃の作文に「ぼくは、将来、料理人になることが、夢です。いちりゅうの料理人になりたいです。料理人になるなら、やっぱり、フランス料理を作りたいです」と書いた。その時は、まだフランス料理さえ食べたこともないにも関わらずだ。それを、着実に実現して行くのである。さまざまな問題にぶち当たる。自分の頭で考え抜く。問題を解決するのは自分でしかない。ただし料理を作るとは、自分の仕事だけしたらいいわけではない。常に自分に問いかける。そして三つ星シェフになった今でも悩む「日本人なのに、なぜフランス料理をやるのか?」そして、何のために料理を作るのか?「いちりゅう」とは、常に問いかけることによって、自分のポジションを確かめる。
    一つの料理を作り出す時にも、計算し尽くし、その上でも悩み、もがき続ける。今という一瞬の時間。100種類以上の野菜を使った「地球との対話 ミネラル」。野菜の良さを全て引き出した味を構成する。いやはや、すごい男がいるものだ。命をかけて料理をしている。その凄みに圧倒された。

  • メディアで取り上げられている印象から、数学や物理学に精通している料理人だと思っていたが、前半ではアウトサイドな一面も描かれており雄味を感じた。もっと米田氏の料理に対する思考を細かく知りたいなと思えたので御本人にも執筆していただきたい

  • 突き詰め続ける人。ここまで動き続ける人ってなかなかいないだろう。宇宙人なのかな?くらいに自分の思いに真っ直ぐにストイックでいられるってすごいことだなと思う。ブレたり迷ったり、誘惑に負けたり、などの少しの愚かさも無い人っているのかもしれないなって不思議な気持ちで読み終えました。反動で今ジャンクなものが食べたい。

  • ストーリーは、幼少期〜大学生〜一般企業への就職〜料理人への転身のパートが前段。フランス料理のシェフに憧れる、格闘技にのめり込む、理詰めで考え成果に繋げるという彼の特性が現れてきた時期です。
    そして後段は、料理人としての彼の経歴の物語。
    辻料理学校→日本のフランス料理店での修行(これがまたキツい環境)→フランスでの修行(労働許可をとるための奮戦の部分は読み応えあり)→北海道にあるミッシェルブラスの店での修行→自分の店を持つ→三ツ星獲得。この期間がたった11年、自分の店を持ってから三ツ星獲得までが1年5ヶ月という破格の短さ。
    自分の店を持つ時に三ツ星レストランのシェフになるという明確な目標を持ち、それを最短で達成させるために、彼は全ての時間を料理に捧げてきたと書かれています。
    一体何がその原動力になったんだろうと読みながら考えていたんですが、まず一つは「負けん気」。
    幼少期は喧嘩ばかりしていた、大学生の時は格闘技にのめり込み、以降体の鍛錬は欠かさない。今の彼も格闘家のようなデカい体をしています。同門の料理人に「フランス人ではないお前に本当のフランス料理は生み出せない」と言われ、喧嘩別れし、のちにフランス料理というカテゴリーと決別する。2023年現在のHAJIMEのミシュランでの料理カテゴリーは「イノベーティブ」になってます。
    もう一つは、自分で「とことん考える」こと。父親からそういう教育を受けてきたのがその原体験なのではと感じました。
    昼間に学んだことを、夜にノートにまとめ直す、そして考える。どうすればいい動きをできるかを考える、どういう内装のレストランにすればいいかトコトン考える。彼のInstagramを覗くと分かるのですが、色々なことを常に考えています。
    https://instagram.com/hajimeyoneda?igshid=YmMyMTA2M2Y=
    そんな物語を読んで、自分を振り返ってみると、ずっと雇われ人として働いてきて会社なり店なりを自分で回す苦しさは理解できていないなと。「自分ごと化」で仕事に向き合ってきたが、それも限定的。
    当然、雇われ人には雇われ人の苦労があり、組織の役に立ってきたという自負もあります。けして引け目を感じている訳ではないのですが、やはり大きなことをやり遂げたいという願望もあったりします。
    米田肇氏は現在50歳、私は53歳とほぼ同年代ということもあり、彼からいい刺激を受けつつ、より実りのある人生を考えていきたいと思います。
    読み終わって一番心に残っているのは、
    一刻の早く彼の料理を食べにいかなくてはということ。
    ただ高いね〜〜〜〜〜。
    コースメニュー:55,000円。二人で食べたら110,000円。
    何かの記念日に行こうかなと思います。

  • 一流料理人のドキュメンタリーとしても楽しめるが、それ以上に修行への取り組み方、独立(転職)のタイミング、努力の基準をどこに置くかなど、転用して活かせる金言が多い。

    「これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない。この世に完璧というものはない。ただ完璧を追い求める姿勢だけがあるんだよ」
    「1年間で3年分の修業をするつもりでやった」
    「「95パーセントまでは誰だって努力できる」と彼は言う。みんな成功したくて努力してるのだ。95パーセントまでは誰だって努力する。けれど成功するのがほんの一握りの人でしかないのは、ほとんどの人が95パーセントで力を抜いてしまうからだ、と」

  • 久しぶりにルポに感動した。
    十牛図に至るまでの信念の道。
    完璧を求めるたびにスタート地点に立つ過酷な世界。
    常に進化して壊して今に至る話を料理の世界から感じた渾身の話。

  • 完璧だと思ったところから、さらに積み重ねた努力がクオリティの差になる

  • 三つ星シェフになるまでの修行、苦労、思考についてかかれたドキュメンタリー。幼少期のエピソードは蛇足だが、本質を捉えようとする考え方、徹底的に追求する姿勢は学ぶべきところがある。あやふやで惰性ですごすのではなく、目標を定めて優先順位をたて、余計なものは限りなく削ぎおとしたような生き方。忙しくて学ぶ時間がなかったり、新メニューを考える時間が取れないなら、赤字になろうがランチをやめてでも時間を創り、常に変革を続ける姿勢はすごい。つまるところ、全てを極めて全てを表現する。究極を目指す先に達成感や感動が生まれるということ。料理だけでなく、技術に関係する世界は皆これに尽きるのだと思う。誰にでも真似できないからすごいのであって、結局は自分にあった生き方を信念持って選んでいくのがいいのでしょうね。

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