奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)
- 幻冬舎 (2011年4月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344416451
作品紹介・あらすじ
リンゴ栽培には農薬が不可欠。誰もが信じて疑わないその「真実」に挑んだ男がいた。農家、木村秋則。「死ぬくらいなら、バカになればいい」そう言って、醤油、牛乳、酢など、農薬に代わる「何か」を探して手を尽くす。やがて収入はなくなり、どん底生活に突入。壮絶な孤独と絶望を乗り越え、ようやく木村が辿り着いたもうひとつの「真実」とは。
感想・レビュー・書評
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205ページ
1300円
5月11日〜5月12日
無農薬でリンゴを作るのは不可能と思われていた。その不可能に挑戦した男、木村さんの半生を描く。完全無農薬に挑戦し、虫をとり、酢をかけ、考えうることをすべてやってみたが、リンゴは花を咲かせず、半分の木が枯れた。収入がなくなり、家族にも苦労をかけ、木村は首をくくろうと山を登る。山の上でどんぐりが元気に育っている様子を見て、そこからリンゴの根っこ、土に目をむける。9年ぶりにたくさんのリンゴの花が咲いて喜ぶ。『リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。』
木村さんの人柄にひかれた。大きな笑い声と木村さんがいるとその場が明るくなるということが、読んでいるだけでも伝わってきた。トラクタ一の本をとろうとして、一緒に落ちてきた無農薬の本。死のうと思って入った山の中で出会ったどんぐりの木。宇宙人の話。本当に楽しい木村さんでも、手探りの9年間は本当に苦しく辛かっただろう。木村さんのリンゴを食べてみたい。自分がここで諦めるということは、人類が無農薬のリンゴを育てることを諦めることだという言葉が印象的だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
肥料不足がニュースになっている昨今、「農薬も肥料も使わないリンゴ」を作った農家、木村秋則さんの記録です。非常に読みやすく、2~3時間で読み終われるボリューム感ですが、考えさせられますね…。
まず、今我々が食べているリンゴは品種改良を重ねたもので、昔のリンゴとは別物だということ。その結果野生の力を失い、農薬に頼らないと実をつけられない弱い植物になってしまった…ということが説明されます。
その上で木村さんが無農薬に挑み、失敗を積み重ねていく…。正直、かなり闇雲なチャレンジにも思えたのですが、最後には正解を引き当て、今では色々な人から教えを乞われる存在になっています。
本著を読んで感じたのは「信念」です。
木村さんが一家で困窮してるのに、近所からもウザがられてるのに諦めず、リンゴについた虫を手で取りながら無農薬をやり続ける…。しまいには自殺しようと思って山の中へ行き、そこでソリューションに出会う。
ノンフィクション作家の手にかかった文章とは言え、まるで「死と復活」じゃないですか…。
世が世なら木村さんは教祖になってると思いますし、ネットで検索すると既にちょっとそんな雰囲気も感じるんですが、凄いものだと思います。
しかしこの手法、本著に書いてある事が全て本当なら、もっと広まっても良いように思います。
例えば「通常医療」と「代替医療」の対比よりも、「通常農法」「木村さんの農法」の方がローリスク・ハイリターンに思えてしまいます。
手間がかかるのか、単に知られていないのか、後者だったら勿体ないなぁと思う次第です。
そろそろリンゴの旬。1回くらい木村さんのリンゴを味わってみたいものです。 -
農薬や肥料を使わないでリンゴを育てる。そんな奇跡にチャレンジした木村秋則さんの話。それは決して平易な道のりではなく、リンゴは枯れ、収入は無くなり、木村さんは命を絶とうというところまで追い込まれる。まさにその時に目にした野生のドングリ。そこから逆転していく。苦労をともにした奥さん、子供さん、どんなに喜ばれたでしょうか。
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NHKの番組「プロフェッショナル」でも話題になった、奇跡のリンゴ。
そちらのルポルタージュになります、ブクブクでゲット。
今でこそリンゴとしての知名度もブランディングも飛びぬけて、
普通には手に入らないほどの人気の、木村さんのリンゴですが、、
これは決して一朝一夕にできたわけではなく、文字通りに、、
筆舌に尽くしがたい苦しみがあったのだと、伝わってきます。
それでもただひたすらに、自分を、そして自然を信じて、
「自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。」
TPPで揺れる昨今の日本の農業ですが、、
日本には日本にあった農業があり、そしてそれは、
日本に住む我々にも最適になるのではないか、と感じました。
ん、『ローマ法王に米を食べさせた男』とあわせて読んでみたいかな、とも。 -
私が レストラン山崎 を知ったのは、
原田マハさんのエッセイ フーテンのマハ を読んだときであった。
マハさんの文章は奇跡のリンゴなるものの冷製スープをぜひ飲みたい、とそれはそれは強く思わせた。
そしてこのたび、弘前旅行を決断し、レストラン山崎の予約が取れた。
せっかくなので、関連書籍を読もうと思い、手に取ったのがこの本であった。
旅行当日までなかなか時間が取れず行きの飛行機で読んだ。
日本の、そして青森のリンゴの歴史
リンゴと農薬の切っても切れぬ関係
そんじょそこらの野菜や果物の無農薬とはわけが違う無農薬りんごの難易度
そして、木村さんの壮絶な無農薬りんごへの挑戦の日々
あやうくな〜んにも知らずに、奇跡のリンゴを食べるとこでした。
読んで良かった!!
花が咲いたくだりで飛行機の中に関わらず号泣。
東北地方は晴天で窓から見える雪をかぶった八甲田山や着陸直前に見え始めた岩木山が、
もうこれでもか!と私の旅行気分をもり立ててくれた。
念願のレストラン山崎へ。
時期じゃないから、奇跡のリンゴと友達りんご?のフルコース。
そもそも、りんごだとかなんだとかの前に、すごーく好みの味のフレンチでした。
そして、りんごの冷製スープ。
スープなのに、こんなにりんごの味と香りが、ちゃんと食事の味に馴染みながらも、感じられる、見事なお味でした。
他のお料理も はーい!奇跡のリンゴつこーてますよ!!どお?どお??! みたいな感じではなく、
しっとりりんごが寄り添ってる感じで、高感度高い。
久しぶりにあ〜、また来たい。これは。と思わせられた美味しいお料理でした。
お会計のとき、店の入口に フーテンのマハ と この本が並べてあった。
もう、私は、まんまとしてやられたわけです笑
兎にも角にも、せっかくの旅行、予備知識を蓄えていくなら、必読の一冊です。
文章も説明臭くなく、読みやすいです。
さて、岩木山を眺めながら、木村さんに思いを馳せることとしようかな。 -
今年読んだ本の中で、間違いなくベストブックに入る本。(まだ2月だけど…。)
一日で一気に読んでしまい、涙が出てきた。
無農薬・無肥料のリンゴ栽培は、絶対不可能。
八年間にも及ぶ試行錯誤。
困窮した生活。
自殺。
人生辛いことがあったら読み返したい。
そして自分に問いかけたい。
「木村さんより、苦労しているか?」と。
木村さんの奇跡のリンゴには、
木村さん自身の人生が詰っているのだろう。
一回食べてみたいな。 -
農業という人工的な活動と自然な状態とのバランスの難しさについて考えさせられた。
言われれば当然かもしれないけど、今自分が口にしているほぼすべての農産物は人間が品種改良してきたものであり、それは害虫に弱いなどのデメリットを農薬で克服することを前提として甘くしていたり大きくしていたり収量を高めていたりしている。作物を農薬なしでは生きられなくしてしまっているという点で人工的だ。それが世界の食糧生産の効率を高めて飢餓の回避に貢献していると考えると農薬を安易に否定することはできないが、作物が人間の収穫ターゲットであると同時に微生物や虫とか鳥や動物とか他の植物とかいろんな生き物が構成する生態系の一部でもあるので、その連鎖を歪めるような人工的な活動はサステナブルではないとも思われる。
そのことに、とてつもない苦労の末に実体験を通して気づいた木村さん。絶妙な加減で手を加えることは最小限に抑え、畑の生態系が自然に生きる力を高めることに取り組まれた様子にいろいろ考えさせられた。
りんごや農作物に限らず、人間にも同じことが起きているのではないか。
食べて遊んで人と関わって何かを作って寝て成長する、みたいなサイクルが自然だとすれば、食べることも遊ぶことも買ってこないとできないし、作ることは分業、人と関わることも気乗りしない仕事関係に偏りがち、睡眠は不規則で不足気味、では健全な成長は難しいよなと思う。原始の生き方に戻ればいいということではなく、無理のない自律して自立した生活を送っていきたいなと思った。どこから改善するか道は長いけど、自炊を心がけたり自分で価値が生めるよう仕事を切り替えたりひとつひとつ地に足つけて取り組みたい。 -
こんなバカには到底なれない。正しいと思っている知識と経験を疑ってみることくらいはやってみよう。
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“人生を懸けて夢中になれる何か”に出逢えたとき、それは自分が生きる意味を知ることができた瞬間なのかな、と感じました。
木村秋則さんの「人間は自然から離れて生きていくことはできない。だって人間そのものが、自然の産物なんだから。」という言葉が心に残っています。
人間は、目先の利益のために環境を破壊してきました。
人間に出来ることなんてたいしたことではないし立派な生き物でもないのに、自然に生かされていることや、自然から恵みを分けてもらっていることを忘れてしまう。
文明が進歩することよりも大切なことを教えてくれる一冊です。
木村秋則さんの伝えたいことをもっともっと深く知りたくなります。