風かおる (幻冬舎時代小説文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 160
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427372

作品紹介・あらすじ

鍼灸医・菜摘は「妻敵討ち」の旅から戻った養父・佐十郎と十年ぶりの再会を果たす。しかし、死病に侵された佐十郎にかつての優しい面影はなく、帰藩は妻敵討ちを唆した者との果し合いのためだという。討たれると知りながら治療を施すことに葛藤を覚えた菜摘は果し合いの相手を探るが、やがて哀しい真実に突き当たり――。哀歓溢れる傑作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 風かおる
    2018.04発行。字の大きさは…中。

    竹内佐十郎は、嘉村吉衛への嫉妬が、怒りが、虐めになり、虐められた嘉村が竹内へ復讐をし、復讐された竹内が、10年後に復讐されたことに気づいて嘉村を殺しに立ち戻る。そこには、意外な事実が待ち受けていました。最後は、嫉妬の原因となった竹内が愛した多佳(嘉村の妻)に殺されます。

    全てが悪い方へ、悪い方へと向いています。
    「何かひとつよい風さえ吹けば」人生も変わって行ったことと思われます。

    【読後】
    読み終って、この物語の重さと、事件を探索する3人組の軽妙なやり取りとが、暗く重い物語を軽くしていますが、何かちぐはぐな感じがしてならないです。
    これ本当に、葉室麟さんの本かと思いました。
    この続編が有るのですが、読むのかどうか迷っています。
    2020.08.27読了

  • 面白かった
    ミステリー仕立ての物語。
    暗いテーマながらも、主人公たちの軽い掛け合いでそれをカバーしています。
    「潮騒はるか」の前編です。
    誠之助、千沙、菜摘が長崎に移り住む前の物語。

    ストーリとしては、
    鍼灸医の菜摘のもとに10数年ぶりに現れた養父佐十郎。
    佐十郎は妻敵討ちの旅にから戻ってくるも、戻ってきたのは、妻敵討ちをそそのかした人物との果し合いのため。
    しかしながら、佐十郎は病に侵され、余命いくばくもない状態。

    そんな中、果し合いなどできるのか?

    菜摘の弟の誠之助
    菜摘を姉のように慕う、男装をしている千沙
    3人は、果し合いの相手を探るとともに、それをやめさせようと東奔西走します。

    佐十郎が身を寄せている多佳との関係は?
    そして出てくる黒幕の楊梅(やまもも)
    そもそもの事件の真相は?
    楊梅とは誰なのか?
    果し合いの相手は?

    とミステリー要素満載の物語です。
    さらにさらに、菜摘の夫の亮が探偵役となってさらりと解決していきます。ミステリありがちな設定(笑)

    そんなミステリー要素の物語ながらも、ここで語られる内容は、どろどろっとした人間の黒い感情。
    出世争い、嫉妬、悪意、復讐
    この結末は必定だったのかもしれません。

    「なにかひとつよい風さえ吹けば..」
    といったセリフが、刺さります。

    しかし、そんな重い話なのに、誠之助、千沙、菜摘は軽すぎないか(笑)

  • 黒田藩での複雑な人間関係
    その中でもがく人々

    様々な伏線もありすいすい読みました

    ちょっと物足りない感は残りますが

    ≪ かおる風 悲しみの中 友想う ≫

  • 将来を嘱望された藩士たちの出世争いが絡む話かと思っていたら、男女間の嫉妬が起点となった何とも姑息な所業による禍いによるものだったとは。おまけに身勝手な友情もどきの隠蔽を本人たちは正当化しているところが醜い。
    物語の中心となっている若者たちが真っ直ぐなだけに、対比によって少し後味が悪い作品で、葉室氏らしくないかも。

  • 終わり方が陳腐…。
    葉室作品が好きでほとんど読んでいるが、ほか多数の作品とは異質な印象を受けた。

  • 若き日の出世を争う怨念と、女性を巡る嫉妬とに、絡めとられながらの人生は、悲劇に終わる。
    そんな哀しい人々を描いた時代小説。
    それらの人たちと対置する人物を配することによって、著者はこの物語を叙情性あふれる終わり方にさせた。
    「何だかよい風が吹くような気がしたのだ。・・・悲しい出来事をわたしたちが吹き飛ばした方がいいと思う」
    「風がかおるように生きなければ」
    題名にもなっている『風かおる』、この言葉によって爽やかな読後感となっている。

  • 楊梅というのが誰なのかはかなり前から薄々わかったものの、ミスリードさせるための言い回しがサスペンスものとしては稚拙だったかな。亮がまるでスーパーマンのように現れてちょっと笑えたけど、こういった演出嫌いじゃない。核となる部分があまりにも陰湿で辟易したけど、最後は明るく終わって良かった。

  • 時代物はあまり読まないが、登場人物の名前が長いことを除けば読みやすかった。
    仇討ちは知っていたが、不倫で出て行った妻と真男も斬ってよいとは知らなかった。
    いつの時代も、妬みや恨みやっかみなど人間の嫌な部分って変わらないのだ。

  • 妻敵討ちの旅から帰ってきた佐十郎は、余命幾ばくもない身で、真の敵に決闘を挑もうとする。若き優秀な4人に若者たちが、どうして不幸な運命に巻き込まれてしまったのか。
    妬み、イジメが、もたらすもの。ほんのすこしの勇気、きっかけ、新たな風が吹けば、運命は変わったのかもしれない。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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