- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344430822
作品紹介・あらすじ
地球が滅ぶまで、110日。教師は次々失踪し、授業は自習ばかり。そんな中で、今しかできない何かを見つけ実行する。それが、「滅亡地球学クラブ」。部員は自由奔放な部長・玉華、彼女を静かに見守る碧、クールでマイペースな刹那の3人だけ。哲学好きの新入生を勧誘するも断られ……。大人になれない。夢も叶わない。それでも、僕らは明日を諦めない!
感想・レビュー・書評
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終末青春小説ですね。
天体衝突による終末ものは定番ではありますが、定番ゆえの味わいというものがあります。この場合終わりがきっちり決まっていて、かつ避けられないというのがいいです。主人公たちは終わりを受け入れつつ生への渇望を捨てられない。日常を繰り返しつつ、ちゃんと死のうとしてる。この辺の心情の描き方がたまらない。
これは終末ものとしては極上の部類ですね。ラストシーンの余韻もいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地球が数年後に星と衝突して滅亡するというニュースが飛び込んだ。公式に発信されたということもあり、各地で暴徒化し、世界は大混乱。そして現在、滅亡まで110日。ある高校では教師が次々失踪、自習ばかり。そんな状況だが、ある部活は元気に探求している。その名は、「滅亡地球学クラブ」。終わりを迎えようとも、今しか出来ないことに没頭する高校生達の物語。
地球が滅亡ということでしたが、その世界観は、終戦直後?と思うくらい、様々な制約や争奪戦が繰り広げられていました。今までの当たり前だった生活が一変し、色んな想定されそうな状況が描写されているのですが、現実にこんな事が起こるとなると、自暴自棄になりそうで、恐怖を感じてしまいました。ただ、この作品は、全体的に「青春小説」の印象でした。
高校を舞台にした青春物語でしたが、初めの段階では、登場人物は中学生?と思うくらい、天真爛漫な雰囲気が出ていました。
滅亡するというのに元気な人達ばかりで、単純な性格なのかなと思っていましたが、章を進めるごとにメンバーの過去が明らかになっていきます。その過去ときたら、まぁ深刻な事が次々と出てきて、結果として複雑な人達ばかりじゃんと思ってしまいました。
それぞれが抱える葛藤や悩みが背景にあることで、登場人物たちにグッと深みが増していました。「大人になれない」「どうせ無駄」だけれども、最後の最後まで探求している部活動の姿に勇気を与えられたような感覚がありました。
「地球滅亡」という暗い雰囲気を放っていますが、登場人物たちの明るさに終始どんよりとした気持ちではなく、明るく軽い気持ちで読んだ気分になれました。
全体として、青春さが際立っていました。特に後半での展開では、〇〇を助けるシーンがあるのですが、よりクラブでの団結力や仲間意識が強くなって、良いチームだなと思いました。
終わりが分かっていても、決して諦めずに行動を起こす。自分だったら、なかなか積極的には出来ませんが、友情や仲間があっての行動にすごいと感じました。
このまま此処で終わりを遂げるのか?シェルターで過ごすのか?はたまた・・・。様々な答えがあるかと思いますが、高校生たちはどんな答えを出すのか?
結果として高校生達が導き出した答えが良いか悪いかわかりませんが、読んでいて後悔ない人生を歩みたいなと思いました。
刻々と地球滅亡が近づくとき、自分だったらどうするか?
じっくり考えたいと思います。 -
地球滅亡までのカウントダウン中の物語。
今、コロナ禍といわれる中での何とも言い難い閉塞感ややるせなさやウツウツとして雰囲気に通じるものがあって青春時代にある人達の切なさや悔しさに想いを馳せずにはいられなかった。
終焉が見えていようと、見えないままであろうとも、生きることは変わらないのだなと思った。 -
地球が滅ぶまで残り110日、そんな中で今しかできないことをやろうとする中高生4人の話。絶望しかない中で、滅亡前だからこそ出来ることをする4人みたいに、楽しげな最期を私も過ごしたくなる。生き残るために抗おうと思わんけど、楽しい最期のためには抗いたい。
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人生の終わりに何をしたいか
主人公たちの若さで考えるからこそ
それは未熟さと切実さを伴っていて
どうしようもない、ままならなさと理不尽さに
何だか申し訳ない気持ちにもなり
いっとき話題になって自分も思い描いていたことを思い出した
隕石が衝突するとしたら、最期どうしていたいか
普通に事故や病気で死ぬよりは、とても潔くて
一瞬で終わるだろうから苦しくもないし、ともすれば流れ星が綺麗かも!なんて思っていたけど
きっといざその瞬間になったら怖くて怖くて直視できないだろうなともわかっていて
振動とか温度とか風とかが終わりの爆音を響かせていて
だからその瞬間は家族といたいと思ったけど
それまでに何をしたいかは考えていなかった
そうでなくても1日1秒進むごとに
自分は死に近づいている
そう考えれば踏みとどまっていることが
とても勿体ないと思えてきて
もっと前に進める気がしてきて
ひとって皮肉だな、と思わずにいられない -
ほのぼのとした勇気と安らぎを貰ったような気分になるけど、実は結局どこにも救いのない終末小説。
否定され、苦しみ、もがき、ようやく得た仲間を前に、怯えながらも必死に前を向く玉華が痛々しくて泣けてくる。滅亡地球学クラブの部長は、未来を決して諦めない。だから、明日もきっと楽しいことがいっぱいの一日になる。 -
10代4人のなんとも言えない関係性が最初モヤモヤして、本当は心の中がわからない。
だけど、地球滅亡の日が近づいて来るにつれ、だんだんとそれがさらけ出す、出さざるをえなくなってくるのがいい。
若いときって時間は永遠に続くように無意識に思ってるところがあるけど、それを考え直すいいきっかけにはなるかも。
自分のやりたいことはできる時にやったほうが絶対いいし、大事なものには早く気づいてほしいって思う。
ただ、落ちはテーマがテーマなだけにスッキリしない終わり方。 -
「死ぬのを遅らせることよりもね、どう死ぬかを考える方が楽しいと思わない?」p14
終末青春部活物。妖星デルタの地球衝突が判明したことで世界恐慌・暴動が起こり、人々の生活は大きく衰退、日本政府による情報規制もされている。授業も自習ばかりの中、高校生3人の「滅亡地球学クラブ」はあれこれを探求していた。
配給や闇市、新聞の検閲はWW2を、閉塞的な雰囲気や「スーパーに長蛇の列ができ、(中略)トイレットペーパーを買い占めた」p155 などは正に今のコロナ禍の状況とも重なるところがあるなと思いながら読みました。元は2019年10月〜2020年3月に「朝日中高生新聞」に連載されたものだそうですが、10代の方なら2020年4月の緊急事態宣言下、その後の変化してしまった学校生活を思い出すところもあるんじゃないでしょうか。
「滅地部」のメンバーも地球滅亡による影響をそれなりに受けていて(家族であったり学校であったり夢であったり)、複雑な感情を抱えているのですが、部の活動目的は前向き。“デルタへの仕返し”に天体観測をし、終末史をまとめ、巨大ピンホールカメラで記念撮影をする。もちろん死にたくはないけれど、過度に悲観することも自暴自棄になることもせず、「自分ができること、したいこと」「なりたい自分」を最後まで模索する姿、第8章での危機にそれぞれの自分の力を全力で振り向ける姿が良いなと思いました。
ラスト、玉華と碧に「明日」も「明後日」もあって、「楽しく」最期の日を迎えたのだと思いたいです。
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●連載時の挿絵・文庫の装画を担当されているカシワイ氏のイラストがとても良いです。
https://twitter.com/kfkx_/status/1377207506385084419