来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983168

感想・レビュー・書評

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  • 前半は非常に興味深く読むことができました。

    昔、小平に住んでいたこと、話題になっている都市計画道路についての本だったので、手にとってみたのですが、読んで良かったと思っています。

    立法と司法の関係や、住民投票の投票率をもって開票をしないという行為について考えさせられました。
    改めて再読してみたい本です。

  •  著者がニュース番組に出演したとき紹介のテロップで紹介されていた本。内容はまったく調べないまま買った。
     小平市都道328号線の建設問題から民主主義を考える。328号線は住民側からすると建設に合理性がない。また住民の憩いの場である雑木林が切り倒されてしまう。住民投票を実施して建設を中止させようとしたが行政側に阻止されてしまう。
     この国は民主主義の国のはずなのに、なぜ住民の意思が反映されないのか。著者はそれは議会制民主主義の限界にあるのだと考える。ルソーが提唱した民主主義は主権を立法権に規定している、現代の日本にもそれが受け継がれている。国民は立法権に関与出来る。
     しかし立法が決めたことを実行するのは行政である。現代の民主主義は国民が行政に関与できる仕組みが弱い。小平の問題もここに原因がある。国民、市民が行政に関われる仕組みを現行の制度に付加していく必要がある。
     議会が民意を反映していないという意見はよく聞くがたとえ議会が民意を反映できても行政という壁があることはなかなか指摘されていなかった。小平市の問題を見ると現行の制度がどれがけ民意を無視するものなのか分かる。住民投票にだけ有効投票数を設けるなどおかしいことばかり。有効投票数を設定した市長の選挙投票率が50%以下とかもう怒りを通り越して呆れる。
     ただ行政を悪者にしているだけでは現状は変わらない。本書は行政が意見を柔軟に変えられるような制度を提案している。
     

  • 「平易な文章で、よくもここまで上手に説明するものだ」と驚かされた良書。実に面白い!
    小平市の道路開発問題という超ローカルなネタを素材にしているが、議会制民主制に対する幻想・勘違いと限界、そして議会制民主制を補完する方策のアイデア、まで幅広く論じている。自分自身の「政治」に対する向き合い方が変えられるかも。

  • 住民の手に行政権を!

  • 小平市の住民投票の新聞記事は興味を持って読んでいましたが、投票率50%に達しないため開票を行わない結果を残念に思いました。この前提があると、投票しない行い自体にも賛成反対以外の第三の意味合い、成立させない、住民投票の結果を共有しないという選択肢が出来てしまい、投票そのものが無駄になってしまって良くないと思いました。

  • なぜ主権者が立法権にしか関われない政治制度―しかもその関わりすら数年に一度の部分的なものにすぎない―が、「民主主義」と言われうるのだろうか?

    面白かった。

  • 退屈の倫理学を読んで、この著者に興味を持ち、また面白そうなタイトルだったから手に取った。著書は、民主主義の欠陥について、著者の体験を通じ、その改善案を提示しており、非常に分かりやすい。小平市の都道新設を巡る論争。分かりやすいが故に、二点。民主主義そのものを良しとするバイアスでの理論の起点には掘り下げが必要。また、新設反対派の立場から、推進派の可能性を閉ざした狭隘な視野には注意が必要。住民投票は、利益を享受する側の一点突破な要求にしかならぬ危険性がある。国の軍事上の道路敷設などの可能性を考慮すれば、秘匿事項にしつつ、より高次で国益をコーディネートする必要もあるということ。要求への対価、責務を明確にするシステムが必要。また、国籍の異なる外国人には、そのような請求権自体不要。

  • 当たり前のことを当たり前に言ってそれが実現されない奇妙な民主主義。小平市の道路建設反対運動を例に、住民投票などもふまえて、とても具体的にあるべき民主主義を示してくれた。最後にデリダの『来るべき民主主義」に着地するところがさすがの哲学者!それにしてもつくづく腹の立つ行政だ。猪瀬知事に物申していたけど、彼ももういないし、、

  • スピノザを専門とする哲学者が、地域開発計画への個人的な関わりを題材にして、民主主義についての考察とその実践への手掛かりについて、新書読者層へ訴えた本。國分は、武蔵野の風情の残る雑木林が、道路新設計画で無くなろうとすることに反対し、行政との折衝を通じて、「民主主義」が人々には誤った形で認識されていると考えるに至った。間接民主主義における議会は、立法府として主権を表わす機関には違いないが、そこでは法を作るのであり、実際の行為を意思決定するのは行政である。ところが主権者である地域住民が、個別の事案で行政に対して対等に交渉できる仕組みがない。
    これを解決するために、住民投票の制度の改良や、ファシリテータの役割の重要性などを説いていく。
    具体的で面白い政治学入門という感じの内容だ。東京近郊の知識人的な個人の尊厳に重きを置きすぎて実際のどろっとした社会に適用可能なプランなのかどうかは疑問だが。

  • 日本は民主主義国家なのか、果たして民主的な政治が行なわれているのか。小難しくて抽象的な議論に陥りやすいこうしたテーマも、実際の出来事に即して説かれると非常に理解しやすくなります。あたしも小平市民として都道計画には疑問を感じなくもない反面、雑木林を残せという訴えだけでは、同じ小平市民にすら声は届かないのではないかと思っています。むしろ実際の交通量の推移とか、現行の道路をどう改修すれば渋滞緩和、解消に効果的なのか、そういった提言をしていかないと実際の運動の成果としては上がっていかないのではないでしょうか。そういった意味では、國分さんの本書は國分さんの立ち位置が微妙で、民主主義について考えさせたいのか、雑木林の保全がメインなのか、もう少しスパッと分けた方がよかったのではないかという気もします。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科准教授

「2020年 『責任の生成 中動態と当事者研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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