クジラに救われた村

  • さ・え・ら書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784378015163

作品紹介・あらすじ

思いもよらない潮の音に、みんなが一瞬、動きを止めた。なんと、舳先から二十メートルも離れていない海面に、玉突き台ほどもある大きな黒い頭が突き出ているではないか!まさにジェイクが見せてくれたスクリムショーの絵そのものだ!「ホッキョククジラか?!」ホッキョククジラは、イヌイットの暮らす北極圏最大の動物です。イヌイットは、自然への愛と尊敬を抱きながら、何百年ものあいだ、ホッキョククジラ猟を続けてきました。しかし、十七世紀に欧米で始まった捕鯨船での乱獲、今日の油田開発による海の汚染、気候変動などでホッキョククジラは絶滅の危機にさらされているのです。

感想・レビュー・書評

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  • 北極圏の環境破壊問題と現代イヌイットの社会的問題(将来の不安、若者の自殺)を背景に、
    兄妹の愛、家族の絆を描きます。
    児童向けですが、大人が読んでも感動しました。
    主人公の女の子サキは学校で先生からも否定され自分はダメな人間だと思っています。
    お兄さんの自殺未遂を機に、いまだ狩猟生活を続けるひいおばあさんの元へひとり預けられます。
    TVも大好きなドーナツ屋もない生活に戸惑いながら、
    犬ぞりを覚えたり狩猟の手伝いをするなかで、
    おじさんやひいおばあさんに「たいしたもんだ」などと認めてもらい、
    自分の生きる場所を見つけていきます。
    ここの生活ならお兄さんもきっと活き活き暮らせるだろうにと思い、
    くじらの潮吹きの音などを録音して意識不明のお兄さんへテープを送り続けます。
    環境破壊と外国人の乱獲でくじらが捕れなくなり、
    前向きに生きることをあきらめていた狩猟イヌイット達には伝説がありました。
    それはサキのひいひいひいばあさんの伝説です。
    男社会のくじら漁のボートの舳先に立ち、見事くじらを捕らえ当時の村を救った伝説です。
    サキも今のイヌイットを、そしてお兄さんを励まし、
    生き返って欲しい思いで、漁に出ます。
    そしてくじらの大群に遭遇し村に活気が戻ります。
    そのとき録音したテープを聞いたお兄さんは奇跡的に手をぴくりと動かしました。
    お母さんとサキは暗い海の底から引き上げるようにお兄さんの手を握ります。
    後日談。イヌイット村はくじらの保護区になり、
    そこでくじらの生態調査をするサキと、ボートを運転するお兄さんがいます。
    イヌイットの村では保護区としての仕事が増え、
    村の人も、若者も活気のある生活を送るようになりました。
    実際にくじらの保護区として活動している村があるとのことです。

  • 主人公とイヌイット交流を通して、少数部族の近代化による苦しみと温暖化や環境破壊の問題を伝えようとしています。
    大人が読むには、内容があっさりしていて物足りないかもしれないけど、小学生にはこれくらいがちょうどいいのかも。
    主人公の生き生きとした姿と、自然の雄大さが魅力的な作品。

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著者プロフィール

ケンブリッジ大学で動物学を専攻。英国放送協会(BBC)で自然科学番組の制作にたずさわり、児童書も数多く発表している。絵本に『やくそく』『空の王さま』(以上、BL出版)『ちいさなちいさなめにみえないびせいぶつのせかい』『いろいろいっぱいちきゅうのさまざまないきもの』(以上、ゴブリン書房)、読み物に『ゾウがとおる村』(さ・え・ら書房)など。

「2021年 『デイビス&サットンの科学絵本 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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