秘伝将棋無双: 詰将棋の聖典「詰むや詰まざるや」に挑戦!

著者 :
  • 山海堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784381086105

感想・レビュー・書評

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  •  2016年に一度読んだが再読。
     『無双』だ『図巧』だなんて言っても知らない人がほとんどと思うので、まずは解説の言葉を引く。
    「江戸時代の詰将棋(古図式)は現代の作品と違って、歴代名人など将棋家元が力まかせに創った、複雑で難解な問題が多かったのです。 これらの中で最も難しく、最傑作と言われるのは史上最強の名人と言われる七世名人・三代伊藤宗看の『将棋無双』と、その弟で神童と言われた贈名人・伊藤看寿の『将棋図巧』です。(略)すばらしい作品集ですが、両書とも難問揃いなので、これを鑑賞するのはかなりの棋力がいります。棋力の低い普通の読者にこの難しい詰将棋のすばらしさ・面白さを理解して貰うのは容易ではありません。 本書の筆者湯川さんは、その難しい命題にチャレンジされました。(「監修のことば」より)」
     往々にして指将棋のための鍛錬としての面のみ見られがちな詰将棋だが、実は、それ自体として非常に豊かで奥深い世界が広がっている。そして、詰将棋を「芸術品」にまで昇華させたのは、江戸時代に作られた『将棋無双・図巧』であると言っても過言ではない。そこでは、指将棋には決して現れない、一見すると理屈に反するかのような摩訶不思議な手順が繰り広げられるのだ。指将棋の勝ち負けを離れた、純粋なパズルとしての面白さがそこにはある。
     しかし、『将棋無双・図巧』を鑑賞しようとする人の前に立ち塞がるのが、その難解さである。実際、『将棋無双・図巧』を自力で全題解ければプロ棋士になれるだろうというのはよく言われる話だ。あの藤井聡太四冠は、それを僅か小学4年生の頃から解いていたというが、それはともかく。本書は、七世名人・伊藤宗看が江戸幕府に献上した『将棋無双』に詳しい解説を付けることで、読者になんとかその妙味を味わってもらおうとするものである。伊藤家の詰将棋教室を舞台として、3〜4人の登場人物が会話をしながら、作品を解図していく。読者は、登場人物と共に悩みながら一つずつ考えを進めて、答えに行き着くことができる。『無双』の中でも比較的簡単な作品から、次第に難しく且つ芸術性の高い作品になるように配置されているので、無理なく高みにのぼっていける構成になっている。
     僕が本書を初めて読んだのは上述の通り2016年で、それより前に『盤上のファンタジア』を読んでいたが、江戸時代にして既に『将棋無双・図巧』はこれほどの高みにまで到達していたのかと衝撃を受けたのを覚えている(その後暫くして『極光21』を鑑賞して、また度肝を抜かれた)。今では、本当に下手くそながら自分でも詰将棋を作ってみたりしているのだが、僕が詰将棋を好きになった切っ掛けの一つが、『無双』の魅力的な作品を易しく解説してくれた本書であることは間違いない。
     『将棋無双・図巧』に興味があるんだけど難しいらしいしなぁと躊躇っている人(そもそも興味を持つ人が滅多に居ないのかも知れないが(笑))には、古図式入門、あるいは「詰将棋」入門として、本書を強く薦めたい。

  • 本書は、江戸時代の詰め将棋作品「将棋無双」から20題をピックアップ、なるべく多くの読者に理解できるように多種多用な趣向が織り交ぜられて作られた書である。また、詰め将棋以外にも多数のコラムが挿入されており、江戸時代の将棋家の歴史を始め、江戸時代の生活風景・文化的なものの片鱗まで見えてくるようなコラムまである。

    「将棋無双」について、少し説明しよう。「将棋無双」とは七世名人三代伊藤宗看の献上図式(献上図式とは、歴代名人が幕府に献上した詰め物作品集である)で、通称「詰むや詰まざるや」と称される難解で有名な詰め将棋100題を収めたものである。100題中で最長手数の詰め物は200手を越える長手数であり、一局の平均手数を100手とすると将棋2局分以上の手数に匹敵する。「将棋無双」全問すべてを自力解答できれば終盤力はプロ級と評される代物である。

    詰め将棋には詰めの基本手筋というものがあり、長手数の詰め将棋になると、基本手筋が複数組み合わさって手数が伸びている例が少なからずある。本書はそこのところを利用してアマ上級位~低段者でも無理なく解ける(鑑賞できる)ように配慮されている。少し具体的に言うと、Aという基本手筋、Bという基本手筋を使用した詰め将棋をそれぞれ最初に予習問題形式で出題。最後にAとBが組み合わさった「将棋無双」からの題材の詰め物を1問登場させる按配である。
    また、この予習問題及び将棋無双からの問題がただ単に羅列されているだけではない。本書を通して一つの物語が用意されており、問題の出題者としての江戸時代の将棋家の師範、回答者としての入門者が物語の登場人物である。詰め将棋は物語中にすべて師範からの出題として引用されている作りになっているのである。そして、詰め将棋を予習問題から将棋無双の問題に至るまで、師範が入門者に適宜アドバイスやヒントを出しながら正解に至らせる(詰め将棋の解答手順の解説が物語に乗せて展開する)のである。
    この物語を読んでいくと気づくのであるが、詰め将棋ではなく将棋全体に対する上達に必須の金言が散りばめられていることがわかる。

    要するに、詰め将棋をはじめから解く気概で読まなくても、鑑賞するつもりで読める内容となっているのである。主観的な判断ではあるが、恐らく将棋倶楽部 24(将棋対局サイト)のレーティング1000点の実力があれば余裕で読めるだろうし、500点くらいでも消化可能であろうと判断する。

    最後に、将棋無双全問を収めたサイトを見つけたので紹介して終わることにする。
    http://park6.wakwak.com/~k-oohasi/shougi/musou/musou00.html

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