- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784384096460
作品紹介・あらすじ
現代日本にとって外国語とは何か
感想・レビュー・書評
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黒田さんはもと大学の専任教員だった。しかし、今はやめて非常勤で少数言語や言語学を教えている。(なぜやめたかは黒田さんの別の本に書いてある。どの本かは忘れたが)本書は、その黒田さんと黒田さんを慕って集まってくる学生たちのものがたりである。(それにしてもその学生たちというのが男ばかりというのは面白い)黒田さんは専任ではない。しかし、こうした学生たちとの間に、一般の教員にできない関係を築いていく。かれは自らをオジサンー「アカデミック寅さん」と称する。「いい加減で、無責任で、社会的にも問題がある」。だけど、子どもたちが惹かれていく存在なのである。かれも学生のことが気になってしかたがない。とりわけ、うつになって引き籠もりになってしまったフジくんとの関係は尋常ではない。熱い。ぼくも学生の面倒を見出すと夢中になるけれど、どこか冷めている。来る者は拒まず、去る者は追わずである。ぼくの奥さんに言わせれば黒田さんとフジくんとの関係は「共依存」だという。そうかも知れない。黒田さんは言語学を教えているが、学生たちには言語理論に走らず、外国語をすくなくとも4つは勉強してほしいと願っている。少ない言語知識で理論をふりかざすのは感心できないようだ。これもわからなくはないが、専門家を目指すなら両方ほしいところだ。外国学部にいて、日本語を研究対象にするのも彼には不満らしい。でも、ぼくは外国語をやる最終目標は母語への反省にあると考えているから、この考えには賛成できない。黒田さんは、非常勤で通っていた大学―東京外大だろうーが改組して外国語学部の名称をはずしたことで、その大学をやめた。でも、それは違うのではないか。名称はもちろん大切だ。でも、名称が変わっても、黒田さんのやりたいことはできるだろうし、黒田さんのもとには学生がきっとやってくる。黒田「裏ゼミ」も続くというものだ。惜しい。黒田さんの留学に対する考え方もどこかあわない。数ヶ月の外国での滞在は留学ではなく「短期研修」だ、というのは賛成だ。今は「留学」ということばの意味が変化しているのかとすら思ってしまう。「外国語の習得」なら一ヶ月の短期研修でいい、というのは、黒田さんの言う習得レベルだから、それはそれでいい。しかし、本気で留学したいなら、高校を出て海外へ行き、そこで数年かけて学位をとるのがいいというのはどうだろう。黒田さんは、留学のマイナス面は、読書ができないことだという。だとすると、高校を出て、そのまま留学をすれば4年も読書ができないことになる。大学生もそんなに読書をするわけではないから、それはそれで仕方のないことかもしれない。でも、日本で大学生活をおくるのと外国で大学生活をおくるのはやはり違う。遊んでばかりいるような大学生活でも、その中で日本人として必要なものを学んでいるはずだ。それが、留学組には欠けている。これはその後の人生を左右する。だから、ぼくは、日本の大学に入って、その途中で留学するか、大学院へすすんでから留学する方がいいと思う。留学する前に、日本人として外国に向かい、外国語と対決する方法、外国語を学ぶ視点を養うのである。色々書いたけど、この本からはいろいろ考えさせられた。くりかえし読みたくなる本である。
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外国語学部で地域研究などではなく、言語そのものを学びたい方に。外国語学部の雰囲気がつかめると思う。
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岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00484024
《外国語を学ぶとはどういうことか》
これから「外国語」の話をしよう。
外国語学部とは何か、外国語学部生とはどういう大学生か、そもそも現代日本にとって外国語とは何か。
世間には、外国語学習を推奨する一方で、それだけではダメだという考えが根強い。外国語はできて当たり前。それに加えてコンピュータとか、あとはなんだかよく分からない資格をあれこれ取って、はじめて社会に有用な人間となる。就職難の昨今、外国語だけでは自分を売り込むセールスポイントにならないというわけだ。そういう観点からすれば、外国語なんて就職活動のときに自らを飾るアクセサリーの一つにすぎない。
そう考えるから、外国語しか学べない外国語学部は人気がない。
だが、本当にそうなのだろうか。
…本書はいろいろな読み方ができる。単なる大学生の日常を描写したエッセイとも読めるし、外国語学部論にも読める。どう捉えようが、それは読者が判断することである。ただ、何か情報を得ようとか、知識を増やそうと考えて読んだ人は、肩すかしをくらうことになる。それはわたしの著書すべてにいえることだろう。読書に実用を求めることが嫌いなのだ。(本文より)
(出版社HPより) -
2017/10/26 初観測
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"外国語を学ぶ学生と教授の交流記。
インドネシア語、ドイツ語、ハンガリー語、ポーランド語などを学ぶ個性的な学生と黒田先生との授業、裏ゼミ、日常のやり取りを綴っています。" -
愛だねぇ。風呂入ったら暑くて寝られなくて、ってしてるうちに一気に読んだ。
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黒田龍之助さんの本を、数冊読んで、この本を読んだ。
専門的な言語学の話でもなく、専門のスラヴ語系にまつわる話でもない。
今まで読んだ黒田氏の著作で、(個人的には)かなり重めのエッセイのように感じた。
外国語学部の一部、5人の学生の人生を垣間見る。
本書の前書きには、このように書いてある。
「タイプの違う五人の外国語学部生をよく観察し、話を聴き、長い時間をいっしょに過ごす。その経験から得たことを
、私見を交えながら綴っていきたいのである。」
(中略)
「いや、もしかしたら、これは外国語学部で非常勤講師をしながら踠き続けた、私自身の記録なのかもしれない。」
著者が外国語学部性に期待することは、心に響いた。
以下に挙げる。
1 専攻語+同系語+英語+有力語をバランスよく勉強する
2 留学が絶対ではない
3 言語理論に深入りしない -
「アカデミック寅さん」を自称するフリーの非常勤外国語教師が、外国語学部で出会った5人の学生との「裏ゼミ」を通じて、学生の様子や現代の大学について書く。
新たに使える外国語を学び直したいと思って読んだ。検定試験などにはまるのではなく、純粋に楽しみながら使える言語を習得したいと思った。
著者が外国語学部性に期待することは
1 専攻語+同系語+英語+有力語をバランスよく勉強する
2 留学が絶対ではない
3 言語理論に深入りしない