- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784385360614
作品紹介・あらすじ
中東エルサレムの「神の道」と呼ばれる通りには、イスラム教徒とユダヤ教徒が通りを挟んで住んでいる。「パレスチナ問題」を日々の現実として生きる無名の人々の姿を、気鋭のアメリカ人ジャーナリストが描く。
感想・レビュー・書評
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エルサレムのイスラエルとヨルダン川西岸地区の間にある幅100m足らずの「無人地帯」。その中に走るアサエル通り。1948年の第一次中東戦争後の停戦合意の際に、イスラエル軍とヨルダン軍の間で停戦管理ラインとして定められたまま帰属がはっきりしない状態で、70年間もその状態が続いている。
無人地帯とはいってもそれは後からそのように決められただけで、中東戦争の前もその後も、そこには人々が現に住んでおり、過去の記憶も含めた財産が存在している。
この通りでイスラエル人とパレスチナ人との間で起こった出来事を、その地に暮らす人々の声を通じてありのままに描いている。
イスラエル人とパレスチナ人の双方に、敵意があり友情があり、隣人同士の間の信頼が築かれたかと思うと、新たな衝突をきっかけに相互の不信に基づく迫害や差別が始まる。
あまりに多くのものが積み重なっていて。それらを解きほぐす糸口があるようには到底思えないような気持にもなった。
一方で、この「無人地帯」に暮らす人々が、互いのことを宗教や人種だけで色分けし、まったく異なる世界に暮らしてきたわけでもないということも分かった。ユダヤ人とパレスチナ人は、長い歴史を通じて入り混じって暮らしてきたわけだし、その中で双方の間に様々な交流があった。その中で相互の間で助け合いや友情や、恋愛まであったということが、この本の中では描かれている。
政治や宗教を背景にした構造的な対立を乗り越えるためには、そのような人と人のレベルでの関係性の構築しか、糸口はないのではないかと改めて感じた。
本書は、それぞれの章に主役となる人物や家族がいるが、それはユダヤ人であったりパレスチナ人が交互に登場する。それぞれがそれぞれの暮らしと様々な体験を背後に持っており、それらをその当事者の視点に筆者の視点を重ね合わせるようにして描いている。
筆者はユダヤ教の家系に生まれながら、キリスト教文化の中で育ち、現在はイスラム教徒の妻と結婚するためイスラム教に改宗しているという。
そのような記者であるからこそ、このような本が書けたのではないかと思う。非常に貴重なドキュメンタリーだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・開架 227.9A/N87h//K