イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

  • 三省堂
4.22
  • (10)
  • (3)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 134
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784385360638

作品紹介・あらすじ

読む・書く・生涯にわたり学び続ける伝説の教師、ナンシー・アトウェル。その思想と実践を具体的に示した本書は、ライティング/リーディング・ワークショップに関心のある国語教師はもとより、すべての教育者に必読の一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本に出会えてよかった。

    巷に溢れている先生のためのハウツー本とは一線を画す。著者のナンシーアトウェルのあり方を強く示した一冊になっています。

    「作家の時間」「読書家の時間」の前に、これを読みたかったな。

  • 私は教育者ではないけれど、海外で育つ子どもの親として、日本語教育の参考になればと思い読んだ。読書が面白ければ、子どもは夢中になり優れた読み手になる、そのために大人が最適な本を常に用意し習慣を作ってあげるというのは、学校はもちろん家庭でも社会でも大切。まるでアメリカの大学生のように山のようなリーディングリストがあり、それを常にアウトプットするというのは大人でも難しいけど、こんな機会があれば本当に子どもは伸びるだろうな。まずは自分が実践してみようと思えるくらい具体的な書。

  • ヨンデミーのベースになっていると知り、さらっと一読。中高生の読書とどうかかわるか、という観点でかかれている本は初めて読んだと思う。

    本を渡しつつ、日々相手の感想を聞きつつ、それについての大人としての自分の考えを押し付けるでもなく述べる、そして読み続けるように励ます。

    どんな本を読むべきか?
    あなたがどこからきて、いまどこにいて、これからどこへ行くのかが分かる本を読みなさい。

    子どもたちが大人になっていくことを、こんな形でサポートできるのだなと。

  • 一人の教員の実践や思想のまとまりとして参考になる点が多々あった。
    一方で、単発で言えば他にもっと研究していらっしゃる方は多いし、専門書にはもっと素晴らしい研究・実践があるように思う。
    流行に伴い無批判に評価するような言説も見られるが、大村はまを含めた日本の教育者と冷静に比較したい。

  • ライティング教室

  •  米国の著名な国語教師が自身の実践について語った本です。ザックリと言えば、生徒を自立的な読み手や書き手へと育てようとする試みについて、本人の経験や生徒とのやり取りを含め、様々に紹介されています。
     アトウェルは、「教師が題材を選んであげ、教えてあげなければ、生徒はうまく考えられないだろう」という発想に強く反対します。むしろ、それ自体が真逆の発想で、やらされた課題になると生徒にとって良くない、と。そんなアトウェルは、いかにすれば生徒が自主的主体的に本を読めたり、文章を書けるようになるのかを追究する過程で、リーディング・ワークショップやライティング・ワークショップの方法に出会い、自分なりに試行錯誤していきます。
     アトウェルは、昔の(ワークショップの方法に出会った頃の)自分が、ファシリテーターに徹しようとしすぎていたと批判的に捉えています。このことは実は本書にとっても象徴的なことで、生徒自身が自主的・自立的な存在になるために、教師がどれくらい介入・影響を与えるべきかを、アトウェル自身が絶えず問い直しながら試行錯誤してきたことが伺えます。
     詳しい工夫は本書に記載されています。自分自身の当事者としての読み・書きに関する経験や試行錯誤を生徒に説明する「譲り渡し」だったり、生徒自身に読書の目標や現状を把握させる「チェック・イン」の工夫だったり、読み・書きしている内容を生徒と教師が共有する「カンファレンス」だったり、面白い本を皆で紹介しあうブックトークだったり、その他にも読んだ本、書いた文章をアウトプットする工夫なども色々あって面白い。ただ、何よりすごいのは、著者が生徒が没頭できそうな本を集め・更新し続ける教材収集への努力と、生徒が今何に関心を持っているのか・何につまづいているのかを把握し記録する、生徒観察の努力(と評価プロセス)についてでした。
     生徒が自主的・自立的に学ぶためには、単に授業方法どうこうの話ではなく、きめ細やかな学習環境デザインへの配慮が大切なのだと思われます。実際、彼女の教室の中に並んだ本の内容について、彼女はほとんど熟知していて、読書に没頭し始めている生徒と、簡単にその想いを共有し、会話を広げることができてしまう。このような状況に至るまでに、アトウェルがどれだけの時間を費やしたのか、想像することもできません。また同時に、「生徒にやらせることすべてを、教師自身が一度は(本来は何度も)経験しているべき」という著者の信念も強く感じます。
     生徒主体の授業方法が小手先に終わらないための、分厚い下支えが不可欠であることを感じさせてくれる一冊です。

  • アメリカの公立中学校の国語教師が書いた名著の翻訳版。リーディングとライティングを中心に据えた、生徒主体の教育方法について、長年苦心して作り上げてきた実践から、ヒントになるようなことを書き下ろしている。

  • 読み応えがある本でした。丁寧な解説が書き加えられていて、読み手が実践する手がかりとなっています。学校司書にも読んで欲しい。知り合いの国語教師にも読んで欲しい。私たちにも出来ることがあるはず。準備から着地点までの道筋が細部まで練られている。何度も読み返さないと、自分のものにできないと思う。

  • 【夏の読書 4冊目】
    ナンシー・アトウェルの優れた実践とその底にある教師としての思い。それを日本の教師へ伝えたいという訳者の思い。それらが存分に詰まった骨太の一冊でした。

    まだ全然消化しきれていません。夏の間(いや多分その後も)、じっくりと読み返しながら、自分の教師としてのあり方について問い続けるのだろうと思います。

    「学習者中心の学び」に関心のある方はぜひお読みください。ボリュームはありますが、コラムを始め訳注や巻末資料などが充実しているので読みやすいです。

  • 原題:In the Middle: A Lifetime of Learning About Writing, Reading, and Adolescents
    著者:Nancie Atwell
    訳者:小坂敦子・澤田英輔・吉田新一郎

    【版元】
    価格:2,400円
    版型:A5判 368頁
    ISBN:978-4-385-36063-8

    読む・書く・生涯にわたり学び続ける伝説の教師、ナンシー アトウェル。その思想と実践を具体的に示した本書は、ライティング/リーディング ワークショップに関心のある国語教師はもとより、すべての教育者に必読の一冊。

    【メモ】
    訳者の一人のサイトから
    http://askoma.info/2018/07/22/6605


    【目次】
    少し長めの訳者前書き

    第1章 教えることを学ぶ
    教師としての私の物語 
    ジェフとの出会い/ジェフと書くこと/教師も学ばなくてはならない/アトキンソン学校/私の教室で起こったこと/ライティング・ワークショップへ

    バランスをみつける 
    初版の頃/「譲り渡す」ということ

    リーディングはどうなっているの? 
    文学に満ち溢れた場所/二人の先生/自分で読むということ/選択が生み出すこと/リーディング・ワークショップへ/「当たり前」と「論理」

    【コラム】アトウェルの学校はどんな学校?

    第2章 ワークショップの準備
    時間を確保する 

    教室 
    ピア・カンファランスの場所とやり方/図書コーナー/用紙とファイル/「今日の予定表」/「チェック・イン表」/「執筆記録用紙」/「読書記録用紙」/「ライティング・ワークショップで期待すること」/「ライティング・ワークショップのルール」/「校正項目リスト」/「校正チェック用紙」/「ピア・カンファランス用紙」/「リーディング・ワークショップで期待すること」/「リーディング・ワークショップのルール」/「ジャンル一覧リスト」/「本の貸出カード」/「ファイル」

    【コラム】悩ましい授業時間確保と人数の問題/詩をひらくように読む

    第3章 ワークショップ開始
    毎日読む「今日の詩」/お互いに打ち解けるためのアクティビティ/家庭学習(宿題)と授業とのつながり

    ライティング・ワークショップ開始 
    まずは、生徒をしっかり知ることから/書く題材探し/詩の宿題から書くことを学び始める/3日目からは、サイクルを回し始める/最初の数日のカンファランスの実例

    リーディング・ワークショップ開始 
    読む力は、読むことを通してしか培えない/教師と生徒によるブックトークの力/生徒たちが本に浸れるようにする

    第4章 書き手を育てるミニ・レッスン 
    ワークショップで書く手順 
    書き手が使う技についてのミニ・レッスン/教師が書くプロセスを見せる/教師が自分で書いた詩を使って教える/それで?の法則/頭と心の法則/一粒の小石の法則/メモ書きの法則/下書きは行間を広くとる/題名の工夫

    書き言葉の慣習

    【コラム】書き言葉の慣習の大切さ

    第5章 読み手を育てるミニ・レッスン
    ワークショップで読む手順

    実際に読むことについてのミニ・レッスン 
    心理言語学から読むことを見ると?/二つの読み方

    文学についてのミニ・レッスン 
    批評家として詩を読む/ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ/ウィリアムズをメンターにした生徒の作品/文学が教えてくれる価値/市民の育成に欠かせない新聞記事/ジャンルとしてのテスト対策/長期休暇中の読書

    第6章 一人ひとりの書き手を教える
    書き手を育てるカンファランス
    カンファランスでの譲り渡し/コメントは執筆中に/カンファランスは生徒のところで

    書くときに遭遇する課題とその対処法 
    情報が不十分である/書き手の姿が見えない/余分な修飾語が多すぎる/題材が大きすぎる/終わり方がうまくいかない/書き出しがうまくいかない/読者に映像が見えてこない/情報が整理されていない/書く題材が見つからない/言葉づかいがうまくいかない

    第7章 一人ひとりの読み手を教える
    リーディング・チェックイン 
    文学について対話するレター・エッセイ 

    【コラム】チェック・イン=カンファランス?/レター・エッセイの役割

    第8章 価値を認める・評価する
    自己評価 
    教師による評価 
    次の目標を定める/段階別の成績を出す場合

    巻末資料
    1 アトウェルが示す多くの出版方法
    2 アトウェルのカリキュラムのサイクル
    3 ライティング/リーディング・ワークショップ資料(日本語)

    文献一覧
    図版一覧

全10件中 1 - 10件を表示

小坂敦子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×